ベラルーシ、堀場、IAEA、京都。ポリマスターのコメントは何を語っている?

2011年11月15日
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ポリマスターが発表した数値の意味

14 Nov 2011
More than double excess of normal background radiation was detected with equipment of Polimaster on the Belarusian-Polish border

More than double excess of normal background radiation was detected with equipment of Polimaster on the Belarusian-Polish border on the 9th of November when the lorry «DAF» was crossing the checkpoint Kozlovichi.

Vehicle portal monitors of Polimaster found exceeding of the admissible limits of ionizing radiation. The vehicle was carrying firebrick.

The border guards output lorry beyond the common traffic and placed it on a separate platform.

0.45μSv/h background radiation was fixed in cargo (the admissible limit is 0.2μSv/h).

Ministry of Emergency Situations of Belarus was informed about the incident.

During last 10 months there were 868 cases of exceeding of acceptable radiation rates fixed on the Belarusian border. 24 of them were considered as dangerous, and therefore were returned to the countries from which they departed.

[ソース]Polimaster:news

(意訳)ベラルーシ~ポーランド国境で、ポリマスターの測定器が通常の2倍以上の放射線を検出

11月9日、ベラルーシ~ポーランドの国境にて、DAF社製トラックがコズロヴィッチのチェックポイントを通過する際、ポリマスター社製機器が、通常の自然放射線量の2倍以上となる放射線を検出しました。

ポリマスター社のポータルモニター車は許容限度を越える放射線を検出。そのトラックは耐火レンガを運搬中でした。

国境警備隊はそのトラックを一般道路から外し、隔離場へと移動させました。

貨物からは0.45μSv/hの放射線が測定されました(許容限度は0.2μSv/h)。

この事故に関しては、ベラルーシ民間防衛問題・非常事態・自然災害復旧省にも通報されました。

ベラルーシ国境では過去10ヶ月で、868件の許容放射線量率越え案件が確認されています。そのうち24件は危険だと判断され、出発国(地域)へ帰還させられています。

興味深いニュースです。

0.2μSv/hが”normal background radiation”という基準として考えられています。これがベラルーシ国内一般の話なのか、あるいはその場所のことなのかは定かではありませんが、いずれにせよ、0.2という数値の持つ意味は、今の日本人にとっては想像しやすいですね。それが高いとか低いとかという問題ではなく、実感としてこの数値を見ることができるということです。

また、レンガというのも興味深いですね。この話になるとあれやこれやとややこしくなるので、これ以上深くは書きませんがw

チェルノブイリってもう25年前なんですよねぇ。なるほど…。

なんてことが言いたいわけではなく、問題は0.45μSv/hです。意訳ですから曖昧に書きましたが、ちゃんと考えると、何気に難しいですよ。この英語。

では、お聞きします。ベラルーシの国境警備隊になった気持ちで考えて下さい。このトラックに放射線測定器を向けました。さて、何μSv/hを表示していたでしょうか?

「いやいや、0.45って言ってるじゃん」

残念。ハズレです。

正解は0.65μSv/hです。

0.2という通常のバックグランドがある。その2倍以上、つまり0.45という放射線量率が検出された。ということはすなわち、0.2 + 0.45 = 0.65μSv/hです。なぜそう言い切れるか、なぜこんなどうでもよさそうなことにこだわるのか。

話はダイナミックに展開します。ことは「PA-1000 Radi」に関係してくるからです。意外なところにいったでしょ?w

※上記のベラルーシでの対応がIAEA基準に基づいているということを前提に考えています

堀場製作所(≒JEMIMA)とIAEAの表現の差

「環境放射線モニタ PA-1000 Radi(ラディ)」の公式サイトをご覧になった方なら、一度は目にしたことがあるかもしれません。こんな表記があります。

【JEMIMAガイドライン適合】
2011年5月24日にJEMIMA((社)日本電気計測器工業会)より、工業製品の放射能汚染を確認する方法についてのガイドラインが策定されました。HORIBAの環境放射線モニタPA-1000(Radi)は、このガイドラインに適合しておりますので、安心してご使用いただけます。

「工業製品の放射能汚染を確認する方法について」
(JEMIMAサイト掲載のPDFが開きます)

「PA-1000 Radi」一覧(楽天市場)
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JEMIMAの会長が堀場製作所の社長だということはどうでもよくてw、このPDFにはこんなことが書かれています。

(前略)測定値がバックグラウンド放射線の3倍を超えなければ、その工業製品については放射能汚染の問題はないと考えられます(IAEA-TECDOC-1162 に準拠)。
(注)IAEA-TECDOC-1162:国際原子力機関(IAEA)が策定したマニュアル『放射線緊急事態時の評価および対応のための一般的手順』
http://www.nirs.go.jp/hibaku/kenkyu/te_1162_jp.pdf

当然、この手順も見てみましょう。手順にはこう書かれています。

手順D2 人および機器の除染

一般的な規則として、バックグラウンドの2倍を超える汚染が検出されるレベルは除染が企図されるべきであることを示している。

[ソース]独立行政法人 放射線医学総合研究所:放射線緊急事態時の評価および対応のための一般的手順
http://www.nirs.go.jp/hibaku/kenkyu/te_1162_jp.pdf

下手くそな翻訳ですw いつも通り、原文にあたります。

As a general rule, detectable contamination levels greater than twice background indicate decontamination should be attempted.

[ソース]IAEA:Generic procedures for assessment and response during a radiological emergency
http://www-pub.iaea.org/mtcd/publications/pdf/te_1162_prn.pdf

(柔訳)一般的に、バックグランドの2倍を越える汚染レベルが検出されれば、除染されるべきでしょう。

ま、人のことは言えない訳ですねw

それはさて置き、問題は「3倍」と「2倍」ですね。もちろん意味していることは同じです。

「バックグランドを含めた測定値がバックグランドの3倍を越えなければ問題はありませんよ」というのが堀場製作所=「PA-1000 Radi」です。

「汚染レベルがバックグランドの2倍を越えていたら除染が必要ですよ」というのがIAEAです。

話は少し戻りますが、冒頭のベラルーシの件も、これでよく理解できると思います。後者の意味で2倍と言っていますから、あそこで表示されていたのは0.65μSv/hだったはずですね。表示値が0.45μSv/hだったらトラックは素通りしていましたw

で、こう見てくると、もうひとつ面白いことに気付きます。堀場製作所、あ、違った、JEMIMAだったw まあどっちでもいいです。JEMIMAとIAEAでは言い方が2つの意味で異なります。

JEMIMA
・測定値がバックグランドの3倍
・3倍を越えなければ問題なし

IAEA
・汚染がバックグランドの2倍
・2倍を越えていたら除染が必要

内容は同じです。ですが、このセリフに透けて見える思惑、思惑という言葉が少し重すぎるなら、ニュアンスと言い換えてもいいでしょう。両者のセリフのニュアンスが異なります。

前者は工業製品を出荷したいわけですから(少しうがった見方ではありますねw)、安全に見せたい。だから「2」倍よりも「3」倍を選びます。だから「問題なし」というポジティブな表現を使います。

IAEAも原子力寄りではありますが、一応は安全を重視します。ですから、「3」倍ではなく「2」倍を選び、「除染が必要」と危険の可能性を匂わせます。

JEMIMAの言い分もよくわかります。確かに、JEMIMA風に言った方が誤解がないと言いますか、わかりやすいです。実際、冒頭のベラルーシの例で「0.45」と思ってしまった人も多いでしょう。JEMIMA風に言っていれば、「0.65」だとすぐわかったはずです。

ですから、どちらがいい悪いではなく、私たちとしては、ちょっとしたことかもしれないけど、気をつけてこうした数値を読まないといけないよね、ということです。

ポリマスターのコメントは誰に向けられている?

そして最後にもうひとつ。こんなニュースもありました。

西日本最大の自動車解体工場の集積地とされる八幡市の業者でつくる「八幡自動車処理事業協同組合」は、解体前の車の放射線量検査を始めた。1時間あたり0・5マイクロシーベルトを超える線量が検出された場合、売り主に返還する。
(中略)
八幡市内の業者は年間計4万~5万台の廃車を解体している。解体後の部品の送り先になる製鋼所は、受け入れる部品の放射線量の基準を1時間あたり0・5マイクロシーベルト以下としている。同組合の巖(いわお)節夫理事長は「国が指針を出していない現状では、現場で対応するしかない」と話す。

[ソース]朝日新聞:自動車解体前に放射線量を検査

おっと。奇遇にも「PA-1000 Radi」が使われていますねw それはいいとして、この0.5μSv/hをバックグランドを含めた数値と仮定します。IAEAの基準に照らし、3で割ると、

バックグランド:0.167μSv/h
汚染レベル:0.333μSv/h

となりますね。なるほど。八幡市というのは相当バックグランドがお高いようで。…ってそんなわけはありませんね。八幡市のサイトには情報はありませんが、京都府の放射線測定結果はありました。

0.05μSv/h以下! こ、これが普通なんですよね。驚くべきことじゃない(^^;) だけど、こんなバックグランドですから、さて八幡市の業者が基準としている0.5μSv/hというのは…。IAEA基準で考えれば、八幡市においては0.15μSv/hを計測したら除染が必要となるはずです。逆に言えば、汚染レベルを0.45μSv/hまで許容しているということです(なお、0.5をバックグランドを含めない数値と仮定したら、もっととんでもないことになりますから、さすがにそれはないでしょうw)。

どう考えればいいでしょう。設定が高すぎると考えるか。それほどにまで汚染された部品等が日本全国に散らばっていると考えるべきか。日本全体がマヒしていると考えるべきか。それとも気にし過ぎなのか…。

私はやはり、ポリマスター社の発表が気になって仕方ありません。先日取り上げたコメント(「Polimasterが出したコメントが実に面白いです」をご参照下さい)もそうなんですが、今回のこのニュースも、日本に向けて発せられているような気がしてしまうのです。

「ベラルーシでは今でもこんな状態です。だけど、私たちは今なお気を緩めず、こうして放射能汚染の拡散を防ごうと努力しています。なぜなら、放射能汚染の拡散が極めて深刻な問題だと、私たちは身を持って知っているからです。日本のみなさん、この現状をぜひ知って下さい。」

そう言っているような気がしてならないのですが、いつものように私の考え過ぎでしょうね、はい(^^;)

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コメント一覧

216. 2011.11.15
「いつものように私の考え過ぎでしょうね、はい(^^;)」

いえいえ、ガレキ処分のことだけでなく、すでに身近でこんなニュースもありますから(汗)考えすぎじゃないですよ~♪

「除染」じゃなくて「移染」の結果、トランプのババ抜きのように、放射性物質は世の中をぐるぐる巡るのでしょう。
まさにガイガー、ひとり一台時代になってしまうのではないでしょうか。

柏市民としてはまた残念なニュースですが…、本日の産経新聞より以下の通り。

『除染土砂を持ち帰る 業者「建設現場で使うつもりだった」 柏』
2011.11.14 20:07

 柏市は13日、市立小学校などの砂場の除染を請け負った市内の業者が、作業で掘り出した砂の一部を持ち帰り、ほかに流用しようとしていたと発表した。契約では、砂はすべて学校の敷地内などに埋めることになっていた。市は、契約不履行だとして行政処分を検討している。

 市によると、この業者が作業したのは柏第四小、柏第六小、柏幼稚園。砂場を40センチ掘って新しい砂を入れ、掘り出した砂は敷地内に埋める作業で、1トン容量の土嚢(どのう)95袋分の砂が出たが、うち43袋を資材置き場に持ち帰った。業者は、「建設現場での足場固めの土嚢として使うつもりだった」と話しているという。

 市の測定では土嚢の放射線量は毎時0・172マイクロシーベルト。市は「周辺への影響は少ないが、市民に心配をかけ深くおわびする」としている。


…この件が、どうしてバレたのかわかりませんね。
良心の呵責で、関係者の内部告発とかでしょうか?

柏市内だけの問題ではなく、各地で「移染」されている土砂はすでにどこかで流用されているのではないでしょうか?

これも、きっと私の考えすぎかもしれませんが(笑)←もう、笑うしかない精神状態です。
219. 2011.11.15
ほんとですねw
どこでわかったのか…。

まあ、氷山の一角でしょうねぇ。
このケースだけだとはとても思えません(^^;)

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