アメリカ・DNDOによるPDRテストレポートを読んでみた~私たちは何を測ってるの?

2012年02月07日
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■固有名詞、専門用語の解説

the Domestic Nuclear Detection Office(DNDO)
国内原子力検出局。2007年にDHS(後述)の科学技術部から独立した機関。DHSの外郭団体ですね。「国内原子力検出局」というのは日本の経済産業省の訳し方です。「国内核探知局」なんて訳し方もあります。後者の方が実態に合っている気もします。当記事の主人公です。

the U.S. Department of Homeland Security(DHS)
アメリカ合衆国国土安全保障省。アメリカ合衆国連邦政府の組織の1つで、テロリストの攻撃と自然災害から国土の安全を守るために、9.11をきっかけに、2002年11月に設立されました。

Personal Radiation Detectors (PRDs)
個人用放射線測定器。この「personal」はまさしく個人用という意味です。周辺線量(率)を測定するためのいわゆるサーベイメーターを指します。ちなみに、(電子式)個人線量計は「EPD(Electronic Personal Dosimeter)」などとも言われます。この際の「personal」は「personal dose」すなわち個人線量を指します。両者の違いをしっかり理解しておく必要がありますが、この記事の本旨から外れますので略。

the American National Standards Institute/Institute of Electrical and Electronics Engineers(ANSI/IEEE) N42.32
ANSIはアメリカ合衆国の工業的な分野の標準化組織で、さまざまな規格開発をおこなう団体です。日本で言えばJISのような存在。IEEEは「The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.」。アメリカ合衆国に本部を持つ電気・電子技術の学会で、各技術の規格に関する標準化活動も行っています。

N42シリーズは放射線検出に関する標準規格で、「N42.32-2006」は「Performance Criteria for Alarming Personal Radiation Detectors for Homeland Security」というタイトルのついた規格書です。
http://standards.ieee.org/getN42/download/N42.32-2006.pdf

■概要

2004年2月、DHSが「ANSI/IEEE N42.32」を採用しました。これに基づき、PRDの調達等を行っていくことになります。じゃあ、N42.32に適合する具体的な機種はどれなんだと、これに適合するとされている機種は、実際のところどうなんだと。

そこで、DHSの外郭団体であるDNDOは、アメリカ国内でよく利用されている個人ユースのPDR、15機種をテストし、その結果をレポートしました。2006年のことです。テスト場所はネバダ州です。

■テスト機種

Mini Rad-D(D-tect Systems)
RadEye PRD(Thermo Fisher Scientific)
PM1401GNA(Polimaster)
RadEye PRD NYPD(Thermo Fisher Scientific)
Interceptor(Thermo Fisher Scientific)
GammaRAE II Responder(RAE SYSTEMS)
NeutronRAE II(RAE SYSTEMS)
HRM(Sensor Technology Engineering
GammaRAE II(RAE SYSTEMS)
Radiation Pager(Sensor Technology Engineering)
Radiation Pager-S(Sensor Technology Engineering)
PM1703GNA(Polimaster)
PM1703M-01(Polimaster)
PM1703M-0(Polimaster)
PDS-100GN(Mirion Technologies)

※当サイトではあまり扱っていないメーカーに関してだけリンクを貼っておきました。
※後ほどテスト結果の表を紹介しますが、この表の上から順に並べています。
※「GammaRAE II」は「GammaRAE II R」の前バージョン。検出器はCsI(TI)のみです。だからTIじゃなくてTlだってのw メーカーまで間違えている始末w タリウム(thallium)だからI(アイ)じゃなくてl(エル)です。余談でした。もうひとつ余談。ここに「Gamma RAE Ⅱ (R)」が出てくるということは…。どうなんでしょうねぇ。奥深い。

■テスト内容

大きく分けると5つのテストが行われています。

Scenario 1:Pedestrian Surveying
Scenario 2:Mobile Surveying
Scenario 3:Screen / Localization
Scenario 4:Pedestrian Chokepoint Monitoring
Scenario 5:Personal Safety

その具体的な内容は、おそらくこちらの資料のことだと思われます。

http://www.osti.gov/bridge/servlets/purl/924089-7NLDv7/924089.pdf

■テスト結果

gc_253.jpg

※「%」は誤差とかそういうことではありません。DNDOが独自に設けている基準から算出された評価を「%」として表しています。
※文書の最後に書かれていますが、これをもってランキング付けをしようとしているわけではありません。「このようなシチュエーションにおいては、これよりこれのほうがいいかもしれない」ということを示唆しているだけです。つまり、適材適所、用途に応じて、ベストなチョイスも変わるかもね、ということです。
※このテスト結果(PDF)はネット上では見つけられませんでした。もしかしたらどこかにあるかもしれませんが。私は「こんなものがある」ということで直接頂きました。参考までにPDFをあげておきます。

Highlights of the Domestic Nuclear Detection Office’s (DNDO) final report of the Personal Radiation Detectors Test Campaign(text→PDF)

※FC2にPDFがあげられないので、拡張子をtxtに変えています。右クリでダウンロード後、拡張子を変えて下さい

■感想

「Mini Rad-D」には線量(率)の表示機能はありません。線量率に応じた危険度を9段階で教えてくれるのみです。この結果を信頼するならば、危険の察知ということに特化した機種なんでしょうね。9段階というザックリとした表示しかないので、現状の日本においてはちょっとどうかなとは思いますが。

核種同定機能を有した機種がいくつか含まれています。その中でも「PDS-100GN」が一番それに力を注いでいると言いますか、そこがメインの機種でしょうから、この結果を見て「「PDS-100GN」ダメじゃん」というのはちょっと違うと思います。刻一刻と変化する状況に応じて素早く反応するというよりも、じっくりその場の核種を見るというのが正しい使い方でしょう。

※左は「PDS-100GN/ID」、右は「PDS-100GN」。前者は核種同定結果を自動で表示してくれます。後者は自身でスペクトルを見なければいけません。

その他はほとんど差はないと思っていいような結果だと私は見ました。いくつかの核種を用意してテストしていますから、核種によってはこの機種はどうとか、そういうこともあるでしょうしね。

この中で現実的に日本で個人が入手しやすいのは「GammaRAE Ⅱ R」ですね。あと、表中にはないですが「PM1703M」とか。「Interceptor」といった化け物にも興味は惹かれますがw 「RadEye PRD NYPD」はなんでしょうね。「RadEye PRD」のNY市警バージョン?w

このテストは放射線測定器の具体的な利用シーンを想定したテストです。「%」の出し方はザックリしていますが、それはそれでいいと言いますか、むしろそうであるべきだとすら思います。

γ線を照射して標準偏差がどうとか、研究者が放射線測定器を研究したいというならいいのでしょうけど、さて、私たち一般市民にとっては、どのようなテストが参考になるでしょうか。普段、私たちはコリメートされた一定量のγ線を、決まった距離で測定しているのでしょうかね。

もちろん、基本的な知識、専門的な知識も重要でしょう。こと細かな、実験室レベルの検証も興味をそそります。だけど、もっと重要なのは、いま手にしているその放射線測定器を、この公園でどう使い、そこで表示された数値をどう読み取り、どう安全性or危険性を判断するかという、とても具体的なことだと思います。

事件は研究室で起きてるんじゃない。現場で起きているんだ!

なーんてねw

どの機種がいいとか悪いとかじゃなく、なんかそんなことを考えさせられたアメリカのあるテストでした。
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