「GammaRAE II R」はいったい何だ?

2011年09月12日
関連ワード:コラム , RAESystems ,
今回は「GammaRAE II R」です。面白すぎます。とても興味深い機種です。

[参考サイト]
RAE SYSTEMS「GammaRAE II R」公式
RAE SYSTEMS「GammaRAE II R Data Sheet」
韓国・SCINCO PED社「GammaRAE II R」マニュアル

公式サイトとマニュアル、これがすべてです。ユーザーが知るべきことはここにしか書かれていません。それ以上のことは使用者の判断に委ねられているだけです。ただ、その判断も正しい知識があった上でのこと。

というわけで、いつもの通り、公式サイトとマニュアルを丁寧に読んでみます。というか、なんでみんなそうしないんだ!?

■「GammaRAE II R」とは何なのか

まず最初に見るべきことは、どこ製か、値段はいくらかなんてことではありませんw このサイトをよくご覧になっている方ならおわかりですよね。一番大切なことは、

そもそもこれは何なんだ

ということです。

そんなの当たり前?

放射線測定器に決まってる?

そうでしょうか。

では質問です。

「GammaRAE II R」はサーベイメーターですか? 個人線量計ですか?

もし、答えられる人がいれば、逆に聞きたいです。「どっちですか?」とw

私の今のところの答えはこうです。

「個人線量計である可能性が高い」

■「GammaRAE II R」が語りかけてくること

「GammaRAE II R」の概要などを読み、一番最初に頭をよぎったのはPolimaster社の「PM1703M」です。少し似た雰囲気を持っています。ちなみに「PM1703M」はH(10)ですからサーベイメーターです。以下の記事もご参照下さい。

ホットスポット探しに最適な「PM1703M」。線量率測定は二の次です

さて、「GammaRAE II R」は公式サイトにもマニュアルにも「H(10)」「Hp(10)」という表記が見あたりません。では、丁寧に読んでいきましょう。まずは公式サイトの概要から。

Gamma Radiation Detector & Dosimeter in One

The GammaRAE II R is a gamma radiation detector and full-range dosimeter in a single instrument. Designed specifically to meet the needs of first responders, it has the rapid response of a detector and the accurate dose measurement of a dosimeter.

(訳)γ線検出器と線量計が一体に

GammaRAE II Rはこの一台でγ線検出器とフルレンジの線量計を兼ね備えた機器です。特に素早い反応を示す機器への要求を満たすために設計され、検出器としては素早い反応を、線量計としては正確な被ばく量測定を可能にしてくれます。

ちょい意訳ですが。

ポイントは「detector」「the accurate dose measurement of a dosimeter」の二ヶ所でしょう。検出器であり、また、線量計として線量を測定するものだと。少なくともdose rate(線量率)をmeasurement(測定)するものだとは書かれていません。

確かに「Key Features」にはこう書かれています。

Energy-compensated PIN diode sensor for high dose rate range and accurate dosimeter capabilities

ただ、「high dose rate range」は線量率測定のことを言いたいのではなく、検出のことですね。γ線検出は線量率で表示されますから。その後ろの「dosimeter」に対して「detector」があので、ここで言う「high dose rate range」は「detector」としての性能・特徴を紹介しているだけです。

また、ニュアンスとしてここで強調されているのは「high」です。「Sensitive CsI scintillator」は「low channel」。素晴らしい検出能力を発揮し、素早い反応を示してくれます。これに対して「Energy-compensated PIN diode sensor」は「high channel」。高線量率範囲にも対応でき、正確な線量計としての威力を発揮させてくれます。

「dose rate」という言葉だけを見れば”線量率”という意味ですが、全体を眺めてみると線量率測定の話が主ではないですよね。

次に注目すべきはこちら。

Accurately measures accumulated dose to the wearer

装着することを想定に入れています。装着するためのアタッチメントやクリップがついているのにサーベイメーター、なんてものを私はいまだかつて見たことがありませんw ただ、いくつかの例外があります。その典型例が「PM1703M」。これは装着しつつH(10)です。ですから、「GammaRAE II R」を個人線量計だと断定するにはまだ早いでしょう。余談ですが、装着するクリップがあるのに、なぜ「PM1703M」がサーベイメーターなのかは、上記過去記事をお読み頂ければわかると思います。

では、マニュアルに目を向けます。

マニュアルのどこにも、やはり「H(10)」「Hp(10)」といった表記はありません。そして17ページ目。

In Normal Operating Mode, the GammaRAE II R detects gamma radiation and accumulates radiation dosage data.

ここでもやはり、γ線を検出し、被ばく量を積算していくと書かれています。確かにdose rateは表示できますし測定もしているでしょう。しかしどうやら、それが主な目的ではなさそうです。

ところが、少し戸惑う記述が出てきます。20ページ目です。

Displays a measurement of the ambient radiation

ambient! 突然出てくるのでビックリしましたw ただ、落ち着いて考えましょう。「ambient radiation」とは言っていますが、「ambient dose (rate)」とは言っていません。そして、当機の主たる目的をもう一度振り返りましょう。あくまでも「detector」です。放射線量(率)の変化を素早く読み取るのが当機の最大の目的です。ですから、ここでの「ambient」は周辺線量(ambient dose (rate))という言葉に含まれる「ambient」というよりも、一般的な意味での「ambient」、つまり「周囲の」くらいなニュアンスだと思います。

いずれにせよ、γ線の検出、積算線量の測定が主な目的です。線量率は表示されますが、これは変化を読み取るため=γ線の検出のための表示。いわゆる周辺線量率とはちょっとニュアンスが違うということです。

では、冒頭の質問に戻りましょう。

「GammaRAE II R」はサーベイメーターですか? 個人線量計ですか?

私の答えはこうでした。

「個人線量計である可能性が高い」

個人線量計だとも言い切れませんし、サーベイメーターではないとも断言できません。これが結論ですw

「中途半端だなぁ。どっちなんだよ!」

いえ、実はここが重要なところでして。

最近、よく言わせて頂いているのですが、公式サイトおよびマニュアルに書かれていることがすべてです。それ以上の情報はメーカーがあえて書いていません。なぜなら、その情報はユーザーが知る必要のない情報だとメーカーが判断したからです。

RAE SYSTEMSはこう考えています。

「GammaRAE II RがH(10)かHp(10)かって? そんなことは知らなくていいんです。そんなことは気にせず使って下さい。素早くγ線を検知する、正確に積算線量を測定する。それだけのことなんですから。」

以上から、私だったら、いわゆるサーベイメーター(空間線量≒周辺線量の測定器)がほしいのであれば「GammaRAE II R」を選びません。あえて言うならば「PM1703M」を選びます。あくまでも個人的な見解ですが。

うーん、体に装着しますからねぇ。さすがにH(10)校正で周辺線量(率)ってことは…。個人線量計を放射線の検出に使うことはあっても、サーベイメーターを個人被ばく量の測定に使うというのは…。どうなんでしょう…。まあ、メーカーが気にするなと暗に言っていますから、これ以上の詮索はやめておきますかw

■「GammaRAE II R」と「PM1703M」

だからといって、「GammaRAE II R」と「PM1703M」のどちらが優れているか、なんてことを言いたいわけではありません。両者は微妙に性格を異にします。

[PM1703M] → サーベイメーター(H(10))
・γ線の検出&位置特定のため音などで知らせてくれる
・目安として周辺線量率をSv/h表示

[GammaRAE II R] → ?
・γ線の検出のためSv/hを表示
・線量計として被ばく量(積算線量)をSv表示

並べてみると、微妙に違いますよね。では、具体的にどのようなシチュエーションで使うのがいいでしょう。「PM1703M」はホットスポット探しに最適だと書きました。では「GammaRAE II R」は?

素早いレスポンスを要するような状況ですから、高線量地域での利用がいいでしょうね。そして、変化をいち早く掴み、積算線量を記録していく。ということは、屋外での活動が多い(線量が高い場所での作業時間が長い)ような人にいいかもしれません。しかも、急激な線量変化が予想されるような場所がある、と。

もっと具体的に言うならば、たとえば福島県内の避難区域・警戒区域あたりで除染活動をする人。こんな人には「PM1703M」よりも「GammaRAE II R」でしょう。あくまでも個人的な見解ですが。

いずれにせよ、両者ともに東京都で普段空間線量を測定するなんて状況には、ちょっとそぐわないというか、too muchな感じがします。シンチがよければRadiやMr.Gamma、ガイガーカウンターでよければTERRAとかRADEX RD1503とかで十分かと。

もちろん、「GammaRAE II R」で空間線量率を測定するな!とは言いません。そうは言いませんが、主な目的は本当はそうじゃないんだよ、そして、それはもしかしたら空間線量率(≒周辺線量率)ではなく個人線量率かもしれませんよ、ということです。そこまでわかっていて、それでもなお”空間線量率”を測定するために使用するのであれば、それはそれでいいのではないでしょうか(^^)

「GammaRAE II R」一覧(楽天市場)
「GammaRAE II R」一覧(Amazon)

■まずは公式サイト、マニュアルをよく読みましょう

さて、いかがでしょう。公式サイトとマニュアルを読んでみただけです。もちろん、私の個人的な見解や憶測もなくはないですが、基本的には書かれていることをそのまま丁寧に読んでみただけです。そして、どの機種においても、よく読めばこれくらいのことはわかってきます。いえ、素人の私がこんなもんですから、みなさんならもっと詳しく、そして正確に読めるはず。

これから”放射線測定器(広義)”を購入しようとしている方、あるいはもうすでに使っている方。ぜひ、公式サイトを、そしてマニュアルをじっくり読んでみて下さい。ひとつひとつの言葉をかみしめて読んで下さい。なぜその単語が使われているのか、なぜこうは表現されていないのか。そこにはちゃんと意味があります。

正しく使用し、正しく測定するために。
関連記事
エアカウンターEX

コメント一覧

コメントを投稿する




管理者にだけ表示を許可する

みんなの放射線測定入門 (岩波科学ライブラリー)
著者:小豆川勝見(しょうずがわかつみ)

いちから聞きたい放射線のほんとう: いま知っておきたい22の話
著者:菊池誠(きくちまこと)×小峰公子(こまつきみこ)

武田邦彦が教える 子どもの放射能汚染はこうして減らせる!2 親子で一緒に実践編  (SUKUPARA SELECTION)
著者:武田邦彦(たけだくにひこ)

いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(1)
著者:竜田 一人(たつたかずと)