2014/06/09

CsI(Tl)ルネッサンスあるいは「PA-100」誕生秘話。そして堀場製作所の歴史~ラディに詰め込まれた結晶とは何なのか

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CsI(Tl)ルネッサンス

ヤフオク!で堀場製作所の「PA-100」が出品されました。これはレアです。

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放射線計測器 シンチレーターサーベイメーター 国産(HORIBA製)


固体シンチレーターであるCsI(Tl)は1950年ごろに発明されましたが、高額なため普及しませんでした。ところが、1980年代に入り、「CsI(Tl)っていいんじゃね?」という機運が高まり、1985年、「Properties of CsI(Tl) Renaissance of an Old Scintillation Material」(H. Grassmann, H.G. Moser (Erlangen - Nuremberg U.) , E. Lorenz (Munich, Max Planck Inst.) )という論文が発表されます。

この論文はエネルギー系業界に衝撃を与えます。そして、1986年、CsI(Tl)の研究で最先端を行っていたコーネル大学が堀場製作所にCsI(Tl)4000本を発注します。単なるCsI(Tl)じゃないですよ。一辺が5~6cm、長さ25~30cmという超巨大CsI(Tl)です。

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こうしてできたのがこちらのCsI(Tl)シンチレーション式サーベイメーターです。もちろん、使われているシンチは上のようなバカでかいものではありませんがw

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CsI(Tl)シンチがその威力を最大限に発揮するのは、フォトダイオード(半導体)と組み合わさった時です。面白いことに、光電子倍増管を使うと、NaI(Tl)に比べCsI(Tl)は1/2ほどのパルス波高しか得られません。ですが、フォトダイオードを使うと、NaI(Tl)に比べCsI(Tl)は2倍以上となります。

CsI(Tl)+フォトダイオードで、吸湿性が少なく、衝撃に強く、発光量が多く、低価格でコンパクトな検出器=放射線測定器が作れるようになったというわけです。

そして、堀場製作所は国内向けにもCsI(Tl)シンチのサーベイメーターを開発します。それが「PA-100」(1993年)です。測定範囲は0~9.999μSv/h、エネルギー範囲は0.5~3MeV(150keV~1.5MeV)、積算もでき、測定時間の表示も可能。さらに、アナログ出力端子を介してエネルギースペクトルも取得できます。

今やCsI(Tl)+フォトダイオードはパーソナルユースのシンチ放射線測定器では当たり前となっている組み合わせ・検出器ですが、その元祖とも言えるモデルが「PA-100」だったのです。

[ソース]ヨウ化セシウムを使った放射線サーベイメータ(PA-100)

堀場製作所が歩んできた道

1954年、原子力研究開発予算が国会に提出されました。これが原子力平和利用研究費補助金として各企業に分配され、さまざまな研究・開発が行われます。1956年、「制御用電離凾型積算線量計の研究」という項目で堀場製作所には2,040千円が補助されました。1960年には「低エネルギー放射線測定器の試作に関する研究」に対して1,996,000円が交付されます(これがすべてではないと思われます)。

[ソース]
昭和31年度原子力平和利用研究概要
原子力平和利用研究費補助金の交付研究の概要

国からの支援も受けつつ、堀場製作所は放射線測定関連機器を次々と開発していきました。以下はその一部です。

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1956年に開発された国産初のNaI(Tl)シンチレーター。

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サーベイメーター「RM-2/RM-3」(1957年)。

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シンチレーションスペクトロメーター「SS-1A」(1958年)。

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放射性廃液汚染除去監視装置「WD-1/WD-2」(1959年)。

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国産初の液体シンチレーションスペクトロメーター「LS-300」(1961年)。

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高純度ゲルマニウムγ線検出器「GHPシリーズ」(1985年)。

教育現場や家庭用の放射線測定器としては、「DX-100(はかるくん)」(1989年)、「DX-200(はかるくん)」(1991年)、「PA-300 Radi」(2002年)、そして「PA-1000/1100 Radi」が開発されてきました。

[ソース]堀場製作所:Report 特集報告 2006 堀場雅夫賞についてのご報告(PDF)

「PA-1000/1100 Radi」はかわいらしい親しみやすい外観です。しかし、そこに込められた経験と技術は、上述の通りとてつもない歴史を辿って得られたものです。

「堀場は御用」

よくもまあ、そんなことを言えるなと。日本の技術者・技術力を貶め、さらには自身の無知を露わにしている恥ずかしいセリフだと自覚した方がいいっすよ。

「低くしろ!」「はいわかりました!」

んなわけねーじゃん。堀場の開発者の前で言ってみって。張り倒されるか、失笑されるかのどちらかでしょう。

Radiには、CsI(Tl)シンチ結晶だけが搭載されているわけじゃありません。堀場製作所の、いや、日本の技術者の血と汗と涙とプライドの結晶が詰まっています。

堀場 環境放射線モニター(シンチレーション式) PA1000
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