ATOMTEX公式サイトのリニューアルをいろいろな角度から見てみた

2012年02月03日
関連ワード:コラム
ATOMTEX社の公式サイトがリニューアル

先日、久しぶりにATOMTEX社の公式サイトをのぞいてみたのですが、驚きました。見違えるほどすばらしいサイトになってるじゃないですかw 元々、比較的よくできてはいたのですが、ガラリと変わりました。とても見やすくなっていますし、各機種の説明もより丁寧になりました。

余談ですが、実はInternational Medcom社もサイトが一変していまして、使い勝手がよくなっています。こちらは「WordPress」でサイトを再構築しています。ATOMTEXはなんでしょうね。

いずれにせよ、こういうのとても嬉しいです。「ああ、ちゃんとユーザーのほうを向いてくれているんだな」そう思えまして。しかも、もしかしたらユーザーはそんなことには気付かないかもしれない。大げさに「ホームページリニューアル!」なんて言いませんし。だけど、地道なこういう作業こそが、メーカーの”信頼性”なんですよねぇ。

趣味程度にCMSいじくる人間としては、「よくできてるね!」「ここの工夫、何気に気がきいてるね!」みたいなことを言ってあげたい! ちゃんと気付いてまっせ。その気持ち、素晴らしいぜ!と伝えたいw

というわけで、わざわざそんなことをメールするのもアレなんでw、かわりと言っちゃなんですが、ATOMEX社の放射線測定器を今回はご紹介しようかと(Medcomはしばしば取り上げてるからいいでしょうw)。結構大きなメーカーなんですけど、日本では一般的にはあまり使われていませんね。

「AT2503A」が最初に言っていること

同社で一番有名なのが「AT2503A」でしょうか。カスペルスキーの記事でも紹介しました。この商品説明にはガイガーカウンターとありますが、多分に誤解を与える表現です。間違いではないのでしょうけど、一般的にはこれをガイガーカウンターとは言いません。GM管を採用している個人線量計。これが誤解のない言い方です。

せっかくなので、リニューアルした公式サイトでも見てみましょう。トップページ(英語版)から[Products](製品)→[Personal Dosimeters](個人線量計)と進めば、同機の紹介ページにたどり着けます。なんてわかりやすい!

内容を見てみますと、概要、スペックはもちろん、エネルギーレスポンスのグラフ、方向特性のグラフも載っています。とても丁寧でわかりやすいです。では、具体的に見てみましょう。

[Description](概要)の冒頭にこう書かれています。

The dosimeters are intended to measure personal equivalent x-ray and gamma radiation dose and dose rate in the energy range from 50 keV to 1.5 MeV.

概要の冒頭に、測定範囲がどうとかGM管がどうとかなんて書かれていません。そんなことはどうでもいいからです。「個人線量を測定するための機器である」という事実こそが、まず第一に述べるべきこと、見るべきことだからです。当サイトで1万4952回言っていることですw

「personal equivalent dose(rate)」は個人線量当量(率)という意味です。これを測定するための機器が個人線量計=線量計。ちなみに「ambient equivalent dose(rate)」=周辺線量当量(率)を測定するための機器がサーベイメーター。両者をあわせて放射線測定器と言います(正確に言うと、”放射線測定器”には他にも違うタイプのものが含まれています)。両者は定義が違います。用途が違います。

信頼できるメーカーであれば、ちゃんとこのように丁寧に説明してくれているんです(^^

次に[Applications and capabilities](用途・特性)を見てみます。これくらいのエネルギーだと、これくらいのレスポンスですよ、この角度だとこれくらいですよというグラフがあります。0℃=垂直に入射してきたら1.0、つまりこれが基準となっているんですね。

ここで一番注目してもらいたいのが、下のグラフについている説明です。

gc_241.jpg

Standard dosimeter anisotropy for vertical position on the phantom
1 – 241Am; 2 – 137Cs; 3 – 60Co

素晴らしい。ちゃーんと書いていますね。「on the phantom」と。ファントムとは簡単に言いますと直方体の人体模型だと思って下さい。ファントムに乗せ、正面から角度を変えてγ線を照射して、こうした方向特性をはじき出しています。

なぜこんなことをしているのか。個人線量計は人体に装着することを前提としているからです。その証拠に、このグラフは半円です。下半分にグラフがないのは、そこにはファントム=人体があるからです。

そんな風に校正されている個人線量計をサーベイメーターのように使ったらどうなるでしょうか。サーベイメーターのように背面を地表に近づけ”測定”するなんてことが、いかにメチャクチャか。これを見るとよくわかるのではないでしょうか。国民生活センターがそんなことしてましたねw

次は[Specifications](仕様)。ここでも一番最初に「personal dose equivalent」と記載されています。なお、Hp(10)と書かれていることもあります。ザックリ言うと同じ意味だと…。いや、それはよくないな。ここはザックリ言ってはいけないところだ。特に個人線量だし。

Hp(0.07)から個人線量当量を見てみる

個人線量計は一般的にγ線をHp(10)という基準で測ろうとします。Hp(10)とは個人線量当量の1cm線量当量という意味で、人体表面から1cm下の部分でどのような影響があるかを考慮して考えられた基準です。γ線は透過力が強いので1cmなんですね。ちなみに周辺線量当量にも1cm線量当量があります(H(10)と言います)。

Hp(0.07)というものもあります。個人線量当量の70μm線量当量です(70マイクロメートル)。つまり、身体表面から70μm=0.07mmの深さの組織の線量当量という意味ですね。

「わざわざこんな基準で測る必要があるのか!?」

「1cmで統一すればいいじゃないか!」

と思うかもしれませんが、たとえば皮膚組織は身体から1cmも深くありません。あるいは目の水晶体。または女性の腹部。これらは身体表面に近く、放射線の影響を受けやすい、あるいは影響が大きいがゆえに、このような基準が採用されています。

もうひとつ。β線なら0.07mmまで届きます。だからβ線をSvで測定する際は、普通はHp(0.07)を基準に測定します。では、ここから飛ばしていきますよ。

電離放射線障害防止規則

第八条  事業者は、放射線業務従事者、緊急作業に従事する労働者及び管理区域に一時的に立ち入る労働者の管理区域内において受ける外部被ばくによる線量及び内部被ばくによる線量を測定しなければならない。
2  前項の規定による外部被ばくによる線量の測定は、一センチメートル線量当量及び七十マイクロメートル線量当量(中性子線については、一センチメートル線量当量)について行うものとする。

事業者=放射線業務を行う事業の事業者です。事業者は労働者の1cm線量当量”及び”70μm線量当量で線量を測定しなければいけません。

さて、覚えていらっしゃるでしょうか。2011年8月30日、福島第一原発にて、東電社員3名(本当に社員だったのかどうかはさて置き)が汚染水の処理中に”β線”により約20mSv被ばくしました。

β線をSvで測ってはいけない、なんてセリフは耳タコですが、このニュースはそうした知識とは真逆のことを言っています。ですが、ここまでお読み頂ければわかる通り、決してβ線をSvで測定できないわけではないんです。私たちが使うような一般的な個人線量計、サーベメーターでは測定できませんが、特殊な機器を用いればβ線もSvで測定できます。そして、そこで表示されるSvがHp(0.07)なんです。

Hp(0.07)が測定できる個人線量計として有名なのはThermo Scientific社(サーモサイエンティフィック社)の「EPD Mk2* Electronic Personal Dosimeters」です。

※「EPD」がこれまたメチャクチャ面白い! 「P」はpersonalなのかpocketなのか。このあたりの話は”線量計”にまつわる誤解にも通じる、非常に奥の深い問題をはらんでいます。これについてはまたの機会に。

ひとつ誤解して頂きたくないのは、「Hp(0.07)はβ線をSvで測定する際に用いる」というのは不正確だということです。β線や低エネルギーのγ線など透過力の弱い放射線による、皮膚や水晶体などへの影響を測るためにHp(0.07)という基準が用いられます。

というようなことが「on the phantom」「personal dose equivalent」という言葉には込められています。少なくとも、そこまで読み取れる内容が、ATOMTEX社の公式サイトには書かれていて、それだけ丁寧だということです。

どんどん脱線していくので疲れてしまうのですがw、次の機種を見てみましょうか。

「AT6130」でパンケーキの特性がよくわかる

「AT6130」という機種も有名です。パンケーキ型マイカ窓付GM管を搭載し、ベータ粒子束密度も測定できます。”ポータブルサーベイメーター”って感じの外観が好きですw 公式サイトでは[Products]→[Radiation Monitors]と進めば紹介ページがあります。こちらの冒頭はこんな書き出しです。

Handheld lightweight radiation monitors feature ambient dose equivalent and ambient dose equivalent rate from gamma and X-ray radiation and beta radiation flux density from contaminated surfaces.

先ほどの「AT2503A」とまるで違いますね。こちらは「ambient~」つまり周辺線量当量(率)です。

gc_242.jpg この方向特性も非常に面白いですね。22 keVという微弱なエネルギーのγ線は液晶面、つまりパンケーキとは逆からしか捉えられません。よく見る662 keVは検出器方面からでは0.8、液晶面からだと1です。イメージしていたのと真逆じゃないですか?w なぜこうなるのかは過去にもチラリと触れていますので、過去記事をあれこれ見てみて下さい。「パンケーキ」なんてキーワードでサイト内検索して頂ければいいかと。

このグラフを見れば、パンケーキは高く出るだの低く出るだのでダメだとかなんだとか、そういうことじゃないってこともよくわかるはずです。

2012.10.11追記:こちらの記事もぜひご参照下さい。
AT6130がデザインをリニューアルしたので、あまりにも面白い各種レスポンスを改めてご紹介

「AT2503A」の説明もとても丁寧です。感心してしまうので、もっといろいろ書きたくなるのですが次に行きましょう。

AT1125A 放射線モニター 水・食品測定キット付

AT1125A 放射線モニター 水・食品測定キット付
価格:1,029,000円(税込、送料込)

水・食品測定キット付のものしか商品としては見つけられませんでしたが、本体のみでも売っています。「AT1125」です。公式の紹介ページはこちらです。

かっこいい…。NaI(Tl) Ø25x40 mmのシンチレーション式サーベイメーターです。PCに接続すれば、Bq/kgも測定できます(確かそうだったような。単体でもいけましたっけ??すみません、ちょっと疲れてきたので、ここは追記します)。検出限界は50 Bq/kg(鉛遮蔽ユニットありの場合)ですから、大したことはないのですが目安程度にはなるかもしれませんね。

公式に写真でも紹介されていますが、テレスコピック&プローブがいいですねぇ。こういうの、もっと日本で手に入れやすくならないもんでしょうか。

公式サイトから推し量るメーカーの信頼性

長々と見てきましたが、これだけのことが、いえ、これの何倍、何十倍ものことが、ATOMTEX社の公式サイトには書かれています。

別にATOMTEX社の製品を買えと言っているわけじゃありません。あなたが買おうとしているその機種のメーカーは、どこまでちゃんと説明してくれていますか? そして、どんなメーカーをあなたは信用しますか?ということです。

ATOMTEXの公式サイトがリニューアルされたというのは、単に「わぁ、きれいになったな」という話じゃないってことですw
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