放射線測定器 ボタン多い選手権 ~スマート時代に意識すべきこと

2012年02月06日
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世の中、意味のあることしかなかったら、住みにくいでしょうね。

世の中、結果がわかることしかできなかったら、つまらないでしょうね。

意味があるかどうかわからない。結果がどうなるかわからない。そういうチャレンジから創造は生まれます。そのチャレンジは時として無駄に終わるかもしれないけど、そうしたいくつもの無駄からしか創造は生まれません。

だから。

放射線測定器 ボタン多い選手権!w


15個:MG-11(Scientific Instruments Finland)

mg11_000.jpg これを知って、こんな企画を立ててみました(情報ありがとうございました)。

POWERとENTER、RADとDOSE、MUTEとSLEEPとLIGHT、LOGとWiFi、このあたりはまとめられるんじゃないか…。なんて思うのは素人! 機能をすべてボタンで表現する。ここにこそ、開発者の思想が反映されています。もし、この機種にボタンが3つだけだったらどうでしょう。「NT6106」と同じじゃないですか!

そもそも、ボタンは少ない方がいいなどという考え方に私は異を唱えたい。デザイン性を重視するせいなのか、最近のデジタル機器はボタンが少ないです。だけど、その分、操作が複雑になっているケースもままあります。ここでボタンを連続2回押す。このボタンを押したあと、こちらのボタンでああして、その後、さらにこうして…。じゃかましいわ!w

「MG-11」は”スマート”化された現代のデジタルデバイスへのアンチテーゼです。”スマート”が自己目的化されている現状への批判です。メーカーであるScientific Instruments Finland社はフィンランド、北欧の企業。もちろん北欧デザインのなんたるかを知っています。なのに、あえてこれ。

”スマート”はカッコイイ。最近の流行りです。だけど、同メーカーはそんなことには見向きもしません。彼らが向いているのはユーザーです。だから、”スマート”であるよりも直観的にわかりやすいボタンにします。ここにはあふれんばかりのユーザーへの愛が込められているのです。

さらに、「MG-11」はオプションで、USB、Wifi、シリアル(RS-232)がつけられます。GPS、GMS(ネットへリアルタイムでデータ転送できるモデム)、フラッシュメモリもつけられます。これほど多くのオプションが用意されている機種も他にありません。

この過剰なまでのオプションサービス! 包み隠すことなく披露するこの過剰さもまた、ユーザーへの思いからきています。

[ソース]Scientific Instruments Finland

※のちほどカタログにまとめます

14個:DKG-02U "Arbiter" (DOZA)

DKG-02U_001.jpg 1980年代から1990年代前半の資本主義がどうであったか。そんなことを考えさせてくれるのが、この「DKG-02U "Arbiter" 」です。

あれもこれも。大きいことはいいことだ。All in One。こうした思想のもと、製品にありとあらゆる機能を詰め込もうとします。

1986年、シャープが冷蔵庫と電子レンジを1台に融合した”クッキング冷蔵庫”「SJ-30R7」を業界で初めて発売しました。松下電器産業の「2-SHOT」によりテレビデオが爆発的に普及し始めたのが1993年。薬師丸ひろ子が「ちゃん リン シャン」とつぶやいたのは1989年。Apple Ⅱ(1977年)、Macintosh(1984年)、iMac(1998年)なんて流れもこの典型でしょう。

これらにはむき出しの欲望が表れています。ソビエト連邦崩壊後のロシア経済は、膨らみ続ける資本主義という世界にポンと投げ出され、このむき出しの欲望にさらされます。その後どうなったかは周知の通りです。

この「DKG-02U "Arbiter"」がリリースされた年は定かではありません。ですが、このような時代背景にあって、その時代の雰囲気を背負ったまま開発された機種ではないかということが、このボタン数で読み取れます。

適当なことを言っているわけではありません。ではなぜ、「DKG-02U "Arbiter"」にはBETA-2MとSI-34gという、メーカーもまったく異なるGM管を2つも搭載しているのか。しかも、両者それぞれの校正係数まで調整できるのはなぜか。アルファベット、数字まですべて入力できる機能は果たして必要なのか。この過剰さはまさに80年代、90年代の世界の経済をよく表しています。

こうした多くの機能は現在の”スマート”にも、それこそスマートに詰め込まれています。こんなちっぽけなデバイスに、考えられないほど多くの機能が詰め込まれています。アプリを足せば、それはいくらでも増やせます。

ただ、”スマート”という言葉により、その過剰さは覆い隠されます。私たちは過剰さに鈍感なのです。その鈍感に鉄槌が下されたのが3.11でした。欲望がむき出しになっている”カッコ悪い”「DKG-02U "Arbiter" 」は、澄ました表情の私たちの内側を見せてくれているように思えるのですが…。

12個:900(+)(Coliy Technology)

12個ならば3列×4行にできます。ですが、Coliyはそうしません。中心から放射状にボタンを配します。キチンと並列に並べるのではない。中心がまずありき。あれ? どこかの国の考え方に似ているような…。

元ネタとなっている「GAMMA-SCOUT」は3×3=9個のボタンをキレイに並べます。Coliyはこれを崩し、さらにボタンを増やします。あれとこれをくっつけて、こんな形にしてみました。あれ? どこかの国の新幹線を思い出しますね。

放射線測定器自体の性能を云々しているわけじゃありません。単にボタンを見ているだけです。そして、そのボタンから開発者の思想であるとか、開発者の顔を想像してみて楽しんでいるだけですw

これらに続くのは、ボタン9個の「GAMMA-SCOUT」、8個の「910」「R500」。Coliyが目立ちますねw

1980年代後半、フィンランドで「RDS-100」という放射線測定器が開発されました。これはフィンランド初のマイクロプロセッサー制御放射線測定器です。この登場により放射線測定器のデジタル化が進み、そして積算線量、線量率が同時に測定できるという、今では当たり前となっている機能が、放射線測定器のスタンダードとなっていきます。

[関連過去記事]
フィンランドの放射線測定器の歴史 ~「RDS-100」が果たした役割

たった一台でもいろんなことができる。当時の放射線関連事業者にとっては、願ってもない状況です。今までできなかった、あれもこれもを一台に詰め込みます。放射線測定器の多機能化です。まさに上述の通り、1980年代から1990年代のことです。

この次に訪れるのは、おそらくは”コンパクト”でしょう。ですが、技術は追いつかず、結果、”シンプル”へと向かいます。コンパクトでシンプルの次は、高度に発達した技術により、”コンパクトかつ多機能”の時代です。さらに、多機能であることを選択的にします。いわゆる”スマート”です。

ボタンの多いこれらの機種は、ともすると時代遅れに感じるかもしれません。ですが、これらにどこか懐かしさを覚えるのは、そうした時代を私たちが歩んできたから。そして、これらに親近感を覚えるのは、実は今でも私たちの中身はそのままだから。もしこれに居心地の悪さを感じるのであれば、それは自身の内面に潜む、膨張する欲望から目を逸らしたいと無意識的に思っているから。”スマート”という言葉で誤魔化そうとしているから。

これらの愛すべき”バカ”機種を大いに笑って見るべきです。それは自身の心の内の暗い部分を笑うことです。これをなくすことはできなくても、意識することが大切なんじゃないかと思います。それこそが”スマート”の本質です。”スマート”とはあれもこれもと選択できることじゃない。過剰なものをそぎ落とし、本当に必要なものだけを選択すること、あるいはその能力です。


で。

こんなことをしてみましたが、やっぱりあんま意味ありませんし、よくわからない結果になりましたねw いいんです。人間の想像力、創造もまた、こうした無駄、過剰さの産物なのですw
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