「DoseRAE 2」超初心者&超難解講座~デュアルセンサーって何だ?

2011年08月10日
関連ワード:コラム , RAESystems ,
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初心者じゃない、という方は中段以降をぜひ。デュアルセンサーの正確な仕組み、そしてその意味、ご存じですか?

※こちらの記事もぜひ。
「DoseRAE 2」を公式サイトとマニュアルから読み解く
【初心者用】

■概要

メーカーはアメリカのRAE Systems(レイシステムズ)。実際に機器が作られているのは中国と言われています。ですから、本体裏に中国語の表記があっても「偽物?」とは思わないで下さい。いたって普通のことです。

本体に青い帯があるものがアメリカ向け製品、ないものが中国向け製品との噂もあります。いずれにせよ両者に性能の差はありません。

とても人気が高く、多くのユーザーがいます。ただ、間違った使われたかをしていることが多いというのも当機の特徴です。

以下においても、「間違い」という言葉が出てきますが、それは「してはいけない」ということと同義ではありません。間違っているとちゃんと理解した上で、個人的にそうする程度であればいいと思います。

「DoseRAE 2」一覧(楽天市場)
「DoseRAE 2」一覧(Amazon)

■放射線測定器としてのジャンル

ガイガーカウンターではありません。シンチレーション式の放射線測定器(広義)です。この点でまずは「TERRA」や「RADEX」といた機器・シリーズとはまったく異なります。


同じシンチレーション式でも、「PA-1100 Radi」(堀場製作所)や「A2700 Mr.Gamma」(クリアパルス)、「DC-100」(日本精密測器)とも違います。「TERRA」「RADEX」も含め、これらはすべて周辺線量当量の1cm線量当量(率)を測定するためのものです。一方、「DoseRAE 2」は個人線量当量の1cm線量当量(率)を測定するためのものです。測定システムが異なりますし、用途も異なるということです。


では、個人線量計として有名な「PDM-122」(日立アロカメディカル)や「Dose i」(富士電機)とはどうでしょう。これらとも若干、様相を異にします。同じ個人線量計ではありますが、まず検出器が違います。「PDM-122」「Dose i」は半導体。「DoseRAE 2」はシンチレーター(+フォトダイオード)とPINダイオードです。そして、「DoseRAE 2」はちょっと独特です。その具体的な内容に関しては後述します。

■正しい使い方

以上のことから、正しい「DoseRAE 2」の使い方はこうです。

胸のポケットあたりにクリップで留めておく。あるいはホルダーに入れ首から下げておく。出かける前に電源を入れ、普通に一日を過ごす。学校や仕事から家に戻ったら積算線量を確認し記録する(手書きでもPCへデータを転送でもOK)。これを毎日繰り返し、自身の被ばく管理をします。

気になるようでしたら時折、線量率をチェックしてみるのもいいでしょう。その際は、パッと目に入ったその数値を目安として考える程度でOKです。



■間違った使い方

・空間線量(率)を調べる
・地表などへ近づけ汚染度合を調べる

これらは間違った使い方です。なぜなら、空間線量を計ったり、対象物の汚染度を調べたりするためのものではないからです。にも関わらず、自治体でさえ空間線量(率)の測定に当機を利用しています。いやはや…。

「DoseRAE 2」は身につけて使用されることを前提に作られています。本体裏側には人体がありますから、裏からの放射線は人体による遮蔽や吸収、前方からの入射に対しては後方散乱があるものと想定されています。なのに、裏面に地表があったり、あるいは高濃度の放射性物質があったりすると、それは測定器にとってみたら予期せぬ事態です。結果、必要以上に高い、もしくは低い数値をはじき出します。

繰り返しますが、間違いは間違いです。ですが、だからといって「絶対にしてはいけない」とは言っていません。間違いであることを自覚し、目安として”空間線量率””汚染度”を個人的に見る程度でしたらいいと思います。余談ですが、TERRAで裏蓋を開閉しつつβ線をSv測定しようとするのも同様です。

■どういう人が買えばいい?

まず第一に個人線量管理をしたい方。つまり、高線量地域にお住まいの方。その中でもどれだけ被ばくしたかをもっともシビアに考えなければいけないのは子供や妊婦ですね。こうした地域に住んでいる、こうした方が身の回りにいる、そういう方、家庭にはいいと思います。

次に、上記の基本的な知識を持っていさえいれば、どなたでも。

コンパクトで携帯しやすく、手頃な価格で、信頼性も高い機種です。いいチョイスだと思います。

逆に、もしちゃんと空間線量(率)を測定したいということであれば、先述の4機種をはじめとした、周辺線量を測定するための放射線測定器をお使い下さい。地表等の汚染具合を調べたいならβ線を検出・測定できるガイガーカウンターをお使い下さい。たとえば、「Pripyat RKS-20.03」「RADEX RD1008」「Inspector PLUS」などなど。

【中級者用】

以下は少し専門的な内容になってきます。

■シンチレーション式の原理を簡単に

「DoseRAE 2」の特徴をひと言で表すとするなら、”デュアルセンサー”。これに尽きます。先ほど書きました他の個人線量計との違いもここに由来します。しかし、デュアルセンサーを考える前に、まずは”シンチレーション式”とはなんなのかを見てみます。

簡単に言ってしまうと、

シンチレーション現象の蛍光を検知し、これを信号化する

これが”シンチレーション式”。そして、この信号を元にSv等の数値を表示させるのがシンチレーション式放射線測定器です。

■CsI(Tl)+フォトダイオードとは?

具体的に「DoseRAE 2」で見てみます。検出器部に放射線が入射します。すると、CsI(Tl)というシンチレーターが光ります。これをシンチレーション現象と言います。CsI(Tl)とは、タリウム活性化ヨウ化セシウムです。透明に近い結晶体だと思って下さい。この蛍光をフォトダイオードが検知し増幅させ、信号化します。

難しく感じるかもしれませんが、それはシンチレーション現象に馴染みがないから。とてもザックリ、乱暴に言ってしまうと、テレビリモコンと同じですw リモコンは赤外線レーザーという人工的な光を発して、テレビ側のフォトダイオードで読み取り、これを信号化して「テレビをつける」といった動作を起こさせます。放射線測定器は、自然現象ではあるのですが、ある意味で人工的にシンチレーション現象を起こして蛍光させ、フォトダイオードで読み取り、これを信号化して「0.1μSv/h」などとデジタル表示させます。

doserae2_010.jpg いずれにせよ重要なのは、CsI(Tl)シンチレーターとフォトダイオードは一体となって働いているということです。余談ですが、光を検知するわけですから、両者は完全に遮光されている必要があります。

※写真:手前の茶色い四角の部分にセンサーが入っています

■PINダイオードとは?

難しいです。人に説明するためというよりも、自分のためのレポートのようになっていきますw

まず、話はずれますが、「半導体検出器」というものがあります。シリコンやゲルマニウムといった物質でできた半導体で放射線を検出するというもので、たとえば「PDM-122」などで採用されています。小型の個人線量計では最もポピュラーな検出器かもしれません。

で、私もずっと変だなぁと思っていたのですが、半導体で検出できるなら、なぜわざわざシンチレーターなんて使うんだ、と。フォトダイオードは半導体のダイオードのこと。つまり、半導体を組み込んだ電子素子(=電子部品)なのですが、半導体使ってるなら、それで放射線を検出すりゃあいいじゃないかと。

実はその通りで、半導体で検出できればそれに越したことはない。そして実際に「DoseRAE 2」ではPINダイオードという半導体のダイオードが、”デュアルセンサー”のひとつとして使われています。では、なぜ上記の”普通の”フォトダイオードの際はCsI(Tl)と組み合わせて使っているのか。

キーワードは”バンドギャップエネルギー”。こんな単語、初めて見ましたよ(^^;) で、これについて語りだすと恐ろしいことになります。そして、正確に語ることもできません! ですから、詳細は下記の参考サイトをどうぞ。

とはいえ、これでは終われませんので、かいつまんで簡単に。

単純に比較するのもアレなんですが、「PA-1000 Radi」と「DoseRAE 2」を比べてみます。

Radi:0.01μSv/h~9.999μSv/h / 150keV~1.25MeV
DoseRAE 2:0.01μSv/h~10Sv/h / 20keV~6MeV

線量率範囲もエネルギー範囲もまるで違います。「DoseRAE 2」がケタ違いで広いです。正確に言うならば、エネルギー範囲が違うから結果として線量率範囲も違ってくるんですけどね。

で、ここまで広範囲に、いや、高エネルギーに対応できるのがPINダイオードのおかげなんです。高エネルギーな放射線であっても半導体を透過させず吸収させるためには、半導体層を厚くする必要があります。正確には空乏層ですね。で、そのためにはPINダイオードが最適だということです。わからない? ですよねw 参考サイトの特に「電光石科」をご覧下さい。なんとなくイメージはつくと思います。

■なぜデュアルセンサー?

ここまでをまとめると、

・CsI(Tl)シンチレーター+フォトダイオード
・エネルギー補償型PINダイオード

このふたつの検出器でもって、「DoseRAE 2」は放射線を計測しています。なお、「補償型」に関してはまたの機会に。

で、なぜデュアルセンサーにしているかというと、端的に言うなら、高エネルギーの放射線が存在する環境を想定に入れているからです。逆に「PA-1000 Radi」はそれを考慮に入れていません。だからこそ「PA-1000 Radi」は周辺線量を測定するように設計されています。だからこそ「DoseRAE 2」は個人線量を測定するように作られています。

ここで改めて「DoseRAE 2」のスペック表を見てみます。すると、意外なところに本質が隠されていたということに気づきます。

CsI (Tl) + photodiode (low environment radiation)
Energy-compensated PIN diode (level of radiation protection)

重要なのは特に後者のカッコ内です。「放射線防護レベル」とあります。ここでは詳しくは述べませんが、「放射線防護」というのは単に放射線から身を守りましょうね、という意味ではなく、放射線・原子力の世界ではひとつの専門用語としてあるタームです。具体的には「遮へい」「距離」「時間」という3原則を指すわけですが、これはつまり、原子力施設等における現場作業に関する指標です。

ということは、まかり間違っても、「東京都で空間線量がどれくらいだろう」なんて気持ちで測定するような世界とはまるで違う次元の話だということです。

たとえば。

放射能漏れが危惧されるような施設があるとします。そこへ調査に出かけます。「DoseRAE 2」を胸のあたりに装着します。そして、施設周辺に着きました。まだ「CsI (Tl) + フォトダイオード」で測定できるレベルです。問題はありません。ところが、施設内に入った瞬間、高線量を検知します。「DoseRAE 2」のセンサーが「PINダイオード」に切り替わります。ここから先は危険です。放射線防護の3原則を念頭に作業にあたります。そして作業終了。事務所に帰り、被ばく量を管理者にチェックしてもらいます。今日も無事、帰宅できました。

こういうことなんですw

さてさて、以上を踏まえて、「DoseRAE 2」本来の使われ方と現状のそれを比べてみてどうか、改めて言うまでもありませんね。そして、繰り返しになりますが、「DoseRAE 2」で空間線量を測定しようとするのは結構ですが、ぜひ、以上のことをちゃんと理解した上で、いえ、素人が適当に書いていることですから、これ以上に詳しく、そして正確に理解した上で、ご利用下さい。
不正確な部分も多いと思われますが、個人的にもとても勉強になりましたw 誤りがありましたら、ぜひ、ご教授をお願い致します。

[参考サイト]
RAE Systems:DoseRAE 2 仕様書(PDF)
VVPHOME:DoseRAE2
※写真画像はこちらから転載させて頂きました
ログ速:【ガイガー】放射能測定器質問スレ8【シンチ】
セイコー・イージーアンドジー:CsI(Tl)検出器(フォトダイオード検出器)
Satoshi's Home page:PINフォトダイオードを使った放射線検出器
電光石科:18-1.放射線検知素子
nteku.com:ダイオードとは
ATOMICA:放射線防護の3原則
「半導体」~Wikipedia
「ダイオード」~Wikipedia
「バンドギャップ」~Wikipedia
余談です。

この記事もそうですし、個人線量計についての考察記事も、ベータ粒子束密度考察記事もそうなんですが、いろいろなサイトを参考にさせて頂いています。ですが、とにかくまあ難しい。

で、なぜ難しいかがようやくわかりました。それは、専門用語が多いとか、正確性を期すためにそうなってしまっているとか、そういうことじゃないんですね。

ヒントは放射線測定器。

私たちは3.11以降、少しずつ放射線のことを学んできました。でも、実は単に「β線とは?」みたいに考えて学んでるんじゃないんです。放射線測定器を媒介に放射線のことについて学ぼうとしていることが多い気がします。

抽象的に放射線を考えているわけではないんです。具体的に放射線があり、それを手元の放射線測定器で計る。0.3μSv/hなんて数値が出る。その数値の意味は? シーベルトって? γ線? β線? ガイガーカウンターの仕組みって? 核種? エネルギー特性?

放射線の専門家とは真逆の方向から私たちは学ぼうとしています。専門家は「そもそもγ線とは」いや「光子とは」「波動とは」「電気とは」「原子とは」こういうところから学び、そして、そこから説明しようとします。だから私たちはチンプンカンプン。

ぜひ専門家の方には、逆から私たちに教えて頂きたい。具体的に現在、どういう状況なのか、手にしているこの機器はなんなのか、何をしようとしているのか、計測されたこの数値の意味は何か、計測されたその放射線は何なのか、放射線にはどういう種類があるのか、どういう特徴があるのか…。

こうして考えていくと、幾分か、素人の私たちでも理解しやすくなると思うのです。いや、難しいことをちゃんと調べるということにこそ意味がある、というのもわかるんですけど…。
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コメント一覧

181. 2011.11.02
DoseRaeを文部科学省認定の、校正場にて評価しましたが、低線量では正確でしたが、高線量では、誤差が多いようです。このような粗悪品を正確という悪徳業者が多いのには大変不愉快ですな。
182. 2011.11.02
DOseRAEはGM菅の製品よりは正確ですねえ。
とはいえ、アロカと富士以外の製品は原子力発電所では採用されていないのが業界です。30万円以下の製品は明らかにゴミということをおわすれなく。
190. 2011.11.03
これをサーベイメーターと言い放ち、空間線量測定用に貸し出し、あまつさえアロカと比較する東京都に不快感を感じますw

こちらにも返信させて頂きました。ご覧頂ければ幸いです。
http://geigercounter001.blog55.fc2.com/blog-entry-2.html

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