マニュアルの翻訳は意外といい加減~SOEKSを例に

2011年09月15日
関連ワード:コラム , SOEKS , 翻訳 ,
今回はSOEKSを取り上げていますが、実はSOEKSとはそれほど関係ありませんw 「マニュアルの翻訳」がテーマです。

SOEKSはとても面白い機種なんですが、当サイトでは取り上げる必要がないと言いますか、私があまり乗り気になれませんw というのも、ガジェット的要素が強く、マニアックに分析しているサイトが五万とあるからです。今さら私が言うことはなんもありませんw

なもんですから、当サイトらしく、ちょいと捻ってSOEKSに絡んだ、だけどSOEKSだけの問題じゃないテーマを選んでみました。

さて、「翻訳」がテーマです。SOEKSの場合はロシア語→英語→日本語と翻訳されているのが一般的でしょう。ここまで翻訳が介在すると、当然、内容は不正確になっていきがちです。

そこで、ロシア語の原文マニュアル(公式サイトにあります)、どこかで拾ってきた英語版マニュアル、さらにはロシア語原文をgoogle翻訳に突っ込んでみたもの、この3つをまずは並べてみます(一部分だけ)。意外と違っていますよw
[公式サイトのロシア語マニュアル]

Измерение радиационного фона предметов

Для того чтобы измерить радиационный фон пищевых продуктов, стройматериалов и прочих предметов произведите следующие действия:

1. Измерьте уровень радиационного фона на расстоянии нескольких метров от измеряемого предмета.

2. Поднесите прибор непосредственно к измеряемому объекту стороной с перфорацией и измерьте радиационный фон на максимально близком расстоянии от предмета.

3. Сравните полученные показания с уровнем радиационного фона окружающей среды, полученным в п.1 .

Полученная разница измерений по пп.1-2 и есть дополнительный радиационный фон от объекта.


[どこかで拾った英語マニュアル]

Measuring radiation background of objects

To measure radiation background of foodstuffs, building materials and other things do this sequence:

1. Measure the level of radiation background several meters away from the target.

2. Move the device directly to the target and measure radiation background as close as possible to the target.

3. Compare the resulting data with the radiation background level measured in step 1.

The difference of readings in step 1 and step 2 will represent the radiation background of the target.


[ロシア語マニュアルをgoogle翻訳にブチ込んだ結果]

Measuring the background radiation of objects

In order to measure the background radiation of foodstuffs, building materials and other items the following steps:

1. Measure the level of background radiation at a distance of several meters from the measured object.

2. Hold the device directly to the measured object side perforation and measure the background radiation is as close as possible from the subject.

3. Compare the readings with the level of background radiation environment, obtained in step 1.

The difference between the measurement of claims 1 to 2 and there is an additional background radiation from the object.
日本語翻訳マニュアルも数パターン見ましたが、どれも微妙な感じでした(^^;) 後ほど、できるだけ正確に日本語に訳してみますが、その前に、ロシア語から英語への翻訳の段階で、微妙に表現が違っている点に注目しましょう。

まず、[拾いもの]ですが、おそらくこれが広く流布しているバージョンだと思われます。読んでみてどうですか? なんか変な感じしませんか? たとえば最初のタイトル。

radiation background

普通は「background(radiation)」でしょうね。「radiation background」は見たことありません。次に3行目。

~ do this sequence:

うーん。あまりこのような表現はしませんよね。なんか変です。あるいはstep 3。

the resulting data

もちろん意味はわかりますよ。けど、不自然です。

ここまで違和感があると、こう考えるべきでしょう。仮にこの英語マニュアルが公式のものであったとしても、ロシア語から英語へ正確に翻訳されているとは限らないな、と。私もそう思ったからこそ、ロシア語の原文を引っ張ってきて、わざわざこんなことをしているわけですが、とりあえず、ロシア語マニュアルをgoogle翻訳に突っ込んでみます。すると、確かにまあ、微妙にズレていると言いますか。

もちろん、実用上は問題にならない程度のことです。ですが、放射線、放射線測定器に対する理解を深めるという意味で、このふたつの差を見比べてみましょう。

まず、一番大きな差はstep 2にあります。[拾いもの]は単に「近づけて下さい」と言っているだけですが、[google翻訳]は違います。「side perforation」という単語があります。「perforation」はミシン目という意味です。つまり、側面のスリットのことですね。単に近づけるのではなく、スリット部分を近づけろと言っています。

そして、一番重要なのは最後の部分。ここ、何気に重要です。[拾いもの]は、「1と2の違い(差)が対象物の放射線量」的なことを言っています。ですが、[google翻訳]はまるで違います。「1と2に違いがあれば、対象物からの放射線があるということ」と言っています(意訳)。この差、わかります?

前者はあたかも、差し分が放射線”量”を表していると言っているように読めます(明確に”量”とは言っていませんが)。一方、後者は、差があれば、それは対象物からの放射線があるということを指すと言っています。意味合いがまったく違いますよね。

よく考えてみれば当たり前のことです。SOEKSはSvでしか表示できません。1と2の差にはβ線が含まれているやもしれない。そうしたら、もはやSvとしての意味はありません。これは「測定」ではなく「検出」になります。量ではなく存在を意味しているだけだ、ということなんです。RADEX RD1503でも同じことですよね。

わかっている人にとっては常識的なことなんですが、わかってない人が読むと、「あ、この食品からは0.5μSv/hが出てるんだ」なんて思いかねません。ちょっと注意が必要です。

では、googleさんを活用して、できるだけ正確に、だけどわかりやすく訳してみましょう。「background radiation」という表現の仕方や「measure」の使い方が、そもそもどうかとは思うのですが。前者は「放射線」、後者は場合によってはあえて「検出」と訳します。
[稚拙な私の日本語(意)訳w]

対象物の放射線を検出する方法

食品や建築資材などの放射線を検出するには、以下の手順を踏んで下さい。

1.検出対象物から数メートル離れて放射線レベルを測定します

2.本体側面のスリットを対象物に向け、可能な限り近づけて放射線を測定します

3.ステップ2で得られた結果とステップ1で得られた環境放射線レベルを比較します

もし、1と2の測定結果に違いがあれば、対象物からの余計な放射線があるということを意味します。
いかがでしょう。まあ、当たり前のことですし、わざわざ言うまでのことでもないのですが。

今回の記事の目的は、「SOEKSを正しく使いましょう」ではありませんw 日本語マニュアルがいい加減だったり、あるいは原文(ロシア語等)から英語に翻訳されている時点で、実は適当だったりもする。だから、なるべくマニュアルは原文を読みましょう、ということです。そしてこのことは、SOEKSに限らず、あらゆる機種で言えることです。

上記の例では、多少の誤訳があっても影響はそれほどないでしょうけど、場合によってはとんでもないことにもなりかねません。重々、その点はお知りおき下さい。

あ、あと、詳しくは書きませんでしたが、多少の翻訳のコツみたいなものもわかって頂けましたかねぇ。と、まったく英語が話せない人間が偉そうに言ってみたりw

SOEKS一覧(楽天市場)
SOEKS一覧(Amazon)
実はこれ、とても重要な問題をはらんでいると思います。例のDoseRAE 2にせよ、中国製の測定器にせよ、翻訳が元で誤解されているということだって大いにありえます。

開発者、メーカーはちゃんとわかってる。だけど、翻訳者は放射線のことに関しては素人。だから誤訳がまん延します。

たとえば、「personal dosimeter」や「个人剂量计」が、「個人用の線量計」などと翻訳されているのがいい例です。そもそも、線量計=放射線測定器(広義)≒サーベイメーターだと誤解されていますしね。

当サイトで「マニュアルや公式サイトを(原文で)よく読もう」と再三言っているのにはこうしたワケがあります。確かに日本語マニュアルだと読みやすいです。だけど、その翻訳、ほんとにアテになりますか?
関連記事
エアカウンターEX

コメント一覧

コメントを投稿する




管理者にだけ表示を許可する

みんなの放射線測定入門 (岩波科学ライブラリー)
著者:小豆川勝見(しょうずがわかつみ)

いちから聞きたい放射線のほんとう: いま知っておきたい22の話
著者:菊池誠(きくちまこと)×小峰公子(こまつきみこ)

武田邦彦が教える 子どもの放射能汚染はこうして減らせる!2 親子で一緒に実践編  (SUKUPARA SELECTION)
著者:武田邦彦(たけだくにひこ)

いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(1)
著者:竜田 一人(たつたかずと)