RD1008は”パンケーキ”じゃないとQR社は言うわけですが

2011年11月26日
関連ワード:コラム , Quarta-Rad , RADEX , パンケーキ ,
複雑な問題と言いますか、ちょっとテーマが絞りづらいなと感じながら書いています。内容が追いづらい記事になっているかもしれません。すみません。

■ロシアと銀行と放射線測定器

最初に小ネタを。

Quarta-Rad:RADEX RD1008
Doza:MKS-10D “Chibis”
SNIIP-AUNI:МКС-01СА1

これらに共通していることがあります。それはロシア中央銀行(the Central Bank of Russian Federation)が2007年12月に発布した「放射能汚染された紙幣の特定、一時保管、除染および破棄に関する命令書」(№ 131-I)に準拠した機器だということです(上記各サイトにはその旨が書かれています)。

たまに「この放射線測定器はロシア銀行でも紙幣の検査に使われています」といった宣伝文句を見かけますが、あれはウソです(ウソである可能性が高い)。実態は上述の通りです。

[参考サイト]http://www.dmd.ru/news/?news_id=83
※文字エンコーディングをキリル文字にするとよろし

同命令書に準拠しているというのは、具体的に言えば、

・周辺線量率の測定範囲が0.1μSv/h~0.1mSv/h(γ線エネルギー:50keV~1.25MeV)
・ベータ粒子束密度の測定範囲が10~500/cm^2・min(ベータ粒子エネルギー:100keV~3Mev)

これを満たしていなければいけません(他にも細かいことはあるんですが)。こういうこともあるのでロシア系メーカーの放射線測定器はベータ粒子束密度も測定できるものが多いんですね(もちろん、これだけが理由じゃないでしょうけど)。

ちなみに、なぜ紙幣の汚染がこれほどピックアップされているかというと、ひとつには2006年のカザフスタンでのある”事件”も関係しています。詳細は「カザフスタン 紙幣 放射能汚染」といったキーワードでググってみて下さい。確かに、よく考えてみると紙幣ってすごいですよね。放射能汚染の拡大を助長するわけですから。

■RD1008とDKG-07Dの検出器

「RADEX RD1008」の検出器は「Beta-2(Бета-2)」と「Beta-2M(Бета-2М)」です。

[参照サイト]
Kantan life:RADEX RD1008

同検出器のメーカーサイトはこちら。

[参照サイト]КОНСЕНСУС(CONSENSUS)社

写真でもどうぞ。

gc_144.jpg gc_145.jpg

[参照サイト]http://photo.qip.ru/users/dottor/115889501/

ちなみにこちらが「RADEX RD1008」の内部です。うーん。これを見ると、「Beta-2」「Beta-2M」じゃなくて、「Beta-2-1」「Beta-2M-1」のような気も…。ま、いっか。

これに関連して、もうひとつ。「DKG-07D "Drozd"」がパンケーキだとの情報が寄せられていました。

[関連過去記事]「DKG-07D “Drozd”」の検出器がわかった記念
※コメント欄参照

よくよく調べてみると、そのパンケーキは「Beta-2M(Бета-2М)」なんですね。「γ線しか測れないのになんでパンケーキやねん!」と思っていたのですが、なるほどそういうことでしたか。マイカじゃない、γ線用のパンケーキだったと。

[参照サイト]http://personaldosimeter.com/english/basicpoints/

■だけど「RADEX RD1008」は”パンケーキ”ではない!w

もはや言葉のあやみたいになってきそうなのですが、Quarta-Radがそう言っているんだから仕方ないw 何度か同社とやり取りした内容を紹介してみます。

RD 1008 is a radiation monitor, not a dosimeter. In Russia there is a difference between these classes of devices. Monitors are simple. The dosimeter has a multi- metallic pancake assembled from Al, Cu, Pb with a different width around a geyger tube. It means that, for example in case of a gamma- photon energy 600 kEv the values shown by a dosimeter and radiation monitor would be equal. But in case of energy of a gamma- photon would have a different value, the values would not be equal. The monitor is more cheap, and it has no "pancake". That's the difference.



I mean that dosimeters has a multi- metallic structure around a tube, and indicators has no such structure. It was written in the last message. WBR.



"Pancake" means _____ a multi- metallic structure around a tube, and indicators has no such structure_______. It was written in the last message.

Some layers of Al, Cu, Pb 0.1 - 1 mm height.

So indicators has no such structure.

And in case of energy of photons is 600 kEv so the dose rate would be equal with and without this structure. In case of the energy is not 600 kEv, it would be some difference.

先日のSOEKSの記事でも書きましたが、ロシア(&ウクライナ)はちょっと独特です。「dosimeter」の定義も、私たち日本人がイメージしているものと違います。この件に関しては追々。

で、「Beta-2」「Beta-2M」は丸い形をしていますから、どこからどう見てもパンケーキのはずなのですが、Quarta-Radはどうやら材質を問題にしていて、「Beta-2」「Beta-2M」はAl、Cu、Pbといった金属でできていない、そういう構造じゃないからパンケーキじゃないと言います(おそらく)。

ちょっと理解しがたいのですが、Quarta-Radとのやり取りはこれにていったん終了とすることにしました。

■GM管の材質とエネルギーの強さとエネルギーレスポンス

「600 keV」という数値が出てきますが、この部分はパンケーキ云々というテーマにおいては本質的な問題ではありません。GM管の材質によってγ線のエネルギー効率、検出効率が異なる、600 keV以上になると差異は少なくなるけど、600 keV以下だと材質によってまったく異なるということはよく知られていることです。そしてこれはGM管一般の話であり、パンケーキ固有の話ではありません。

[参照サイト]
Radiation Detection and Measurement
by Glenn F. Knoll

gc_141.jpg 頂いたコメントで知った資料なのですが、P219の図をご覧下さい(本当はP217、P218も読みたかった!w)。GM管の材質の違いと検出効率の関係がわかります。図を少し補足しますと、

Pb:鉛(lead)
Cu:銅(copper)
Al:アルミニウム(Aluminium)

の順で検出効率がいいということですね。

Cs137でよく見かける662 keVですが、このあたりになると、材質の違いはさほどなくなります。ただ、それ以下になると、銅やアルミではそのまま検出効率が落ちていくわけですが、鉛では逆に上がります。

gc_142.jpg 材質の話とはすこしズレますが(無関係ではありませんが)、「lead」と似た曲線を各所で見ます。たとえば「Inspector PLUS」のエネルギーレスポンスもこれと似た曲線を描いています。ちなみに「Inspector PLUS」のGM管・LND 7317はステンレスです。

[参照サイト]
LND:LND7317スペック
S.E.International:Inspector PLUS エネルギーレスポンス表

「Inspector PLUS」では最大で約5倍ですね。

ここでもうひとつ、とてもとても素晴らしい資料を見つけたので紹介します。

[参照サイト]
G-M Pancake Detectors : Everything You’ve Wanted to Know (But Were Afraid to Ask)
by Paul R. Steinmeyer

なんというタイトル!w 私にピッタリw こちらは全部読んでみました。すごく基本的なことが丁寧に解説されています。GM管一般にも通じる部分も多いので、時間がありましたらぜひ。英語なので敬遠されてしまうかもしれませんが、英語自体はとても簡単です。難しいと感じるとすれば、専門用語があるからですかね。

gc_143.jpg で、この資料に掲載されている「Figure 4. Typical G-M pancake energy response curve」がこちら。やはり、「Inspector PLUS」のグラフと同じですね。このことを踏まえ、ポールのおっちゃんはこう言います。

「660 keVのCs137を1とした場合な、低エネルギー(50 keV)のγ線やと、実際よりも最大で450%も高いSv数値を表示してしまう可能性があるやろ。せやから、パンケーキでSvを読むのはあかんっちゅうことや。cpmで見ぃひんといかんねや」

と(もちろん、それ以外の理由もいろいろ書いてあります)。

まあ、これをもってして「パンケーキでSvを見るな」とは言いませんが、こうした特徴がパンケーキにはあるということは知っておくべきでしょう(そもそもGM管はγ線に…という問題もあるんですけどね)。

そしてもうひとつ。こちらはご存じの方も多いかもしれませんが。

[参照サイト]
理想のガイガーカウンター vs 私のガイガーカウンター
by 野尻美保子(KEK)

もちろん全体を通してとても面白い内容なのですが、10ページ目の何気ないひと言、「実はγ線は窓と逆からきたものを拾っている」が重要ですね。パンケーキの金属部分(カソード)にγ線があたると、金属からβ線(電子か)が飛び出し、それをGM管内で検出しているというわけです(GM管一般の話でもあるのですが)。ポールのおっちゃんが「パンケーキは方向が重要やさかいなぁ」と言っていたのも思い出します。

こうなると、じゃあ「Beta-2」「Beta-2M」のカソード部分はどないなっとんねん!とも思うのですが、これもまた追って。また、50 keVなどエネルギーの弱いγ線の検出効率がGM管の材質によってあれほど違ってくるのはなぜか、光電効果・コンプトン効果・電子対生成って何だ? そのあたりのことも機会があればw

■RD1008をガイガーカウンターとなぜ呼ばない?

非常に興味深い事実です。Quarta-Rad社、КОНСЕНСУС(CONSENSUS)社の公式サイト(およびマニュアル)を一度よくご覧下さい。不思議なことに気付きます。

Quarta-Rad社は1503、1503+、1706を”ガイガーカウンター”と言います。なんならGM管の種類(SBM20-1)も記載しています。なのに、1008に関してはなんと、GM管のGの字も出てきません。ガイガー-ミュラー計数管を使っているとひと言も言っていないのです。

また、КОНСЕНСУС(CONSENSUS)社も「Beta-2」「Beta-2M」含め、自身の製品について、これらがgeiger-muller tubeだとひと言も言いません。counterとしか言いません。

不思議です。とても不思議です。LND社はGM管だと言いますし、pancake styleだとも言っています。だけど、QR社、C社はGM管ともpancakeとも言いません。なんなんでしょうね。

デーモン閣下は悪魔なんだし、グレート・ムタと武藤啓司は別人なんだし、「DJ OZMAは別人だ」と言われれば「はあ、そうですか」としか言いようがなく、場合によっては「コリン星は無理に言っていた」と後から告白されることもあるわけですが、そういうこと?w あるいは「和也だと思ってたんだけど、実は達也だったのか」ということでしょうか。なんだかワケわからなくなってきましたねw

■RD1008白バージョンはパチもんじゃありません

ついでにこの件に関しても聞いておきました。QR社の回答はこうです。

White is also our.

ま、まあ、私の英語レベルもアレなんですが、こういう英語の人と話をするわけですから、そりゃ会話も噛み合いませんなw とりあえず、そういうことなので、ご安心をw


わかりもしないのに、あれこれ詰め込んでしっちゃかめっちゃかになりましたね(^^;) なんかの参考になれば幸いですが…。そして、何か誤りがありましたらご指摘下さいm(_ _)m

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