「DoseRAE 2」を公式サイトとマニュアルから読み解く

2011年09月14日
関連ワード:コラム , RAESystems ,
当記事は「DoseRAE2」を具体例として扱っている記事ですが、同機以外であっても同様のことが言える内容となっています。”放射線測定器(広義)”にそれほど詳しくないという方はぜひご参照下さい。

また、当記事を読めば、あの国民生活センターのテスト・報告がいかにおかしいか、ということもおわかり頂けると思います。国民生活センターにももちろん問題はありますが、あの報告を鵜呑みにしてしまっている人がこれほど多いというのもひどいですね(^^;)
[参考サイト]
RAE SYSTEMS:DoseRAE 2 公式ページ
http://www.raesystems.com/products/doserae-2

RAE SYSTEMS:DoseRAE 2 概要書(データシート)
http://www.raesystems.com/sites/default/files/downloads/doserae-2_ds.pdf

RAE SYSTEMS:DoseRAE 2 マニュアル
http://www.raesystems.jp/sites/.../doserae2_manual_rev_a8.pdf

拾いもの:DoseRAE 2 マニュアル(中国向け?)
http://www.4shared.com/document/AkQjh4A2/DoseRAE_2_Manual.html

※マニュアルには2パターンあるようです。おそらくアメリカ向けと中国向けで違うのだと思われます(詳細不明)。基本的には違いはないのですが、多少の表記の差が見受けられます。当記事においては、広く日本でも使われているであろう後者(中国向け?)を参照しています(もちろん英語です)。余談ですが、両者のマニュアルを見比べてみると、とても面白かったですw お暇な方はぜひ。Hp(10)あたりの表記が違っていたり、あるいは準拠している規格が違っていたりするんですね。

■使用目的、使用方法は購入前に確認できます!

ちゃんと仕様書や概要書、マニュアルを読みましょう。そうすれば、その機器がどういう目的で作られ、どう使うのが適切なのかがわかります。残念ながら、「DoseRAE2」に関してはまったくと言っていいほど、それが理解されていません。

では、いつものように、具体的にそして丁寧に見ていきます。まずは概要書(データシート)です。

DoseRAE 2

Electronic Dosimeter for
Personal Radiation Dosage Monitoring

DoseRAE 2 is a compact, direct-reading and alarming electronic personal radiation detector. It uses a diode and a scintillation crystal to detect X- and gamma radiation, and provides real-time monitoring of personal dose and dose rate. The real-time radiation dose rate monitoring allows immediate reaction in case of radiation occurrences and thus reduces the radiation exposure. By measuring dose equivalent and dose equivalent rate, this detector provides the functions of a dosimeter too. It also measures radiation exposure and exposure rate, which is appropriate for controlling the exposure of emergency responders to photon radiation.

(訳)DoseRAE 2

個人被ばくモニタリング用電子線量計

DoseRAE2はコンパクトで、直接(数値が)読み取れ、アラーム機能を有した電子式個人用放射線検知器です。X線およびγ線を検出するため、半導体とシンチレーション結晶を利用し、個人線量および個人線量率のリアルタイムモニタリングを可能にしてくれます。リアルタイムに放射線被ばくをモニタリングできるので、放射線災害において即座に対応ができ、結果として放射線被ばくを軽減できます。線量当量、線量当量率を測定しますから、この検知器は線量計としての機能も提供してくれます。放射線の被ばく量、被ばく量率を測定してくれるということは、光子放射線にさらされる危険があるような緊急時に出動する人たちの被ばく管理に最適でもあります。

公式サイトにある、誰もが読める、まず最初に読むべき概要書の冒頭にこう書かれています。ここにすべてが詰まっています。これを読めば、DoseRAE2がどのような機器で、どう使うのがいいのかが、一目瞭然です。なのに、現在の日本ではまったくもって間違った使われ方がなされています。

まず、最初のキャッチフレーズ。「dosimeter」とあります。DoseRAE2は個人線量計だと最初に大きな声で言っています。逆にいえば、空間線量を測定するようなサーベイメーターではないということです。

本文部分に目を移せば、さらに具体的にそのことが記されています。「real-time monitoring of personal dose and dose rate」。個人線量と個人線量率のモニタリングです。周辺線量(≒空間線量)なんて言っていません。しかも、第一義的には「モニタリング」です。「測定」ではありません。この差が重要です。放射線災害時に素早く行動できるようモニタリングする。これが当機の最大の使用目的です。

もちろんそのあとに「measuring dose equivalent and dose equivalent rate」、線量当量(率)が「測定」できるとあります。ただ、これは緊急時の被ばく管理のためだとも書いてあります。空間線量率を測定しましょうなんて、どこにも書かれていません(余談ですが、なぜここでわざわざ「equivalent」が出てくるのかにも理由があります。ただ、本旨とは少しズレて、少し難しい話になってくるので省略します)。そして、ここで言われている線量当量(率)とは個人線量当量(率)のことであり、周辺線量当量(率)ではありません。

さて、都は同機を貸し出し空間線量測定に利用させています。多くの人たちがこのDoseRAE2で空間線量率を測定し、ブログやYoutubeでその様子・結果を報告しています。さらに、国民生活センターはDoseRAE 2をサーベイメーターであるかのようにテストし、あろうことか「背面」からγ線を照射して数値をはじき出しています(個人線量計においては方向がとても重要です)。あるいはこんなこともよく言われます。

「線量率をちゃんと測定するためには5分ほどかける必要がある」

メチャクチャですねw むしろ逆です。だって、概要書にこう書かれているじゃないですか。「素早く対応する」「緊急時に被ばくをできるだけ少なくするために使う」と。5分間もその場でじっとして、線量率を読み取るなんていうのは、この機器が想定している使用方法では断じてありません。

「5分かければ線量率が安定する」

なるほど、こう言われれば私も否定しようがありません。おそらく事実でしょう。ですが、「線量率を測定するために5分かける必要がある」というのはデタラメです。こういうデタラメがまん延しているから、DoseRAE 2で空間線量(率)が測定できるといった誤解も生じています。

そう言えば、国民生活センターは私にこうも言ってました。

「確かに個人線量計ではあります。ですが、消費者は購入前にマニュアルを読めません。使い方までわかりません。ですから購入前に注意喚起をするためにも、正確ではないと…」

うそつけ!w だって、公式サイトに堂々と書かれています。個人線量計だと。購入前にだって、十分、個人線量計であるということは認識できますし、適切な使用方法、正しい使用目的は理解できます。

確かに購入前に、ここまで理解している人は皆無でしょう。しかし、メーカーには一切の責任はありません。メーカーは上記の通り、ちゃんとその責務を果たしています。問題があるとするならば、使用目的や使用方法をまったく見ずに購入している消費者にこそあります。

カッターのパッケージには「紙を切るためのものです」と書かれています。なのに魚を切ろうとして、切りづらいからと文句を言う消費者。それをそのまま報告してしまう国民生活センター。さらにはそのデタラメな報告書を信用してしまう人たち…。メーカーにとってはたまったもんじゃありませんってw

■スペック表の見方

次はマニュアルに書かれているスペック表を見てみます。できれば英語版(原文)を読んで下さい。日本語マニュアルには誤訳もあり、デタラメなことも多々あります。

マニュアルの106、107ページをご覧下さい。主だったところを抜粋してみます。

Detector Silicon PIN diode and CsI (TI) crystal
Radiation
detection
X-ray and Gamma radiation
(transmission doses)
Dose range Hp(10):0.1μSv to 10Sv
(transmission dose equivalent)
Dose rate range Hp(10):0.01μSv/h to 10Sv/h
(transmission dose equivalent rate)
Defoult factory setting:1μSv/h to 10Sv/h
Dose error <±15%(for the full range)
Dose rate error <±20%(10μSv/h to 20Sv/h)
<±30%(0.01μSv/h to 10μSv/h)
Accuracy <±5%(at 1MSv/h,measured with 137Cs)

まず、検出器(detector)。ここだけでも非常に奥深い。

[マニュアル]
Silicon PIN diode and CsI (TI) crystal

です。ちょっと違和感ありますか? もしかしたらこんな表記をよく目にしているかもしれません。

[概要書]
CsI (TI) +photodiode(low environment radiation)
Energy-conpensated PIN diode(level of radiation protection)


ちょっとややこしいかもしれませんので、よく読んで下さいね。両者は同じことを言っています。ただ、マニュアルは客観的事実だけを述べています。概要書はより詳細に述べています。面白いですねw 客観的であることと詳細であることは、場合によっては異なるということです。

マニュアルのスペック表は客観的事実だけを述べなければいけません。ですから正確に「シリコンPINダイオードとCsI(Tl)」と述べています。これが正確です。ただ、より詳しく説明すると、以下の通りです。

DoseRAE 2にはふたつの検出器が搭載されています。

ひとつはCsI (TI) シンチレーションです。ただこれは検出するだけ。検出し蛍光したシンチレーターの光を受光するのはフォトダイオードです。だから正確に「検出器」と言われればシンチレーターであるCsI(Tl)だということ。

そしてもうひとつ、エネルギー補償型PINダイオードも検出器として搭載されています。こちらは単体で働いてくれます。

ちなみに、前者は低環境放射線を検出する際に動作し、後者は放射線防護レベルにおいて動作します。

概要書は以上のように言っています。

マニュアルは客観的事実だけしか述べてはいけません。ですが、概要書ではもう少しわかりやすく説明する必要もあります。なのでこのような差が生じているのです。

疲れてきましたがw、次は「Dose (rate) range」。「Hp(10)」に関してはもう説明不要ですね。当サイトを読んで頂ければ、くどいほどに説明していますからw Hp(10)とは1cm線量当量の個人線量当量です。

それより重要なのは何気ない「transmission dose equivalent (rate)」という言葉です。日本語に訳すと「透過線量当量(率)」。これ、難しいですよ。かなり難しいです。

基本的には、放射線が機器に入射しようとして、機器を透過して行く。その過程で検出器が放射線を捉えて測定できるようになります。ですから、ザックリ言うと「機器本体を通過して測定された線量当量(率)」的なニュアンスなんでしょうけど、おそらくこの説明は不正確もしくは間違ってますw はっきり言ってわかりません! 後方散乱や機器本体による吸収等を暗に示唆するためにこのような但書がつけられているのか、あるいは…。勉強する時間を下さいw

※このあたりで、アメリカ向けと中国向けのマニュアルに表記の差があります。意図的にそうしているんでしょうね。アメリカ向けにはわかりやすく、中国向けには必要と思われる情報を与えつつ、客観的な表記を心がける、と。以下の「accuracy」においても同様です。アメリカ向けのマニュアルはわかりやすさを第一にしているようです。正確性という意味では中国向けバージョンのほうが上でしょう。あるいは規格による差!? いずれにせよ、とても興味深い差です。

読むの疲れました?

大丈夫。

書いてる私のほうが確実に疲れてますw

次は「Dose (rate) error」。「error」としか書かれていませんが、%ですから相対指示誤差のことを指すと思われます。これにもちゃんと定義があります。あくまでもJISにおいてですが、意味は以下の通りです。

基準線量(conventional true value of a quantity)
国家標準にトレーサブルな基準測定器、基準放射線源等で決定された基準となる線量。

指示誤差(error of indication)
測定点における指示値Hiと基準線量Htとの差。
Hi-Htで表す。

相対指示誤差(E)(relative error of indication)
指示誤差と基準線量との比。
E = (Hi-Ht)×100/Ht%で表す。

[参考]JISZ4312:X線,γ線,β線及び中性子用電子式個人線量(率)計

たとえば、

基準線量:0.10
指示値0.13

だとしたら、

指示誤差:0.13-0.1=0.03
相対指示誤差:0.03×100/0.1=30%

となります。

ここで重要なのは、基準となるのが「基準線量」だということです。つまり、校正やテストなどで利用される基準と比べると、校正・テスト段階では、この機器にはこの程度の誤差がありますよ、ということです。公園等での実測にはこの誤差(%)はあてはまりません。

最後にaccuracy。この項目はちょっと他とは違った意味合いを持ちます。accuracyは「正確性」「正確さ」といった意味なのですが、実はこれ、すごいですよ。目からウロコですよ。

測定においては「正確さ」なんて概念自体がない!

ビックリじゃないですか?w 私もこれを知った時は愕然としました。ちょっと極端に(不正確にw)言ってしまいましたが、正しく言うと性能をテストする際に「正確さ」を判断することはない。判断するのはあくまでも「不確かさ」や「誤差」だということです。その証拠に、JISの校正に関する文書には「誤差」を判断する項目は無数にありますが、「正確さ」をテストする項目なんてひとつもありません。

このことに関しては、「”不確かさ”とは、変動係数とは ~PA-1000 Radiを例に」という記事でも書きましたので、詳しくはそちらもご参照下さい。

で、そんなaccuracyをなぜスペック表に載せているか。まあ、オマケみたいなもんですw 「at 1MSv/h,measured with 137Cs」という条件も付記されていますよね。こういう条件がそろっていないと、そもそも「正確さ」は表現できないということです。

スペックに載っている各数値は、他機種とも比較しえるものでなければいけません。ですが、「正確さ」を言うには上述の通り、条件が必要。だからまあオマケ程度だということです。

さて、スペック表を見るだけでも、これだけ多くのことがわかりました。単なる数値の羅列じゃないんです。スペック表はその機器の個性です。ぜひ、ひとつひとつの項目、ひとつひとつの数値をじっくりと読み解いてみて下さい。

■スペック表以外のマニュアルの記述

では、スペック表以外の部分をサラッと見てみましょうか。もう十分、DoseRAE 2がどういう機器であるかはおわかり頂けていると思うので。

5ページ目。センサー位置が記されています。液晶の右側の「+」の印です。ここが基準点です。当然、この「+」を表にして装着しなければいけません。間違っても裏面にγ線を照射したり、あるいは裏面を地表に向け測定してはいけません(都が推奨していますけどね。アホかと)。

あとは具体的な使用方法ですから、まあいいでしょう。じっくり読んでみて下さい。

■購入を予定されている方、使用している方へ

例のテストではアロカと比較的近い数値を出しているDoseRAE 2。ですが、これは当機器の”正確性”を表しているものではありません。そもそも間違った使い方をしていますから。

もし仮に、あのテストをもって「近いからいい」とするのであれば、メチャクチャでいいと言っているに等しいです。そして、もう一度、原点に戻って考えましょう。他機種と近いとか遠いとか、そんなことが重要なんでしたっけ? そうじゃないですよね。安価な、あるいは簡易な測定器を使用する際は、他と安易に比べることはしてはいけないというのが大原則だったじゃないですか。見るべきはその機種で測定した結果の相対的な推移。これを見て目安とすると習ったじゃないですか。国民生活センターのバカげたテストを見て安心しているようでは、そもそも一般人の放射線測定というものを理解していないということですよ。

誤解しないで下さい。DoseRAE 2がダメだと言っているわけじゃないんです。DoseRAE 2はとてもいい機種です。そしてなんなら、目安として空間線量率を測定することも私は否定しません。ですが、その”正確性”をあのテストから読みとろうとするのは、完全に間違いだということです。

あんなバカなテストに絡め取られてどうすんですか。まずは正しくDoseRAE 2の使用目的を知る、使用方法を知る。そして、数値が遠かろうが近かろうが、あのテストの誤りをしっかりと見抜く。さらに、あのテストとは関係なく、DoseRAE 2で目安として空間線量を測定するために”個人的な”工夫を凝らす(5分待ってもいいですし、何でもいいです)。これが正しいありかたではないですか?

もし、例のテストを敷衍して「DoseRAE 2はアロカと近いからいい」なんて言うのであれば、それはあのテスト自体を認めていることになりますよ? それでいいんですか? だとしたらアナタも国民生活センターと同レベルってことですよ?w

あのテストを批判しても、それはDoseRAE 2の信頼性を否定するものでも肯定するものでもありません。なぜなら、あのテスト自体がおかしいのですから。という当たり前のことに気づいて下さい(^^;)

最後にもう一度。しつこく繰り返します。これでもまだわかってない方がいらっしゃるようなので。

DoseRAE 2は個人線量計です。

個人線量(率)を測定するためのものであり、

周辺線量(率)≒空間線量(率)を測定するためのものではありません。

都、あるいは多くの方がしているような空間線量の測定は、

使用目的・使用方法を誤っています。

以上のことは私の意見でも判断でもありません。

メーカーがそう言っています。

ですが、DoseRAE 2で空間線量(率)を測定するな、と私は言いません。

当記事をちゃんと読めば、どうすればいいか、どう考えればいいか、

おわかりになりますよね?

「DoseRAE 2」一覧(楽天市場)
「DoseRAE 2」一覧(Amazon)

[関連過去記事]
「DoseRAE 2」超初心者&超難解講座~デュアルセンサーって何だ?

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