はじめての放射線測定器

2012年01月19日
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目次

はじめに
第一章 自分自身の状況
第二章 測定対象と目的
第三章 基準
第四章 スペック・性能
附属 測定と検出
おわりに ~わかりやすさの功罪

はじめに


どの放射線測定器を選べばいいだろう。こんなにたくさんあっては、どうやって選べばいいのか…。そんな風に感じている方も多いことでしょう。

これまでも何度か簡単に私なりに説明してきましたが、3.11当初とは状況も私自身の考え方も変わってきています。年も新たになったことですし、いま一度、はじめて放射線測定器を購入しようとしている方へ向けた、「放射線測定器の選び方」なんぞを披露してみたいと思います。

なんて言いますと、「そもそもガイガーカウンターとは」みたいな話になりがちなのですが、当然、当サイトではそんなことはいたしません。ガイガーカウンターの原理について知りたければ、詳しく解説してくれているサイトがあるので、そちらをご参照下さい。ただ、「ガイガーカウンターとは」なんてことよりも先に考えなきゃいけない重要なことがいくつもあります。

耳年増になっている初心者さんへ贈るw、「はじめての放射線測定器選び」。ぜひじっくりと読んでみて下さい。

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第一章 自分自身の状況


ガイガーカウンターがいいのか、シンチレーション式がいいのか、精度はどうか(精度?)、感度はどうか(感度?)、そんなことを考えるより前に、まず、自分自身のことを考えましょう。

測定対象
空間線量を測定したいのか、地表等の表面汚染を調べたいのか、被ばく量を知りたいのか。何を測りたいのかによって選ぶべき機種も異なります。まず、何を測ろうとしているかを明確にしましょう。

目的
自己満足的に放射線を測定することを否定しません。私だってそうしていることもままありますw ですが、肝心なのはその先です。測ってどうするのか。どうしたいのかです。線量を知ることで不安・ストレスを解消したいのか、安心して子供を遊ばせられる場所を見つけたいのか、ホットスポットを探しだし除染したいのか、場合によっては引っ越すことも考えているのか。こうした目的に対し、放射線の測定は手段として存在します。ですから、放射線測定器選びにおいては目的が何であるかも重要です。

周辺環境
自治体や知人等の測定結果から、おおよその周辺の状況はすでにおわかりでしょう。空間線量はそれほど高くないという地域、少し高めという地域、局所的に線量の高い場所(ホットスポット)が数多くある地域、現在はまったく気にすることはないけど、近くに原発もあるし…という地域。お住まいの地域、周辺環境がどうであるかも、放射線測定器選びにおける大切な基準です。

モチベーション
放射線測定器を購入したあかつきには、できれば毎日測ってみたいし、放射線(測定)のことももっと勉強していきたい。そう思っている方もいるでしょう。あるいは、まあとりあえず大きな心配は必要ない。ただ、なんとなく不安もなきにしもあらずだから、簡単にサクっと目安がわかればいい。そう思っている方もいるでしょう。本人のモチベーションが違えば、選ぶべき放射線測定器も違ってくるかもしれません。

予算
現実問題として予算も重要です。安全・安心のためには金に糸目はつけないなんて方は少ないはず。1万円程度でなんとか。3万円までだったら…。なんとかがんばって10万円以内で。予算に応じて選択肢の幅も当然異なってきます。

では、主だった部分をもう少し具体的に見ていきましょう。

第二章 測定対象と目的


パソコンを買う時、どうやって選びますか?

「とりあえずメールとネットだけできればいいから、安いノートPCでいいや」
「子供の動画も編集したいから、ちょっとスペックのいいものを選ぼう」

などと考えるはず。

車を買う時、どうやって選びますか?

「子供2人も連れて出かけたいからワゴンタイプがいいかな」
「夫婦二人だけだし、小回りのきくツーシーターにしよう」

まずはこう考えるはず。

放射線測定器も同じです。

「よく見かけて評判もよさそうだからこれにしよう」
「3万円以内だと何がいいかな」

なんていう方が多いようですが、ちょっとお待ちを。パソコンや車を選ぶときのように、放射線測定器も選んで下さい。何を測りたいのか(測定対象)、目的は何なのかをまずはっきりとさせ、それに見合った機種を選んで下さい。この測定対象と目的には関連性もあるので、両者を同時進行的に見ていきましょう。

まず、「なぜ測りたいの?」ということから。「なんとなく」という方もいるかもしれません。それはそれで大いに結構。なんとなくでも、ぜひ測ってみて下さい。なんとなくがなんとなくではなくなるかもしれません(^^

他にはこのような目的が想定されます。

・不安の解消
・除染する場所の特定
・そこで生活を続けられるかどうかの判断

こうした目的をもう少し具体的に考えれば、何を測定するか=測定対象とも関連しています。不安を解消したい、ここに住み続けていいのかどうかを判断したいということなら、空間線量を測ればいいでしょうし、除染が目的なら表面汚染が検出できるタイプの機種がいいでしょう。こうした測定対象は、4つに大別できます。

A)食品の放射能汚染
B)表面汚染
C)空間線量
D)個人線量

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A)食品の放射能汚染

「○○産の米から○○Bq/kg検出された」といったニュースを見かけたこともあると思います。これが食品の放射能汚染の測定です。食品に含まれている放射性物質がどれほどの放射能を有しているかを測定しています。

放射能は「ベクレル」という単位で測定します。ですから、放射能汚染を測定する測定器は「ベクレルモニタ」などとも呼ばれます。ベクレルモニタで一番有名なのは、柏市などにもある「ベクミル」で使われているドイツ・ベルトールト社の「LB200」という機種です。

ただ、ベクレルモニタはとても高価です。安くても80万円ほどはします。また、これを扱うにはそれなりの専門的な知識も必要です。個人でベクレルモニタを購入し利用することはあまりおすすめできません。

もし、食品の放射能汚染が気になるようでしたら、「ベクミル」のような施設を利用したり、あるいは専門機関で調べてもらって下さい。そうしたサービスもたくさんあります。

[参照サイト]
環境技研 楽天市場店

B)表面汚染

公園の砂場や校庭に放射線測定器をかざして測定している風景を目にしたことはありませんか? あれが表面汚染の測定(検出)です。地表に限らず、たとえば車のボディ、洋服など、物質の表面に付着した放射性物質から発せられる放射線量、あるいは放射能を測定します。

測定単位は「ベクレル」「cpm」「1 /cm^2・min(ベータ粒子束密度)」などです。

cpmはcounts per minuteの略で、その放射線測定器が1分間に何回、放射線をカウントしたかを表します。これは単位ではありますが、個々の機種によりどう算出されるかが異なります。ですから、異なる機種では数値を比較できません。なお、ベクレルもSv(シーベルト)も、基本的にはこのcpmから換算され表示されます。この件に関しては後述します。

「1 /cm^2・min(ベータ粒子束密度)」とは、簡単に言ってしまうと、1cm^2あたり1分間に何個のベータ粒子が通過したかを表す単位です。これは他機種と比較可能な単位です。ただ、みなさんがよくご存じのシーベルト(Sv)とは違い、ベータ粒子束密度がいくらだったら健康上どんな影響があるか、といったことはわかりません。単なる物理的な量を表します。

では、シーベルト(Sv)という単位で表面汚染は測定できないのでしょうか。基本的にはできません。ガイガーカウンターを地表にかざして、「10μSv/hが出た!」といったことを言う人がいますが、こうした表現には十分に注意する必要があります。この件に関しても後述します。

さて、以上は表面汚染の”測定”に関しての説明です。そして、お読み頂ければわかる通り、表面汚染の”測定”はとても難しいです。ただ、表面汚染を”検出”することは比較的容易です。

そう、ぜひ理解して頂きたいことがあります。測定と検出は違うということです。ガイガーカウンターを使い始めて1年経とうとしているのに、ここを理解していない方がとても多いようです。これから購入しようというかたは、ここを明確にわけて考えて下さい。測定と検出の違いに関しても後述します。

C)空間線量

各自治体が発表している数値がありますよね。「0.12μSv/h」などといった数値です。これは空間線量(率)です。放射性物質から発せられる空気中の放射線量を測定します(もっと正確に言えばγ線です。そして多くの場合はCs137由来のγ線です)。

測定単位は「シーベルト(Sv)」です。世の中の99%の放射線測定器はSv表示をする際、γ線のみの放射線量を測定することが前提とされています(一部、β線もSvで表示できるものもあるんですけどね)。逆に言えば、Svで測定する際はγ線のみを対象としなければいけません。「地表から1m離して測定しましょう」などと言われるのはこのためです。

空間線量は1時間あたりにどれくらいかという線量率(μSv/h)で測定するのが一般的です。多くの放射線測定器で測定できます。そして、基本的にはこの空間線量率を測定するために放射線測定器を購入します(後述しますが、表面汚染の”検出”も必要かもしれません)。

なお、この”空間線量”という言葉は一種の俗称です。その意味するところを正確に理解し、専門用語で言い換えれば、周辺線量と言います。この件に関しましては当サイトでも簡単に解説しています。詳しくはそちらをご参照下さい。

[関連過去記事]
「空間線量」ってなんだ? ちゃんと説明できますか?

D)個人線量

周辺線量≒空間線量は場の放射線量とも言われます。その場所がどれくらいの放射線量かを表しています。これに対して個人がどれほど被ばくしたかを表すのが個人線量です。そして、この個人線量を測定するための機器が個人線量計です。基本的には「シーベルト(Sv)」で測定します。

個人線量計は胸ポケットにさしたり、あるいは首からぶら下げます。そして、電源を入れ、一日の終わり、あるいは1ヶ月ごとに記録された積算の数値を見、どれほど被曝したかを見ます。

ところで、「線量計」という言葉を目にしたことはありませんか? 線量計とはこの個人線量計を指します。よく放射線測定器全般を指すようにして線量計という言葉を使う方がいますが、これは大いに誤解を与える表現なので避けた方がいいというのが持論です。

専門家の間では、放射線測定器全般を「線量計」と呼ぶこともままあるのですが、私たち一般人は線量計という言葉を使う際には十分注意して下さい。ちなみに、上述の表面汚染や空間線量を検出・測定するための放射線測定器はサーベイメーターと呼びます。この件に関しては当サイトの記事をご参照下さい。

[関連過去記事]
JISで見る個人線量計とサーベイメーター(放射線測定器/狭義)
放射線測定器と個人線量計 ~何が違うの?
二本松マンションはなぜ3ヶ月もわからなかった?~個人線量計とサーベイメーター

第三章 基準


測定対象・目的ははっきりしました。では、その次に何を基準にして選べばいいでしょうか。口コミ? 口コミもまあ重要でしょう。専門家の意見? 参考になるかもしれませんね。売れ筋ランキングを見る? ランキングなんてものがいかに恣意的に作られているか、まだおわかりじゃないですか?w

どういう基準で選べばいいかはさまざまな意見があるでしょう。ですが、私がずっと言ってきていることがあります。それは”信頼性”です。すごく抽象的な言い方ですね。もちろん、こんなところで話は終わりません。ちゃんと具体的に説明します。

当たり前ですが、「~賞受賞」「○○政府公認」こんな文言と信頼性はまったく関係ありません。そんな宣伝文句に踊らされてはいけません。では、信頼性とは具体的にはなんでしょう。実は簡単なことです。

・正確な機種名とメーカー名をメモする
→いずれかがわからなければ、そんなものを買ってはいけません

・機種名もしくはメーカー名でgoogle検索をする
→すぐに公式サイトが見つからなければ、そんなものを買ってはいけません

・公式サイトでその機種の詳細を見る
→スペック表、使用目的の説明が詳細に載っている、あるいはマニュアルもダウンロードできるようになっている=買うべき放射線測定器

これだけのことです。簡単ですよね。

メーカー名がわからないようじゃ、信頼性云々以前の問題。もし、何かあった場合、どこへ問い合わせるんですか? ショップ? ショップが放射線測定器のことなんてわかってるわけありません。

ちゃんとしたメーカーであれば、ちゃんとした公式サイトを持っています。ググれはすぐに見つかります。そして、各機種の詳細な説明も公式サイトに載せています。これ、当たり前のことですよね。もしあなたがメーカーだったらどうしますか? 自社製品について調べている人のため、製品の詳しい説明を載せませんか? そういう配慮ができないということは、すなわち消費者のことを考えていない=信頼性がないということです。

具体例を出します。「RADEX RD1503」という人気機種があります。メーカーは「Quarta-Rad」です。「Quarta-Rad」でググると、簡単に公式サイトが見つかるはずです。クリックしてみるとロシア語表示ですが、左を見ると英語版もあるようです。「English」をクリックして、「PRODUCTS」→「Radiation monitor RADEX RD1503 」と進めば、同機に関する詳細な説明、スペックが載っています。さらに、マニュアルもダウンロードできます。

[参照サイト]
Quarta-Rad社:Radiation monitor RADEX RD1503

これが”信頼性”です。もう少し敷衍すれば”情報”とも言えるかもしれませんね。その機器の信頼性を担保してくれるのは、「人気!」「信頼性バツグン!」などといった宣伝文句ではなく、「これがオススメ」といった口コミでもなく、客観的な情報です。あるいは、いかに情報を提示できているかという姿勢です。

さて、あなたが選ぼうとしている機種はどうでしょうか? ちゃんと公式サイトは見つかりますか? ちゃんと説明が載っていますか?

もうひとつ、初心者にとっては重要な基準があります。それは有名な機種、人気の機種を選ぶということです。放射線測定器に限ってはオリジナリティだとか、他の人とは違ったものを、なんて観点で選ばないで下さい。

購入後、何かトラブルがあったとします。たとえば、使い方がわからない、不具合と思しき症状が出た、などなど。こうした場合、参考になる情報が見つかりやすい、あるいは質問しやすいのがメジャー機種。マイナー機種では「これ、どうすればいいんだろう」なんて場合、誰も答えてくれませんよw

なお、当サイトの全機種一覧では人気機種に「*」マークをつけています。ぜひご参照下さい。

全機種一覧(随時更新)

ここでようやく予算です。ようやく口コミです。以上を元に1、2機種に絞り、そして予算内のものを選んで下さい。口コミを参考にして下さい。なお、これらすべてをちゃんと考慮に入れた上で、測定対象と予算を表にしてみたのが以下の記事です。

[関連過去記事]
測定対象と相場表(改) ~タイプ別放射線測定器(初心者用)

第四章 スペック・性能


放射線測定器の選び方に関する説明ですが、これまで一切、スペック・性能の話が出てきていませんね。もしかしたらこんなことを考えていませんか?

「正確に測れるのはどれ?」

「上限が9.99μSv/hでいいの?」

「感度が高い方がいいんでしょ?」

そんなことは一切、考えなくて結構。これまで説明してきたことをちゃんと読み、その通りに選べば、どれを選んでも性能的にはどれもまったく問題ありません。もちろん、個体差がありますから、もしかしたら初期不良なんてものに出くわしてしまうこともあるかもしれませんが、そうでなければ、何を買っても大丈夫です。

では、逆に質問です。「正確」とはどういうことですか? 精度、誤差、標準偏差、あるいはポアソン、これらについて説明できますか? 説明できないのに「正確」とはこれいかに。

9.99μSv/h以上が測定できて、どんな意味があるんですか? では1Sv/hが測定できたとしましょうか。なぜ測定してるんですか? そんな状況になるまで、なぜその場にいたんですか?

感度ってなんですか? その定義は? 感度は何によって、なぜ差が出るんですか? どれほどの感度があればいいんですか?

よーく考えてみて下さい。そもそも、なぜ放射線を測定しようとしているのでしょうか。なぜ放射線を測定する必要があるのでしょうか。放射線を測定するってどういうことなのでしょうか。

自治体の発表する数値じゃ信用できない。不足している。だから、自分の手で、自分の目で実際に放射線を測定してみよう。子供もいる。不安だ。だけど、もし万が一、何かあった場合、国や原発のせいにしたところで、失われたものは回復されない。最終的には親の責任なんだ。自分の責任なんだ。だから自分の手で測ってみよう。

そう考えたはず。つまり、放射線を測定するということは、自分の責任において、自分の手で、自分の目で、情報を得るということなのです。与えられるものを確認するだけじゃない。自分で考えるということなんです。

「正確に測れるのはどれ?」と聞く前に、「そもそも”正確”ってなんだろう」と考えて下さい。「感度が高い方が…」という前に、「そもそも”感度”とはなんだろう」と考えて下さい。

さらに、そんなことをお勉強したいんですか? でしたら、専門書でも読んでじっくり勉強して下さい。でも、そうじゃないですよね。「測ってみたい」と思ったんですよね。だったらまず測ってみて下さい。スペックがどうだ精度がどうだと言う前に、安いものでいいです、1万円から2万円でいくらでも買えます。まず、実践してみて下さい。話はそれからです。

買います。手元に放射線測定器が届きます。何度も、何日も測ってみます。すると、本やサイトの情報で勉強した以上のこと、本やサイトの情報ではわからなかったことがわかります。そして「正確」とか「感度」とか言って悩んでいた自分に恥じ入ります。いかに自分がわかっていなかったんだろうと。

そして、もしそこで本当に精度や感度が気になるのなら、改めて考えて下さい。じゃあ、そんな自分に必要な機種はどれだろうと。

私たちは素人です。素人が専門家と同レベルで物事を考えるべきではありません。一歩ずつ、少しずつ、実際に測りながら、試行錯誤しながら学んでいきましょう。

ただ、実用的な観点から、こんなところは気にしてみてもいいんじゃないかという部分もあります。たとえば電源。どんな電池が必要か、消費電力はどうか。あるいは、持ち運びやすいか。操作は簡単か。場合によっては防水性があったほうがいいかもしれませんね。ケース付きのものがいいかもしれません。パソコンにデータ転送できたほうが便利かもしれません。これらは人によってさまざまでしょうから、どれであるべきかという答えはありません。感度や精度を気にするより前に、まず、こうした使いやすさを見て下さい。

※言わずもがなですが、「精度」や「感度」などどうでもいいと言っているわけではありません。これらを理解することもとても重要です。ただ、放射線測定器に一度も触れたことがなく、買う前に足りない知識であれこれ考えても意味がない、非効率だということです。そういう勉強はまず測ってみてからにして下さい。

附属 測定と検出


まず、言葉の定義からハッキリさせておきましょう。

測定:ある量の大きさを、計器や装置を用いて測ること。
検出:微量の成分などを検査して見つけ出すこと。

※いずれも「goo辞書」より

測定とは量を測り(計り)ます。ですからおのずと単位が伴います。検出とは単に見つけ出すことです。存在の有無を見出します。両者はまったく違うものです。


たとえば地上1mで空間線量を測定します。「0.1μSv/h」と表示されました。これは”測定”ですね。では、ガイガーカウンターを地表に近づけます。すると「0.5μSv/h」と表示されました。これは? これは”測定”ではありません。”検出”です。なぜなら、0.5μSv/hはガイガーカウンターが想定していない使用に基づき、”誤った”数値を表示しているからです。

一般的な放射線測定器では、Svという単位はγ線、もっといえば、多くはCs137(セシウム137)を基準に表示されます。逆に、Cs137以外のものを測定しようとすると、そこに表示される数値は正確ではなくなります。実際、地表に近づけ数値が上がったということは、そこにはβ線がある可能性があります。β線が含まれた結果、表示されたSvは、もはやSvととしての意味をなしません。つまり測定ではないということです。ただ、β線による汚染があるかもしれないということがわかります。ですからこれは検出です。

なぜわざわざこんなことを言っているかということ、こういうことがあるからです。

地表にガイガーカウンターを近づけたら「0.5μSv/h」と表示された。

「0.5μSv/hということは、1日で12μSv。1年間で4.38mSv! 年間1mSvを超えるぞ! 危険だ!」

なんて言うのは間違っているということです。正しくは、

「地上1mだと0.15μSv/h。だけど地表だと0.5μSv/hと表示された。ここは結構汚染されてるな。近づくのはよそう(除染しよう)」

です。

さて。

よく、「地上1mで測定しなければいけない」「アルミでβ線を遮断して測定しなきゃいけない」なんてセリフを見ます。これらは正しいことではありますが、ただ、ちゃんと理解してないと誤解をします。

γ線を”測定”したいのであれば、周囲に何もない状態(”地上1m”だけじゃダメなんですよ!w)で測定すべきです。そうするのであればβ線の影響もないでしょうから、アルミなんて必要ありません。ビニールも必要ありませんw

γ線の”測定”ではなく、放射線・放射能の汚染を”検出”したいのであれば、地表に放射線測定器をかざします。この際、汚れが放射線測定器に付着するかもしれないので、ビニール袋に入れる等の工夫をしてもいいでしょう。ちなみに、この際表示される「Sv」は「Sv」としての意味をなしていませんから、相対的な数値の変動により汚染の有無、ある程度の度合いを推し量るのみです。

どちらが正しいということではないですよね。何をしたいのか。それによってやり方も当然異なります。ただそれだけのことです。

なぜビニールに入れなきゃいけないと言われているのか。自身が持っている機器は何をするためのものか。自分は何をしたいのか。こういうことをちゃんと考えれば、どうすべきかはおのずとわかるはずです。

「ビニール袋に入れなきゃいけない」
「1m離さなきゃいけない」

そんなことを金言のごとく暗記することは、放射線のことを理解していないということでもあるのです。

おわりに ~わかりやすさの功罪


シーベルト(Sv)という単位は不思議な単位です。0.1μSv/hと表示されても、0.1μSv/hの放射線がそこにあるということじゃありません。なぜなら、シーベルトとは放射線の量を表しているわけではなく、人体への影響を表す単位だからです。

ある物質が放射線に照射されたとき、その物質の吸収線量を示す単位がグレイ(記号 Gy。定義 J/kg)である。生体(人体)が受けた放射線の影響は、受けた放射線の種類と対象組織によって異なるため、吸収線量値(グレイ)に、放射線の種類ないし対象組織ごとに定められた修正係数を乗じて線量当量(シーベルト)を算出する。

[ソース]Wikipedia:シーベルト

もちろん、しっかりとした研究に基づき、こうした係数をかけ、こうした数値が出たら、こんな影響だろうということが表されているのですが、ただ、少なくとも客観的に存在する量を測定するというのとは、ちょいとニュアンスが異なります。ここには人による”評価”が加わっているからです。

さらに、放射線測定器という機器内部においても、また違った”評価”が加わります。その評価とは、カウントからSvへの”換算”です。

「これだけ放射線(Cs137によるγ線)をカウントしたら、○Sv/hね」

というのは、各メーカーが決めています。もちろん、この換算は厳正な校正により決められているのですが、それでもメーカーによる”評価”が加わっていることには変わりません。たとえば、同じGM管を使っていても、違った機種ではなぜ違うSvを表示するのか。それはメーカーによる評価が加わっているからです(機器ごとの計数効率、物理的な問題などに依存します)。

Svという単位は現在の私たちにとっては一番なじみのある単位となりました。とてもわかりやすい単位です。また、メーカーもわかりやすくSvを表示させようとしています(すべてとは言いません)。その一例が、平均化処理です。

放射性物質からいつでも均等に放射線が発せられているわけではありません。また、同じ量の放射線であっても、それを検出器が100%確実に捉えられるというわけでもありません。結果、検出量にブレが生じるわけですが、ブレていてはわかりづらい。だからメーカーは工夫し、わかりやすく平均化し、Sv表示させます。

ただ、わかりやすくなっている反面、見えなくなっているものもあるんだということをわかっておく必要があります。平均化=ならすということは、飛び出た部分を見えなくさせています。どう平均化されているか、どう換算されているかがわからなければ、実際にどれだけの量であるかは見えません。

わかりやすさを私は否定しません。誰もが容易に放射線を測定できるという状況は、それはそれでとても重要です。そして、これに寄与しているのがSvという単位です。けど、それがすべてだと思っていると、見過ごすことも出てきます。ザックリとした理解にはつながるかもしれませんが、正確な理解には至らないかもしれません。

放射線測定器はとっつきにくい機器ですが、使っていかなければいけないという現状です。ですから、最初は、とっかかりは「わかりやすさ」を求めて結構です。まずは慣れ親しむことも大切です。ただ、ぜひ忘れないで下さい。わかりやすければいいというわけじゃないということを。わかりやすさは、何かを犠牲にしているということを。そして、その犠牲になっている部分を見ようとすることが、より正確に、正しく測定することにつながるんだということを。

当サイトも、できるだけわかりやすくということを心がけています。ですが、わかりやすくしている分、欠落、不足している部分、不正確な部分も生じています(単に私の理解不足というのもあるのですが)。

当サイトがみなさまの”踏み台”となることを祈ってw、この長ったらしい記事を締めくくりたいと思います。

さて、ここまでお読み頂ければもう大丈夫。あなたは放射線測定器をどう選べばいいかがわかりました。そして、あなたに最適な機種がどれかも絞れるはずです。

あなたは自身で考えます。ですから相談などせずとも、あなたにピッタリな機種が探せます。そして、考えることをし始めたあなたは、放射線測定器を購入しても、きっと適切に使えるはずですw

ガイガーカウンターカタログ in Amazon
photo by Ha-Wee
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コメント一覧

345. 2012.01.20
いつも楽しませて頂いています
放射線がどこに強くあるのか把握したかったので
はじめはシンチレーション式を購入しようかと思っていましたが
このブログを読むうちに
gm管でも良いかなと思い
2chで悪名高い楽天のお店で
soeks-01mを購入しました
今は正確な数字よりも
ドコが危険かを判断しなければならないので
この商品で正解かなと思っていますが
どうでしょうか?
346. 2012.01.20
コメントありがとうございます。

とてもいい選択だと思いますよ(^^

すでに購入されたのだとしたら、SOEKS 01Mを選んだことが正解かどうかではなく、SOEKS 01Mをどう使えばいいかを気にしてみて下さい。

特にSOEKS 01Mはクセがあると言われています。本当にそんなクセがあるのかどうか、あるとしていったいどんなクセなのか、そのクセは何に起因するのか、その上でどう使えばいいのか。実際に測りながら、そんなことを検証したり、あるいは調べたりすることこそが重要だと思います。

こうした検証は単にSOEKS 01Mを正しく使うためにするのではありません。放射線、放射線測定のことについても理解を深めてくれるはずです。

せっかく買ったのです。ぜひ愛着を持って、思いっきり使い込んでやって下さい(^^
548. 2012.05.21
本筋とはまったく関係ないことなのですが、「はじめての~」のコンテンツへ入る子猫の困った表情のタイトル写真が、なんとも良かったのですが・・・。わがままですみません。
551. 2012.05.21
あれ、フリー素材から取ってきたもので、私の飼っている猫と思われるのもアレだなぁと思って変えたんですが、あっちのほうがよかったですか(^^; 機会を見てまた戻してみますw 確かにほっこりさせるかわいい画像ですよね(^^

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