改めて国民生活センターのこと、個人線量計のこと

2011年09月11日
関連ワード:コラム , 国民生活センター , 実用量 ,
※国民生活センターに問い合わせました。詳細は最後に記した関連記事もご参照下さい。

素人が書いてますから、わかりやすくはなっていると思います。正確性は…アレですが(^^;)

とりあえずこれ見て下さい。画像3点です。

gc_036.jpg

gc_037.jpg

gc_038.jpg

これは個人線量計を校正している風景です(正確にはテスト?)。

透明の直方体の物体が見えると思います。これがスラブファントムです。人体に模した直方体の台です。サイズ 30x30x15cm、密度 1g/cm3。酸素76.2%、炭素11.1%、水素10.1%、窒素2.6%でできています。※写真のものはPMMA(アクリル樹脂)板に覆われた水ファントムかもしれません

個人線量計は人体に装着し使用しますから、校正段階でこのような”人体”を実際に設置し、その上に個人線量計を置き、γ線などを照射しテストします。

ここで重要なのは2点。「後方散乱」と「遮蔽・吸収」です。

・後方散乱

前方からγ線が照射された場合、個人線量計を透過し、人体にあたるγ線もあります。人体にγ線があたると、一部が跳ね返ってきます(後方散乱)。個人線量計は跳ね返ってきたγ線をキャッチしてしまうかもしれません。

これ、場合によっては線量を倍にして計測してしまいますよね。やってくるのをカウントし、跳ね返ったのをまたカウント。人体には1度しかあたっていないのに、計測は2回です。

ですから、こうした後方散乱があるということを想定して、個人線量計は校正されているのです。つまり、確率的にどれほどのγ線がやってきたら、どれほどが跳ね返るかというのかがあらかじめプログラミングされ、適切な数値が表示されるようになっています。

・遮蔽、吸収

後方からγ線が照射された場合、個人線量計の手前には人体があります。すると、γ線は人体によって遮蔽され、あるいは吸収されるかもしれません。もちろん、人体を透過する場合もあるでしょう。

ですが、そもそも個人線量計は、装着されているその部分の被ばく線量をピンポイントで測定するものです。しかも、人体の表面から深さ10mmの地点の被ばく量です。これをHp(10)と言います。

さて、後方からやってきたγ線が前方にある個人線量計によってキャッチされたらどうなるでしょう。これはもはやHp(10)ではありませんよね。人体の厚みがありますから。なので、基本的に個人線量計は後方から放射線がやって来ることを想定に入れていません。

以下の図は個人線量計の「PDM-122」(左)とサーベイメーター「TERRA MKS-05」(右)の方向特性です。

gc_034.jpg gc_033.jpg

※クリックで拡大します

このグラフの詳細はとりあえず置いておき、ぜひ見て頂きたいのが、「PDM-122」のグラフには後方180度分のグラフが存在しないという点です。一方、「TERRA MKS-05」のグラフは360度全方位を想定しています。まさに個人線量計とサーベイメーターの差をよく表しているグラフだと思います。

追記:ちなみに、国民生活センターのテストでは、個人線量計に対して、裏からγ線を照射しています(どちらから照射すべきかは機種によって異なりますが、裏=後方からの入射をそもそも想定していない機種も少なからず含まれています。DoseRAE2が典型例です)。どういうことでしょうねw なお、余談になりますが、表裏だけが問題というわけでもありません。

校正の話は難しいです。もちろん私もよくわかっていません。ですが、個人線量計とサーベイメーターがどれほど違うか、個人線量計がどのような想定の元、校正されているかということは十分におわかり頂けるのではないでしょうか。

そして、両者は明確に校正方法が異なり、使用目的が異なり、放射線の測定システムが異なるということもご理解頂けるかと。

さて、ここまで違う両者を同条件でテストするとどうなるでしょうか。同条件でテストすべきでしょうか。


包丁とカッターの切れ具合をテストします。

両者で魚を切ってみます。

包丁のほうが切れやすいです。

カッターのほうが切りにくいです。

国民生活センターはこう言いました。

「カッターは切りにくい」

そりゃそうです。

魚を切るためのものではないからです。

カッターは紙を切ってテストをすべきです。

そのテストをもってして、カッターの性能を判断すべきです。

言わずもがなですが、ここでいう「カッター」とは、

DoseRAE2のことであり、そして中国製測定器のことです。

※例のテストで挙げられた中国製品のほとんどが個人線量計だと思われます。


私はDoseRAE2、中国製個人線量計を批判もしていませんし、擁護もしていません。

単に、

個人線量計は個人線量計としてテストすべきだ

個人線量計は個人線量計として性能を評価すべきだ

と言っているだけです。

そして、その大前提として、

個人線量計とサーベイメーターは違うんだ

ということも、声を大にして言いたい。

ここがまず第一でしょう。

安いからどうとか、どこ製だからどうとか、そんなことは二の次です。

まず最初に知るべきは、

それが何なのか

です。

ここすらわかっていない人がどれだけいることか。

そして、それをわかってない人がテストしているという現実。

さらには放射線等の専門家ですら「やっぱり」的発言をする始末。

国や公的機関の言うことを、そのまま鵜呑みにしちゃっていいんですか?

ということを原発事故で学んだはずなんですが、

どうやらそうでもなさそうです。
サーベイメーター 個人線量計
具体的な使用例
gc_031.jpg

よく見かける光景ですね。こうして空間線量(≒周辺線量)や表面汚染を測定するためのものがサーベイメーターであり、一般的にはこれを”放射線測定器(狭義)”と呼びます。
gc_032.jpg

お嬢さん、あなたは正しい!w 個人線量計はこうやって使います。胸ポケットにさしたり、あるいはストラップで首から下げたり。個人の積算被ばく量(≒個人線量)を測定します。
具体的な機種名
TERRAシリーズ、RADEXシリーズ、SOEKS 01M、Inspector PLUS、PA-1000 Radiなど PDM-122、Dose i、DoseRAE2、DP802i、BS2010系統(BS2011+、AK2011 etc.)など ※中国製の多くが実は個人線量計かもしれません
周辺線量と個人線量の定義
周辺線量当量:ambient dose equivalent
= H(d)
放射線場のある一点における周辺線量は、まずその点において整列・拡張場を考え、ICRU球を置いた場合(すなわち、方向以外はすべて実際の状態と同じ放射線が、ICRU球全体に一様にかつ一方向から入射した場合)、整列場の方向に対向する半径上の深さdにおいて生ずる線量
個人線量当量:personal dose equivalent
= Hp(d)
個人線量とは、人体のある指定された点における適切な深さdにおける軟組織の線量 ※ICRU組織等価物質でできた30 cm× 30 cm× 15 cm スラブファントムを用いて線量換算係数が定められている
方向特性(anisotropy)
gc_033.jpg

TERRA MKS-05のanisotoropy。詳しいことはわからなくていいです。とりあえず、360度全方位からの放射線の入射が想定されている、ということだけわかって下さい。どの機種であれ、だいたいこのようなグラフになります。
gc_034.jpg

PDM-122の方向特性。注目すべき点は青いラインが180度分しかないということ。裏側からの放射線の入射を想定していません。個人線量計はどれもほぼ同じようなグラフを描いているはずです。
正しい使い方
できるだけ周囲に何もない状態で、空間や物質表面を測定します。体からも離した方がいいでしょう。線量率を測定する際は、複数回測定し、その平均値を見ると、より精度の高い測定結果が得られるはずです。 ポケットに装着したり、首から下げておく。基本的に(特に屋外では)電源はつけっぱなし。そして一日の積算線量をチェックし記録し、どれだけの被ばく量があったかを見ます。線量率は目安程度。あくまでも積算線量の測定・記録が目的です。なお、ここで得られる”線量率”は個人線量率です。サーベイメーターで測定している周辺線量率とは上記の通り意味合いが異なります。

[写真引用元]
IAEA「Intercomparison of Personal Dose Equivalent Measurements by Active Personal Dosimeters」
http://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/te_1564_web.pdf
※お寄せ頂いた情報で知ることができました。ありがとうございました
大分合同新聞社
http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1106010046/
神奈川新聞社
http://www.oita-press.co.jp/worldMain/2011/06/2011062401000404.html

[関連記事]
追記:以下の記事もご参照下さい。
国民生活センターがトンデモ報告を公開しました
改めて国民生活センターのこと、個人線量計のこと(当記事)
一応、国民生活センターは例の報告書が”不適切”だったと認めました
国民生活センターの無様な言い訳

毎度のことですが、素人が書いています。もし不正確なこと、誤りがありましたら、ぜひご指摘下さいm(_ _)m

[追記]
しかしまあ、こんな主張を大々的にしているのは弱小・素人の当サイトくらいで、専門家はさっぱり見向きもせず、むしろどちらかというと「安価なものはダメだ」的”念押し”をしているだけ。

twitterあたりを見ても、あのテストをそのまま紹介したり、「安価なものはダメ」みたいな意見が大勢で、「あのテスト、おかしいんじゃね?」的意見はごくごく少数派。

うーん、私がおかしいのか??

おかしいならおかしいと言ってもらいたいくらいです(^^;)
関連記事
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コメント一覧

79. 2011.09.12
大変参考になります。勉強になります。
もっともっと主張してください。
応援しています。
80. 2011.09.12
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110910k0000m040106000c.html
訂正も出てるんですね。このタイプは本体に機種名が堂々刻印されているだろうに、どういう経緯で間違えて発表したのだか・・・。
81. 2011.09.12
> elan様
ありがとうございます。
ただ、私、素人ですから、過信しないで下さいね(^^;)
なるべく正確なことを書こうとはもちろん努力していますが。

> -様

ほんとですねぇ。

確かに同等機と思しき2機種ではありますが、おっしゃる通り、本体にも箱にも機種名は書かれていますから、間違えるということは…。

というか、あれ? ああ、そうか。訂正前の資料で記事を書いたので、私の書いた本文もSW83Aとなっていますね。失礼しました。「国民生活センターがトンデモ報告を公開しました」の記事中の「SW83A」は「FS2011」と訂正致します。

訂正するのはいいんですが、どこをどう訂正したのか、ちゃんと書いておいてほしいですね(^^;) そして、なぜそんなことになったのか…。謎は残ったままですw

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