”不確かさ”とは、変動係数とは ~PA-1000 Radiを例に

2011年09月06日
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とても素晴らしい文書を見つけました。この文書を紹介するにあたり、「PA-1000 Radi」(堀場製作所)を例に出していますが、Radiを使っていない方にもぜひ読んで頂きたいと思います。

■”誰でも”って誰?w

「PA-1000 Radi」(堀場製作所)を購入しようと思っている方、あるいはすでに利用している方も多いでしょう。そんな方に質問です。

こちらはRadiの仕様です。

http://www.horiba.com/jp/scientific/products-jp/scintillation-detectors/details/pa-1000-environmental-radiation-monitor-radi-3124/

Radiには「誰でも、いつでも、どこでも、簡単に測定できる環境放射線モニタ」というキャッチフレーズがついています。ですから、この仕様書だって、誰にでも理解できるものであるはずです。

では、「変動係数」って何ですか?

「エネルギー特性」って何ですか?

おそらく、ほとんどの方が答えられないのではないでしょうか。私もまったくわかりませんでしたw

別にそのことを責めているわけではありませんし、「これをちゃんと理解してから使え!」なんて言うつもりもありません。むしろ、わかってなくてぜんぜん構いません。

じゃあなんでこんなことを書いているかというと、先のキャッチフレーズの「誰でも」という部分にちょっと注目してもらいたかったからです。

言葉のマジックと言いますか、「誰でも」と言われると、子供からおじいちゃん、おばあちゃんまで、みたいにイメージしてしまいがちですが、実はそうじゃないんです。正確に「誰でも」という言葉を解釈するならば、老若男女というだけでなく、素人も専門家も、という意味合いも含まれています。

そうなんです。この「誰でも」というのは、プロから初心者まで、幅広い層の人に役立ちますよ、という意味なんです。

ですから、仕様の中には、いわゆる一般人には馴染みのない「変動係数」「エネルギー特性」なんて項目もあったのです。これらのタームの意味がわからなくても心配しないで下さいw

ただし。

それ以外の部分は比較的容易ですから、ぜひ正確に理解しておきたいところです。もし、このふたつのターム以外でわからないものがあったとしたら、ちょっとお勉強不足かもしれませんねw

で、結局、何が言いたいかと言うと、プロだって使える機種なんだということです。実際、さまざまな現場、工業製品や環境などの測定にもよく使われています。それだけ信頼性の高い機種だということです。これが言いたかった長い前置きでしたw

■変動係数とは

とはいえ、気になりますよね。「変動係数」「エネルギー特性」とは何か。そこで今回は「変動係数」について、わかりやすく解説したいと思います。

もちろん、知らなくてもおそらく困るほどの事態にはなりません。ただ、知っておけば、より”正確な”測定ができるようになるはずです。正確にいえば(「正確」という言葉がポイントになっちゃう内容なので、言葉選びが難しいw)、”不確かさ”をいかに小さくするか、ということなんですが。

まず、冒頭に書きました「とても素晴らしい文書」を紹介します。ぜひぜひぜひぜひ、一度、目を通してみて下さい。独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)が提供しているJCSS(Japan Calibration Service System)という校正事業者登録制度があるのですが、そこが発行している「不確かさの入門ガイド」という文書です。

不確かさの入門ガイド
http://www.iajapan.nite.go.jp/jcss/pdf/koukaib_f/ASG104-03.pdf

非常に平易な日本語で書かれた、とてもわかりやすい文書です。放射線測定器に限らず、「測定」ということに対する理解が深まると思います。できれば全体を通して読んで頂きたいのですが、当記事のテーマに関連する箇所としては、「3.6 推定標準偏差の計算」と「11 測定の不確かさをいかにして小さくするか」「12 その他の優れた測定の実施事例」が挙げられますので、ぜひお目通しを。

さて、話を戻しまして「変動係数」についてです。これはJISによって明確に定義付けられた言葉なんですが、その内容は以下の通りです。

変動係数(V)(coefficient of variation)
n個の測定値(Xi)の標準偏差の推定値(s)の平均値(X?)に対する比で、次の式による。(※「X?」は「X」の上に棒線)
gc_030.jpg

[ソース]JISZ4333:X線及びγ線用線量当量率サーベイメータ
http://www.jisc.go.jp/
※上記規格番号・名称で検索してみて下さい。

「なんのこっちゃ?」と思うかもしれませんが、先の「不確かさの入門ガイド」の「3.6 推定標準偏差の計算」を読めばよくわかると思います。要は、平均値を中心にどれくらいのバラつきがあるか、ということです。そして、Radiの場合は、変動係数が0.1ですから、バラつきが少ないということです。

たとえば、10回ほどの測定結果の平均値が0.2μSv/hだとします。変動係数は0.1なので、標準偏差の推定値は、

0.1 = S / 0.2

S(標準偏差の推定値) = 0.02

となります。

あくまでも目安ですが、10回の測定結果のおおよそが、

0.2μSv/h ± 0.02μSv/h

つまり、

0.18μSv/h ~ 0.22μSv/h

この範囲内に収まっているはずだ、ということです。もちろん逆算的に考えていますから正確ではありませんが、だいたいこんな感じだと思って頂ければ。

なお、この変動係数や標準偏差に関しては、Radiに限らず、いろいろな機種のマニュアルでも目にします。確かTERRAにもあったような…。違ったかな? ですから、放射線を測定する上で、一応知っておいても損はないと思います。

■せっかく自分で測定するんだから

当たり前なんですが、以上のことは、ちゃんとした測定器でちゃんと測定しているということが前提です。「ちゃんとした測定器」とは、信頼性のあるメーカーが適正な校正をして販売している信頼性のある測定器です。「ちゃんとした測定」とは、そのメーカーが指示している測定方法です。

”検証”と称して、メチャクチャな”測定”をし、ブログ等で報告している事例もあまた見ます。別にいいのですが、少なくともそれを見て参考にはしないで下さい。確実なことはメーカーサイト、機器に付属しているマニュアルにちゃんと載っています。

もちろん、(放射線を)測定するということに関する一般論的な注意事項はあります。ただ、「β線は遮蔽した方がいい」だとか「地上1mで」とか「複数回測定しなきゃ」とか、そういうことをまるで公式であるかのごとく覚え込み、杓子定規に実践してしまうのもいかがなものかと。

そういう類のことは放射線について学べば、覚えなくともおのずからわかってくることです。ジップロックでどうとか、空間線量測る時ってアルミで覆わなきゃいけないの?とか、んなことはどうでもいいですから、まずはマニュアルをしっかり読みましょう。そして、放射線のことについて、基本的なことだけでいいですから学びましょう。そうすれば、不確かさの少ない測定ができるようになるはずです。

「どう計ろうが勝手だろ」

「とりあえず目安なんだからそこまでしなくていいんだよ」

まあ、そうですが、だったら自治体の発表でも見とけばいいわけでして。

自分で測るということは、自分でなるべく”正確な”ことを知りたいと思ったからこそでは? だとしたら、実践するかどうかはさて置き、とりあえずは正確なことを知っておく、知ろうとすべきだと私は思うのです。その上でどうするかは、もちろん個々人の自由です。

「不確かさの入門ガイド」の「11 測定の不確かさをいかにして小さくするか」「12 その他の優れた測定の実施事例」もぜひお読み下さい。とても示唆に富んだ内容です。

「PA-1000 Radi」一覧(楽天市場)
「PA-1000 Radi」一覧(Amazon)

[参考サイト]
標準偏差~Wikipedia
EICネット:標準偏差と変動係数

※標準偏差の推定値のあたり、もし誤りがありましたら、ぜひご指摘をお願いします。難しいったらありゃしないw
[追記]
Radiの「ご使用にあたり」というページの一番最後に、小さくこんなことが書かれています。

※本器は測定場所における放射線量の安全性や危険性を判定するものではありません。

この文言を誤解している方もいらっしゃるようです。

この文言は、Radiに限らずいろいろな放射線測定器の説明によく見受けられるものです。意味は、次の通りです。

測定器が表示しているのは単なる「Sv」。放射線被曝による生物学的影響の大きさ(線量当量)を示しているに過ぎません。この数値が安全か危険かはわかりませんし、そんなことをこの測定器は示唆しません。その証拠に、たとえば年間20mSvの被曝を、健康上問題はないという人もいるし、いや問題だという人もいるでしょ? 安全か危険かは、相応の専門家や専門機関の言っていることを聞いて、各自で判断して下さい。

こういう意味です。ごく当たり前のことを言っているに過ぎません。
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