汚されたガイガーカウンター~Gamma IndustriesのModel 252Bとテキサスのスーパーファンド(Superfund)

2014年05月27日
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Nuclear Systemsの子会社、Gamma Industriesのガイガーカウンター「Model 252B」です。”SMAC(Survey Meter and Charger)”とあるように、ポケット線量計のチャージャーにもなってます。製造年は不明です。Nuclear SystemsとGamma Industriesがいつ設立されたのかはよくわかりません。

[ソース]ebay:GAMMA Industries Model 252B Geiger Counter Survey Meter & Dosimeter Charger

Gamma Industriesは1983年からテキサス州タヴナーで密封線源の製造などもしていました。1984年、Gulf Gamma(1971年設立)がGamma Industriesを買収します。1988年、社名がGulf Nuclearになり、同年、GNI Groupと合併します。Gulf Nuclearは1971年の設立時から1987年まで、テキサス州オデッサで放射線関連製品を製造していました。

問題はGamma IndustriesとGulf Nuclearがテキサスで何をやっていたかです。もちろん、線源やガイガーカウンターなどを作っていたわけですが、そりゃもうとんでもないことになっていました。

1980年代あたりですと、まだまだ環境に対する意識が低かった時代。業者は有害な産業廃棄物等をそこら中に放置し、あるいは安易に埋めていました。結果、とてつもない汚染につながります。なんてことが全米中でありました。

Gulf Nuclearにおいても同様です。医療用、工業用、ありとあらゆる放射性物質を散らかしまくります。一例ですが、具体的にはAm241、Cs137、Co60、Gd242、Eu154、Sr90、I131、Ir192、Ra226、Sc46、S35などが検出されていたようです。

もちろん、そのまま放置しておくわけにもいきません。除染が必要です。ここで登場するのが”Superfund(スーパーファンド)”です。

1978年に起きたラブキャナル事件がきっかけとなり、スーパーファンド法が制定されます(「包括的環境対策・補償・責任法(CERCLA)」(1980)と「スーパーファンド修正および再授権法(SARA)」(1986)の総称)。

細かいことは省略しますが、米国環境保護庁(EPA)が汚染の調査をし、とりあえず浄化・除染を遂行します。その費用は石油税などで創設した信託基金(スーパーファンド)でまかなわれます。と同時に汚染の責任者(潜在的責任当事者も含む)を特定し、これらに費用を負担させるという仕組みです。

[ソース]EICネット:スーパーファンド法【米国】

よくありがちですが、このケースでも責任者たるGulf NuclearがEPAなどに、ずさんな(あるいは虚偽の)報告をしていて、除染が始まって実情が明るみに出ると、

「ちょっと待て。言ってたことと違うじゃん! いやいやいや。こんなにヒドイならなぜ最初からそう言わないんだよ!」

みたいなことになります。そして、予定をはるかに超える時間と費用がかかるわけですが、Gulf Nuclearは倒産します。費用の回収もままならなかったようです。

スーパーファンド、EPA、テキサスのスーパーファンドサイト。興味のある方は調べてみて下さい。

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[ソース]Proceedings of NATIONAL CONFERENCE ON RADIATION CONTROL(PDF)

さて、話を放射線測定器に戻しましょう。

Gamma Industriesは冒頭の「252B」以外にも放射線測定器を作っていたようです。ハンドヘルドのサーベイメーター、「150」「250」「250B」「252B」、据置タイプの「Mars Area Monitor」です。「252B」にはチャージャーがついていますから、もしかしたらポケット線量計も作っていたかもしれませんね。

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[ソース]
http://www.use.com/852b3911f29824015057
ORAU:Working Safely in Gamma Radiography

1988年、Gamma Industriesはイギリスの製薬会社、Amersham(アマシャム)に買収されたという情報もあります。Amershamは2004年、GEに買収され、GEヘルスケアの一部門となっています。

いずれにせよ、Gamma Industriesおよび同社製放射線測定器の歴史は、1980年代で幕を閉じました。Gamma Industriesを放射線測定器という観点で追ってみても、情報はほとんど出てきません。

おそらくは利権もあったでしょう。放射性物質の管理実態はずさんで、とてつもない汚染を引き起こしました。そんな企業が作っていたガイガーカウンター「Model 252B」。企業の黒い歴史ゆえなのか、放射線測定器の詳細もまた、闇に葬り去られてしまっています。

[参考サイト]
http://www.nytimes.com/1984/06/27/business/company-briefs-029342.html
http://investing.businessweek.com/research/stocks/private/snapshot.asp?privcapId=79188770
http://www.sec.gov/Archives/edgar/containers/fix013/355269/0000950129-96-002663.txt
http://www.manta.com/c/mmy7z92/gni-gulf-nuclear
http://health.phys.iit.edu/extended_archive/9608/msg00203.html
http://health.phys.iit.edu/extended_archive/9909/msg00284.html
http://google.brand.edgar-online.com/EFX_dll/EDGARpro.dll?FetchFilingHtmlSection1?SectionID=251384-196496-211938&SessionID=L5aG6SCK0tksUu7
http://www.ndsproducts.com/LCAL.htm

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