二本松マンションはなぜ3ヶ月もわからなかった?~個人線量計とサーベイメーター

2012年01月16日
関連ワード:コラム , 実用量 ,
マンションに住む女子中学生の3カ月間の線量が1.62ミリシーベルトと比較的高かったため、市が調べた。
[ソース]朝日新聞 二本松の新築マンションで高線量 浪江で土台の材料採取

「なぜ3ヶ月ものちに判明したんだ?」

「線量計つけてたら、そんなに線量が高いことなんて、すぐわかるはずでは?」

もっともなご質問です。

ですが、正解は

「いいえ、3ヶ月後じゃないとわかりません。どれだけ被ばくしたかを後から知るのみ」

です。

gc_032.jpg 女子中学生が身に着けていたのは、定かではありませんがフィルムバッジあるいはガラスバッジと呼ばれる線量計だと思われます。福島県内でよく配布されています。これは胸ポケットなどに装着し使用するのですが、みなさんが想像されるような放射線測定器とはちょっと異なります。

※写真はイメージです。この子は二本松の女子中学生ではありません。この子が持っているものがガラスバッジです。

このタイプの線量計は、ある一定期間の積算線量=被ばく量を記録し、期間終了時に専門機関等で専用の機器でもって、数値を読み取ります。そこで初めて「この○ヶ月で○Svの積算線量≒被ばく量だった」ということがわかります。装着している時点では数値は一切表示されません。

「そんなもん、なんで必要なんだ!? すぐその場でわからないと意味ないじゃん!」

もっともなご意見です。

ですが、正解は

「いいえ、これにはこれなりの意義があります。数値をその場で読み取れないフィルムバッジやガラスバッジは、低コストである、管理がしやすいといった点にメリットがあるからです。ただ、おっしゃる通り、その時、その場での線量もわかったほうがいい場合もあるので、数値が表示されるタイプの放射線測定器も状況によっては持っておいたほうがいいでしょう」

です。

実はこれ、放射線測定においてはとっても重要なことを含んでいます。

「線量」にはザックリと2つの種類があります。

・周辺線量…その場の線量
・個人線量…個人が受けた線量

周辺線量を測定するための放射線測定器は「サーベイメーター」と言います。自治体等がよく発表している「本日の放射線量は0.2μSv/h」云々。これは周辺線量≒空間線量で、サーベイメーターで測定されています。その時、その場での線量率を測定しています。

個人線量を記録・測定するための放射線測定器は「個人線量計」と言います。妊婦や子供など特に注意が必要と思われるような人であれば、どれほどの期間でどれほどの被ばくをしているかを記録・測定することも重要です。そういう場合は個人線量計を使用します。常に携帯し、ポケット等にさしておき、1日、1ヶ月、3ヶ月、1年と、ある一定期間の被ばく量を記録します。

余談ですが、「線量計」とは一般的に個人線量計を指します。サーベイメーターも含め線量計と言うのは多分に誤解を与えるので、避けた方がいいというのが持論です。専門家等が長年の慣例としてそう言うこともありますが、私たち一般人はちゃんと区別して理解するためにも、安易に線量計という言葉は使わない方がいいと思っています。

以上をまとめてみます。

線量の種類 測定器 測定方法 具体的な主な機種
周辺線量
(≒空間線量)
サーベイメーター サーベイメーターを空間にかざし、線量率を測定 TERRAシリーズ、RADEXシリーズ、SOEKS01M、Inspector、PA-1000 Radi、A2700 Mr.Gamma、エアカウンター
個人線量 個人線量計
(線量計)
個人線量計を常時携帯し、一定期間の被ばく量を記録 PDM-122、Dosei、DoseRAE2、多くの中国製放射線測定器(?)、フィルムバッジ(総称)、ガラスバッジ(総称)

さて、二本松のマンションの件ですが、この女子中学生は(おそらくは)3ヶ月ごとに専門家により積算線量を読み取ってもらうタイプの線量計を身につけていました。この線量計は数値を表示してくれません。さらに、この家庭にはサーベイメーターもありませんでした。ですから、”異常”に気付かないまま3ヶ月が(いや、本当は3.11以降だから…)過ぎます。そして、線量計を所定の方法で専門家に送ります。この線量計を見た専門家は驚きます。

「この数値はなんだ!?」

専門家から連絡を受けた市は調査に乗り出します。お嬢さんの自宅をサーベイメーターで測定してみます。するととんでもない数値が出ました。おそらくは汚染されたコンクリが原因じゃないか…。

これが今回の件のあらましだと思われます。

各種規制の問題、汚染処理の問題、いろいろあるでしょうが、とりあえず、放射線測定器的にこのニュースを見るならば、まず、放射線測定器にはサーベイメーターと個人線量計があるということ、両者は使用目的に違いがあるということ、放射線測定器を購入する際は、使用目的にあった機種を選ばなければいけないということを学んでおきたいところです。

そしてもう一点。このように自治体等から線量計を配られていることもあるかもしれませんが、数値が読みとれないものもあります。これはこれでいいのですが、特に高線量地域にお住まいの方、ぜひ数値が読み取れるサーベイメーターなり個人線量計も持っておいて下さい。

[関連過去記事]
放射線測定器と個人線量計 ~何が違うの?
改めて国民生活センターのこと、個人線量計のこと
(一番下にサーベイメーターと個人線量計の違いを表にして詳しくまとめています)
測定対象と相場表(改) ~タイプ別放射線測定器(初心者用)
(同じサーベイメーターでも目的によって選ぶべき機種も異なります)
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エアカウンターEX

コメント一覧

912. 2013.03.18
富士電機の
線量計はこういう事がないように、基準を超えると警報を発動します。でも自治体が無能なのでどうしようもありませんね。
どのように仕様を決めるかは自治体と国家の争いです。われわれは受注した仕様どうりの物を収めるしかありません。
971. 2013.10.03
このコメントは管理人のみ閲覧できます
972. 2013.10.03
コメントありがとうございます。
メールにてご返信差し上げました。
ご確認のほどよろしくお願い致します。

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