2011/09/16

JISで見る個人線量計とサーベイメーター(放射線測定器/狭義)

長いです。すみません。ただ、放射線測定器という”物””製品”を扱うサイトである以上、一度、ちゃんと見ておかなくてはいけません。

というわけで、今回のテーマは「JIS」(Japanese Industrial Standards / 日本工業規格)です。

JISCは、Japanese Industrial Standards Committeeの略称で、正式には、日本工業標準調査会といいます。工業標準化法に基づいて経済産業省に設置されている審議会で、工業標準化全般に関する調査・審議を行っています。

JIS(日本工業規格)とは、我が国の工業標準化の促進を目的とする工業標準化法(昭和24年)に基づき制定される国家規格です。JISは、2011年3月末現在で、10,259件が制定されています。

JISC(日本工業標準調査会)
http://www.jisc.go.jp/jis-act/index.html

JISはあくまでも日本における規格です。ただ、JIS自体が国際基準に沿ったものであろうとしています。ですから、どこ製の測定器であろうと、JISを基準に考えて大勢に影響はないと思われます。

以下で取り上げている箇所は主に「校正」「試験」に関する記述です。「簡易テスト」はこれとまったく同様でなければいけないわけではありません。ただ、当然のことながら、こうした規格に則って校正されているという事実は、簡易テストを行う際においても認識されていなければならず、この規格・校正の意味するところを理解し、それを反映するものでなければいけません。規格・校正の趣旨とまったく異なるテストしたところで、何の意味もありません。また、使用の際にも、このような規格を知っておくことは決してマイナスではないでしょう。

以降、個人線量計に関する考察が多くなると思います。その理由は以下の通りです。JISは放射線測定器(広義)の規格において、個人線量計の規格を一種の”例外”のように扱っています(正確には上位・下位のような構造)。JISZ4511を見れば、それが明確にわかります。ですから、個人線量計とサーベイメーターの差を考える上では、例外(下位)たる個人線量計がいかなるものかを知ることが重要となります。よって、個人線量計に対する考察がおのずと増えていきます。言わずもがなですが、ここで言う上位・下位とは優劣という意味ではありません。

では、少し堅苦しいですが、見ていきましょうか。難しく見えるかもしれませんが、しょせん素人が書いていますから、わかりやすくはなっているはずです。そして、これが意外と面白かったりもしますので、よければ読んでやって下さい。


[参照JIS一覧]

JISZ4332:X線及びγ線用個人線量計通則
(JISZ4331:個人線量計校正用ファントム)
JISZ4312:X線,γ線,β線及び中性子用電子式個人線量(率)計
JISZ4333:X線及びγ線用線量当量率サーベイメータ
JISZ4511:照射線量測定器,空気カーマ測定器,空気吸収線量測定器及び線量当量測定器の校正方法
■JISZ4332:X線及びγ線用個人線量計通則

5.構造
c)個人線量計には、線量当量表示及び/又は警報機能を設けることができる。また、必要があれば、エネルギー補償用フィルタを備えてもよい。

いきなり面白い記述です。個人線量計において、線量当量率の表示は必須ではないということがわかります。このことが、JISZ4312の5.6、5.7(後述)あたりの規定に関係してきます。

8.試験
b) 6.のa)、b)及びc)の試験には、JISZ4331に規定するファントム(以下、ファントムという。)を使用する。

a)指示誤差に関する試験 b)エネルギー特性に関する試験 c)方向特性に関する試験。これらをテストする際はファントムを使用しなければいけません。他の特性に関してはファントムを使用しなくてもいいのですが、JISZ4511が上位ですので、ファントムを前提とした校正係数は必要となります。つまり、ファントムを使わなくてもいい線量直線性特性、線量率特性などにおいても、ファントムは想定されていなければいけないということです。

附属書(規定) 個人線量計の品質の判定方法

4.品質の判定方法 品質の判定は、次の方法によって行う。
4.1 照射方法 同一形式の個人線量計n個について、基準とする線量当量及びエネルギーの異なるn種のX線又はγ線を照射して行う。線量当量とエネルギーは無造作に組み合わせn種とする。
4.2 判定方法 個々の個人線量計(i)の測定値の正確さ(Pi)は、これに、個々の個人線量計の基準とする線量当量(Hi)を照射し、得られた測定値(Mi)と基準とする線量当量の差を基準とする線量当量で除した値で、次の式によって求める。
(中略)
d) 品質は、次の式を満足しなければならない。
|B|+S≦L

(B)はn個の個人線量計の測定値の正確さの平均値、(S)は個々の個人線量計の測定値の正確さです。

ここで興味深いのは、品質判定をする場合はn個=複数個の同一の個人線量計を用意しなければいけないということです。個体差を考慮してのことだと思われます。なお、n=1はないものと思われます。なぜなら、正確さの”平均値”を求めなければいけないからです。n=1では平均値は得られません。


■JISZ4312:X線,γ線,β線及び中性子用電子式個人線量(率)計

1.適用範囲 この企画は、X線、γ線、β線及び中性子による外部からの個人被ばく線量当量(率)を測定する電子式個人線量(率)計(以下、線量計という。)について規定する。

実はここ、とても重要です。とてつもなく重要です。重要すぎるので繰り返します。重要です!

「以下、線量計という」とあります。つまり、線量計とは個人線量計を指すということです。ですから、サーベイメーターまで含めて線量計と言うのは誤用です。専門家の間で慣例としてサーベイメーターも”線量計”と呼ぶことがあったとしても、それは正確ではありません。

こうした慣例を公の場で使用することは、専門家でない人間に多分に誤解を与えますので、控えるべきだと思います。この件に関しては、後ほどまた。

5.性能
5.6 線量当量指示の保持 この規定は線量測定に適用し、線量率測定には適用しない。
5.7 線量率特性 この規定は線量測定に適用し、線量率測定には適用しない。

個人線量計においては線量率の表示は必須ではないので、「線量率測定には~」という但書がつけられているものと思われます。

要は、個人線量計においては線量率なんてものは二の次だということです。ただし、じゃあ適当でもいいかというともちろんそんなことはありませんw 警報設定誤差には線量率が関係してきますし、後述しますが、7.2.1のテストや校正段階においては当然、線量率に関する規定もあります。

6. 構造
a)サイズは、クリップ等保持用具を除き長さ15cm、暑さ3cm、幅8cmを越えてはならない。
b)質量は200gを超えてはならない。
d)線量計を装着するためのクリップ、リング、又はかけひもなどを用意しなければならない。
h)校正及び特性決定のための基準点及び人体に装着したとき、放射線入射方向を線量計外側に表示しなければならない。

ひっそりと私が唱えていた「クリップ=個人線量計説」が間違いではなかったことがわかりましたw ただ、サーベイメーターにクリップをつけてはいけないとの規定は確かなかったはず。ということは、個人線量計にはクリップはついているけど、クリップがついているからといって必ずしも個人線量計とは限らない、というのが正確でしょう。つまり、「クリップ=個人線量計説」ではなく「個人線量計=クリップ」ですね(^^;)

たとえばDP802iはクリップはついていませんが、ヒモを通す穴はあります。こうした構造も個人線量計であることを示していますね。逆に、TERRAにもRADEXにもSOEKSにもそうした構造はありません(確か)。個人線量計のBH3084系統なんかはクリップも穴もありませんが、ヒモ付きのケースが確か付属していたような。面白いですねw

もうひとつ、入射方向を外側に表示しなければいけないというのも見逃せません。DoseRAE2には液晶面に「+」マークがあります。これがこの表示にあたると思われます。もちろんDoseRAE2とJISは関係ないのですが。

ちなみに、サーベイメーターには入射方向の表示に関する規定はありません。まあ、全方向から入射してくるのが前提ですから当然なのですが。ただ、PA-1000 Radiには「+」がついています。これは確かにJISZ4333の「3.定義」に記された基準点ではありますが、「5.構造」には基準点を表示しなければいけないといった規定はありません。ですから、これは規格がどうという問題じゃなく、メーカーの判断で表示しているだけでしょう。まあ、日本製のサーベイメーターであればだいたい「+」がついていますから、一応、サーベイメーターにおいても基準点に印をつけるというのが正解なんですかね。ちょっとここは規格自体が曖昧ではあります。

7.2 試験方法
7.2.1 試験方法一般 試験方法一般は、次による。
a)試験に対し線量計の基準点を基準線量が決定された点に設置し、製造業者の指示する放射線入射方向から照射する。ただし、方向特性の試験には適用しない。

当たり前のことではあるのですが、どうやら”当たり前”が通じないこともあるらしくw、改めてここに引用しておきます。DoseRAE2など個人線量計をテストする際は、正しい方向から照射しましょうねっ!

c)相対基準試験、エネルギー特性試験及び方向性試験は、JISZ4311に規定するファントム上に線量計を置き、規定の方向から照射することによって行う。その他の試験は、自由空間中で線量計に規定の方向から照射し、ファントムの換算係数を乗じてもよい。

基本的にはファントムが必要ですが、テスト内容によってはファントムを用いず、ファントムの換算係数を乗じてもいいようです。さて、例のテストはどこまでやっていたのか…w

7.2.8 線量率特性試験 この項目については線量測定に適用し、線量率測定には適用しない。(中略)1mSv/h、10mSv/h、100mSv/h、1Sv/hの線量率で照射した各線量を基準値とし、指示値から基準値を差し引いた値の基準値に対する百分率を求める。照射する時間は、各デカードの80%の値を指示する時間とする。

繰り返しになりますが、「線量率測定には適用しない」とあります。じゃあ、線量率に関しては試験の必要がない=適当でいいかと言えばそうではありません。当然、校正段階においては線量率をどう校正するかという規定があります。そして、その校正においてはファントムによる係数が加味されますから、テストにおいてもそのことは考慮に入れておく必要があるでしょう。

付属書5(参考) JISと対応する国際規格との対比表

順番が後先になってしまいましたが、JISとIEC61525、IEC61526との比較です。少なくとも当記事で扱っている項目に関しては、両者に特筆すべき差はありません。つまり、JISと国際規格とでは、それほど差はないということです。


■JISZ4333:X線及びγ線用線量当量率サーベイメータ

1.適用範囲 この規格は、X線及びγ線の1cm線量当量率を測定する放射線サーベイメータ(以下、サーベイメータという。)について規定する。

やはり、個人線量計とサーベイメーターは明確にわけられて考えられていますね。違うものだということです。


■JISZ4511:照射線量測定器,空気カーマ測定器,空気吸収線量測定器及び線量当量測定器の校正方法

1.適用範囲 この規格は、光子エネルギー10 keV~3 MeVの照射線量測定器、空気カーマ測定器、空気吸収線量測定器及び線量当量測定器(以下、測定器という。)の校正方法(ただし、特定標準器又は特定二次標準器などによる計量法に基づく校正は除く。)について規定する。

線量当量測定器=測定器という言葉には、サーベイメーターも個人線量計も含まれているということです。上述の通り、一般的には広く「放射線測定器」と呼ばれているわけですが、これはサーベイメーターと個人線量計の両者を意味するということを知っておくことが重要でしょう。”放射線測定器”を十把一絡げに捉えていると、例のテストのような事態に陥りますw

3.定義
a)線量当量関係の定義
1)ICRU球
2)ICRUスラブ
3)1cm線量当量 場所にかかわる1cm線量当量及び個人にかかわる1cm線量当量の総称。(以下略)
5)ICRU球線量当量(率)
6)ICRUスラブ線量当量(率)
b)校正関係の定義
4)線量当量測定器 ICRU球又はICRUスラブ線量当量(率)の測定を行うための測定器。 10)校正 線量(率)基準と測定器の表す値との関係を求めること。

「放射線測定器」という言葉はJIS上には載っていません(法律には「放射線測定器」という呼称はあるんですけどね)。「線量当量測定器」という表記がJIS的には正しい呼び方です(あくまでもJISの話です)。何度も繰り返しますが、この場合の線量当量測定器は個人線量計とサーベイメーターの両者を含みます。ただ、「線量計」と言った場合は「個人線量計」を指します。サーベイメーターのことを「線量計」と呼ぶのは誤用です(JIS的には)。

なお当サイトでは、JISで言うところの線量当量測定器は「放射線測定器(広義)」と記すようにしています。そしてサーベイメータは「サーベイメーター」もしくは「放射線測定器(狭義)」と記し、個人線量計は「個人線量計」としています。

4.校正の体系 国家標準から一次、二次及び実用照射線量(率)又は空気カーマ(率)基準へと移行する校正の体系は、図1及び次による。(以下略)

gc_026.jpg
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この図から、とても重要な事実が浮かび上がります。とてつもなく重要なことです。ですが、あまりにも重要なことですから、機会を改めて別途、考察してみたいと思います。何のことかは秘密w

2011.09.30追記:この件に関する記事を書きました。そちらもご参照下さい。
「空間線量」ってなんだ? ちゃんと説明できますか?

9.実用校正
9.2 線量当量実用測定器の校正方法 ICRU球線量当量実用測定器の校正は、次のいずれかの方法で行う。
b)ICRU球線量当量実用測定器及び同一形式の検出部をもつ測定器をa)で設定したICRU球線量当量(率)基準で校正し、これを用いて実用照射装置をICRU球線量当量率で値付けし、ICRU球線量当量実用測定器を置換法によって校正する。

ここに限った話ではありませんが、このような記述から、このJIS自体の構成がわかってきます。線量当量実用測定器は個人線量計もサーベイメーターも含んだ言葉です。ですがこのように、場合によってはそのどちらかを指していることもあります。そして、これまでのところは、基本的にはサーベイメーターのことに関して述べられています。個人線量計に関しては、後ほど見ていきますが、ここに内包されるような形、すなわち一種の”例外規定”のような体裁で、当JISに記載されています。逆にいえば、個人線量計に関する附属書は当JIS内においては下位の存在にあたるということです(下位というのは劣っているとかいう意味ではありません。念のため。規格的な構成・構造の話です)。

10. 照射装置及び測定器の配置 基準校正における照射装置及び測定器の具体的な幾何学的配置は、次による。
a)γ線照射装置は、次による。
1)コリメートγ線の場合には、図2のとおりとする。

gc_039.jpg
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2)非コリメートγ線の場合には、図3のとおりとする。

gc_040.jpg
※クリックで拡大

幾何学的配置、つまり、機器と線源をどう配置するか等も、個人線量計とサーベイメーターでは異なるということです。個人線量計の配置に関しては後述します。

附属書1(規定)個人線量計の校正方法

1.適用範囲 この附属書は、個人線量計の校正方法について規定する。

以上を踏まえた上で、ここから個人線量計の校正の話が始まります。

2.個人線量計校正の体系 個人線量計校正の体系は、本体の4.によるほか、附属書1付図1及び次による。
b)ファントム校正は、(以下略)
c)ファントムを用いない校正(1)は、線量当量実用基準測定器と照射装置又はγ線源とによって設定されるICRUスラブ線量当量(率)基準による個人線量計の校正とする。
注(1) ファントムを用いない個人線量計の校正は、個人線量計を線量当量実用基準測定器として用いる方法であり、同一形式の線量計を校正する場合にだけ実施することができる。

試験もそうであったように、校正段階においても、ファントムを使う場合、使わない場合があります。当然、ファントムを使わない場合は、ファントムがあるものと想定しますから、それなりの係数が乗されることになります。

3.ファントム校正
a)ファントム校正の方法
b)照射装置及び個人線量計の配置 照射及びファントム設置個人線量計の具体的な幾何学的配置は、本体の10.によるほか、次による。
2)線源とファントム設置個人線量計との距離は、2m以上とする。

おっと。サーベイメーターの場合は、0.5メートル以上(コリメートγ線の場合)もしくは2メートル以内(非コリメートγ線の場合)でした。しかし個人線量計は2メートル以上です。まったく違いますね。

4.ファントムを用いない校正 個人線量計のファントムを用いない校正は、次による。
a)3.によって校正した個人線量計[以下、基準となる個人線量計(2)]を照射装置又はγ線源を用いてファントムなしで照射し、その指示値(Io)を求める。次に、その指示値がファントム上において得られたと仮定した場合の、照射位置におけるICRUスラブ線量当量率(以下、見掛けの基準線量当量率:★)を次の識字寄って求める。(以下略)

ファントムがなくても、ファントムは考慮されるということです。校正においても試験においても。

gc_027.jpg
※クリックで拡大

この図については「2.個人線量計校正の体系」で述べられています。

「ICUスラブ線量当量(率)基準」というのが2つありますよね。で、右側(ファントム校正)から破線の矢印が出ています。矢印は左側の「実用基準測定器」へ行き、そこから破線矢印が「ICUスラブ線量当量(率)基準」(ファントムを用いない校正)へと延びています。この図からも、ファントムを使っていなくてもファントムが加味されているということがわかります
なかなか面白いと思うのですが、いかがだったでしょうか。何気に重要なことが満載です。放射線測定器および放射線測定に対する理解を深めるためにも、ぜひ参考にしてみて下さい。
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コメント

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Dose-i,Dose-eは個人線量計として基準(Hp10)を満たすために造られたてーのがご理解できましたでしょうか?
とはいえ、まずは法律(労基の遵守)です。それ以外の線量は過剰評価となります。
By不死電機

あ、言い忘れてましたが
dose-e,iはSJISを準拠してますよ。

個人被爆ばく線量計は、放射線電離測における。1日、3ヶ月、1年の積算線量、管理区域入域時間などを、管理するものです、したがって線量率を重視しません。ですが、労基、以外に民生に積算、空間線量、を表示して欲しいと要望がありました、それがdose e シリーズです。hp10と積算線量、の比率、エネルギー特性のデータは押さえてありますから、フィルター特性も押さえてあります。発注前にカスタマイズはご相談くたさい。富士電機の線量計は国内の原子力発電所全ての運用を網羅しています。


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