2011/07/28

【ベータ粒子束密度考察】その4 具体例編 ~TERRA MKS-05

ベータ粒子束密度とcpm、cpsはまったくの別物です

まずはじめに、TERRAにはcpm、cpsの表示機能は一切ありません(もちろん内部でカウントはしています)。ベータ粒子束密度モードのcm^2・minは「1平方センチメートルあたり、1分間にどれだけのベータ粒子が通過したか」という単位であって、時間しか加味していないcpm、cpsとはまったく異なる単位です(cpm、cpsを元にcm^2・minが算出されてはいますが)。

また、cpm/cm^2(単位面積あたりのcpm)なるものがあったとしても、これもcm^2・minとは異なります。cpmはβ線もγ線もあわせたカウント数です。ですから、仮にcpmを単位面積で割ることができたとしても、その数値はβ線+γ線。カウント数を適切なプログラムで処理し算出したベータ粒子束密度のcm^2・minとは、まるで意味合いが異なります。

ちなみにですが(前置きが長くなるなぁw)、「だったらガンマ線束密度とベータ粒子束密度の合計がcpm/cm^2 ?」とも思われるかもしれませんが、これも誤りだと思われます。理由は略!w

とりあえず、TERRAにおけるcpm(というかベータ粒子束密度)を誤解されている方がとても多いようなので、最初に指摘させて頂きます(エラそうに…(^^;)

TERRAのマニュアルを読んでみる

さて、TERRAには3つの測定モードが用意されています。なお、「photon-ionizing radiation」はγ線だと思って下さい。

<01>γ線のDER(線量率)測定
Measurement of photon-ionizing radiation DER
単位:Sv/h

<02>γ線のDE((積算)線量)表示
Indication of photon-ionizing radiation DE measurement value
単位:Sv

<03>表面ベータ粒子束密度の測定
Surface beta-particles flux density measurement
単位:cm^2・min

β線をSvで測定しましょうなんてどこにも書かれていません。つまり、裏蓋の開閉でβ線をSvの数値で測定しようとするのは間違いだということがわかります。ありがちだと思われる間違った測定方法を具体的に記してみます。

DER(線量率)モードで、裏蓋を閉めて測定
 ↓
γ線の線量率を測定(A)
 ↓
裏蓋を外し、引き続き線量率を測定
 ↓
β線を含めた”線量率”を測定(B)
 ↓
BからAを引いた数値(Sv/h)がβ線の”線量率”

というのは、完全に間違っているということです。

・そもそもβ線をSv(/h)で測定しようとするのが間違いです
・TERRAの使い方としても間違いです

百歩譲ってこの方法が有効だとするならば、数値が増えたか減ったかということを見ることにおいてのみ、大まかな目安程度ですが意味があると言えます(どれほど増えたか、どれほど減ったかというのは見てはいけません)。

なぜβ線をSvで計ってはいけないか(計ろうとしてはいけないか)は、他サイトでもよく解説されているので省略します。

では本題。ベータ粒子束密度モードに関してです。少し長いですが、ベータ粒子束密度モードの操作方法に関する部分を全文転載してみます。

2.3.3.6 Surface beta-particles flux density measurement.
This mode follows the mode of photon-ionizing radiation DE measurement. It is indicated by the blinking light-emitting diode opposite the appropriate mnemonic symbol below the LCD. Measurement units are expressed in part./(cm2·min).

At first measure gamma background (for further automatic subtraction), and then measure surface beta-particles flux density. To do this, wait until the digital LCD stops blinking in the mode of DER measurement (filter cover covers the window of the detector).

Press shortly the MODE button twice. This will store the DER measurement value as gamma background and switch the dosimeter from DER measurement mode to surface beta-particles flux density measurement mode.

Remove the filter cover from the window, located opposite the detector, direct the dosimeter with the window in parallel to the examined surface and place it as close as possible.

Consider the arithmetic mean of five measurements after the LCD stops blinking as a result of the surface beta-particles flux density measurement.

Every registered beta-particle and gamma-quantum will be followed by an audio signal.Measurement intervals from 1 to 70 seconds and measurement subranges will be set automatically according to the measured radiation intensity.

※段落は私が便宜的につけました

とても興味深い説明です。ここから、TERRAにおいては次のような手順でベータ粒子束密度を算出していると推察されます。

裏蓋を閉じてγ線の線量率(DER=Sv/h)を測定(バックグランド)
 ↓
モードボタンを素早く2回押すとバックグランド値が保存され、そのままベータ粒子束密度測定モードに
※γ線の線量率からγ線の量(quantum)を”逆算”(A)
 ↓
裏蓋を外して測定(おそらくはγ線+β線のフルエンスorフルエンス率、あるいはカウント数が測定されている)(B)
 ↓
自動的に(B)と(A)の単位をそろえつつ(B)から(A)を引く(automatic subtraction)
 ↓
自動的にベータ粒子束密度が表示される

「逆算」と明確に書かれているわけではありませんが、DERで測定しつつquantumで計算しているので、逆算だと推察されます。このquantumがカウント数のことなのか、線量率を微分(積分)して得られる独自の数値なのか、γ線のフルエンス(?)なのか、あるいはその他なのかは不明です。

また、裏蓋を外して測定する際の内部処理に関しても不明な点があります。引き算を伴うわけですから、カウントを取っているのか(いずれにせよ絶対にカウントしてはいますが)、束密度なのか…。(A)と(B)の兼ね合いもありますしね。

と、内部のプログラム的な部分に関してはよくわかりませんが、とりあえず(説明書を読む限りでは)大まかな流れとしては上記の通りだと思われます。そして、裏蓋を外して測定し、その数値自体に意味があるのはこの「ベータ粒子束密度(cm^2・min)」のみです。

なお、具体的な数値の見方ですが、本体裏面にこうあります。

terra_006.jpg UNIT
Flux density: 10^3/(cm^2・min)

Normal radiation level
Flux density:
(backgr+0.020) 10^3/(cm^2・min)

バックグランドの粒子束密度(?)がどのようにわかるのかが不明ではありますがw、とりあえずこれを無視して考えると、「表示が」0.02だったら普通、ということですね。そして意味は、0.02の場合、0.02×10^3 = 20 ですから、「1平方センチメートルあたり、1分間にベータ粒子が20個通過した」ということだと思われます。当然のことながら、Svと違い、この数値には健康にまつわる評価は一切含まれていません。

※この部分が一番自信がありません。ベータ粒子が20個…これが"normal"? うーん…。
2011.08.10追記:「ロシア貨物の除染基準の正しい内容 ~やはり単位が間違っていたようです」の記事でようやくこの数値に実感が持てるようになりました。だいたい10~20が目安になりそうですね。もちろん、ないに越したことはありませんが。

※追記:「なぜ 10^3 なんてことをしなきゃいけないんだ!?」と思われるかもしれませんが、これは4桁表示に収まるように桁数を減らすための調整ですね。おそらく。こうした処理、専門用語でなんと言うんでしょう…。よくある話だと思われます。「じゃあ、なぜ 10^2 もしくは 10^4 じゃないんだ!?」この理由も想像はつくのですが、説明がめんどくなってきましたw

まとめ~PM1405との微妙な差

さて、話は少しそれますが、TERRAにおけるcpm、cpsに関して見てみると、これまた面白いことに気づきます。TERRAの説明書には「cpm」「cps」といった単語が一切登場しません。公式サイトのTERRAのスペック表などにもありません。唯一、それらしき表現があるのは説明書のこの部分です。

The circuit of the anode voltage formation, digital processing, control and indication provides:
- scaling and linear realization of the detector counting response;

数十ページのマニュアルで「count」という単語が出てくるのはここだけです。なぜカウント、cpm、cpsといった単語が出てこないのか。端的に言うと、利用者に”カウント”を意識させたくないからでしょう。

おそらくは設計思想の問題ですね。液晶画面上はもちろん、説明書等においても、利用者に余計な情報を与えたくない。余計な情報というのは、その数値だけでは意味をなさない「cpm」「cps」のことです。

cpm、cpsはその数値だけでは意味がありません(説明省略)。ですから、その数値が独り歩きしては困るというのが一点。もう一点は、利用者にとって意味のある、そして数値として独り歩きしてもさほど困らない数値(Sv、cm^2・min)だけを表示させたい。利用者を混乱させたくないから。このような思想に基づき、あえてcpm、cpsを表示させないし、説明書にも書いていない、ということだと思われます。

ちなみに、PM1405では直接cpm、cpsという単語は出てきませんが、cpsと同義に使われている「counting rate」という言葉は頻出しています。

話を戻します。

TERRAの説明書・操作方法からも以下のことが一般論として再確認できました。

・γ線とβ線はそれぞれ違った方法(and プログラム)で測定しうる
・β線をSvで測定してはいけない

まあ、ふたつのことは同じことを言っているわけではありますが。

そして、TERRAの特性として次のことが推察されます。

・ベータ粒子束密度はγ線分を差し引いて算出されている

これも当たり前といいますか、どの機種においても言えることでしょうけど。ただ、PM1405とTERRAを比べると、ベータ粒子束密度の算出方法が異なるということもわかりました。

・カウントを直接差し引きしているPM1405
・カウントからワンクッション挟んでいるかのように計算しているTERRA

この違いは性能差というよりも設計思想の差であり、PM1405よりもTERRAのほうが初心者にはむいているということを指し示していると思えます。

というわけで、今回はここまで。だんだん内容が怪しくなってきましたねw

最後に、いつものように繰り返させて頂きます。

まだまだ考察途中です。多分に私の個人的な憶測が混ざっています。しかも素人の。信用しないで下さいw

[参考サイト]
MKS-05 TERRA マニュアル(公式/英語)
http://www.ecotest.ua/download/manual/terra/TERRA_manual_en.pdf

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TERRAシリーズ一覧(Amazon)
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コメント

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質問です。

たいへん参考になりました。
知りたかったことが、よくわかりました、ありがとうございます。
もう一点疑問に思っていることがありまして。
観測地点を移動した場合に(電源入れっぱなし、モード変更せず)どのくらいの時間で、新しい地点の計測値になっているのかと。(変化が非常に遅いように感じるのです)
radixは、20秒間ずつ4回分の平均値を計算していると聴きました。
TERRAもそのような、仕組みがあるのでしょうか。またその場合、どうのような算出方法をしているのか。。。。
もしかして、新しい地点の計測をする場合は、電源を一度OFFにした方がよいのでしょうか?
また、それは、モード変更を一巡することでも同じ結果になるのでしょうか。

Re: 質問です。

コメントありがとうございます。

MKS-05 TERRA マニュアル(公式/英語)
http://www.ecotest.ua/download/manual/terra/TERRA_manual_en.pdf

参考になるのはP32-33(ベータ粒子束密度の測定)とP51-53(ベータ粒子束密度測定の相対誤差校正)です。

1秒から70秒の間隔で測定が行われ(何秒かは放射線の強さに応じて自動で設定される)、LCDランプの点滅が終わったら、そのあとに表示される5回分の数値の平均を出す。これをベータ粒子束密度の測定結果と考えよ。ということが前者には書かれています。

> 変化が非常に遅いように感じる

上記の通り、最大で70秒かかります。線量が低い地点であれば、結構時間がかかる=変化が遅いように感じるかもしれませんね。あるいは、そもそも変化がないのかもしれませんし。

> 新しい地点の計測をする場合は、電源を一度OFFにした方がよいのでしょうか?

後者を読むと、一度DER測定したら、そのまま連続してベータ粒子束密度を測定しています。電源を入れ直せとは書かれていません。ですから、場所を変えて測定する際もそのままでいいと思います。もしかしたら、ここで点滅がまた始まることもあるかもしれませんが。

> どのくらいの時間で、新しい地点の計測値

点滅が始まれば、点滅が終わるまで待つ。点滅しなければ、そのまま5回の平均値を取る、ということでいいと思います。ですから、具体的に何秒といったものはありません。

> モード変更を一巡することでも同じ結果になるのでしょうか

バックグランドが変わらなければ、連続して測定しようが、再び最初から始めようが、それほど数値に変わりはないでしょう。ただ、バックグランドが変わらないかどうかは測定してみないとわかりませんからw、まあ、気になるようでしたら、場所を変えるごとに最初から始めてみてはいかがでしょうか。

Re: 質問です。

ひとつ抜けてました。追加です。

> TERRAもそのような、仕組みがあるのでしょうか

わかりませんw 噂はいろいろ目にしますが、公式にもマニュアルにもこの点に関して述べている箇所はありませんので…。


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