NE Technology(Nuclear Enterprises)の歴史~オマケの放射線測定器/ハンドルに表れる製品の信頼性

2014年05月01日
関連ワード:コラム , history , ThermoFisherScientific , デザイン ,

NE Technologyの歴史

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[ソース]eBay

ふたつとも「PORTABLE DOSE RATEMETER TYPE PDR1」というサーベイメーターです。しかし、メーカー名の表示が違います。前者はNUCLEAR ENTERPRISES、後者はNE TECHNOLOGYです。

nehistory_004.jpg 追記:NUCLEAR ENTERPRISESのハンドル黒バージョンを見つけました。上記2つの間あたりに製造されたモデルだと思います。詳しくは後述しますが、この写真だとハンドルの形状がよくわかります。追記以上。

1950年代半ば、ロバート・ウィリアム・プリングル氏らによってNuclear Enterprisesが設立されます。核、医療分野における各種計測器を開発していました。と同時に、同分野の他企業を吸収合併し、成長していきます。

東芝、日立(メディコ?)、島津製作所、アロカ(当時)。イギリス内では、こうしたメーカーと並ぶほどの実力を持っていたNuclear Enterprises。1987年にはEMIから放射線関連事業を買収し、社名をNE Technologyに改名します。

ソース(記事末参照)の書き方が曖昧で、ちょっと不正確になるかもしれませんが、EMIは超音波スキャナー、CATスキャナーといった医療機器を作っていました。また、放射線測定器の検出器も作っていました。NE Technologyはこれら一切合財を手中にしたのだと思われます。

巨大メーカーとなったNE Technologyですが、上には上がいます。1995年、フランスの超巨大企業、Saint-Gobainが同社を吸収合併します。そして、1993年に吸収していたBicronと統合し、Bicron-NEというブランドを誕生させます。

しかし、さらに上がいました。Thermo Electronです。2002年、Thermo ElectronはBicron-NEをはじめとする放射線関連事業を買収します。なお、その4年後にThermo ElectronはThermo Fisher Scientific(TFS)となります。

TFSの源流が徐々に徐々に明らかとなってきました。

オマケの放射線測定器

もともとNE Technology製だったサーベイメーター「ELECTRA」は今でもTFSが取り扱っています。原子力関連機関やイギリスをはじめとするヨーロッパの専門機関でも使われているのをよく見ます。

[関連過去記事]セラフィールドとNUVIAのイギリス紳士な放射線測定器「Electra」で、川口浩探検隊を思い出した

しかし、TFSの事業規模を考えれば、こんなものはオマケのオマケ。TFSの立場に立つと、ほしかったのはサーベイメーターではありません。医療分野における測定器や分析機です。これを買ったらオマケがついてきたと。

日立メディコだって個人線量計がほしくてアロカを買収したわけじゃありません。個人線量計が100本売れても、医療系、バイオ系の診断装置や測定装置が1台売れるより安いんですから。だからこそ、日立アロカ”メディカル”です。

[ソース]株式会社日立メディコによるアロカ株式会社の株式交換による完全子会社化に関するお知らせ

ビジネスという観点からすると、放射線測定器なんてショボイもんです。苦労の割に儲かりませんw だけどですね、それでもやっぱり必要です。線量計は医療にとっても、核・原子力にとっても必須です。

そういう意味で、放射線測定器はとても不思議な製品ジャンルだと思います。儲けなんてたかが知れている。だけど必要だから開発しなきゃいけない。他にないとは言いませんが、少なくとも市場原理からは外れたジャンルの製品だと言えるでしょう。

儲けよりも必要性。こうなると面白いもんで、メーカーはいい物を作ろうってなるんですね。だからこそ、富士電機やアロカが信頼されています。ぽっと出のメーカーが作る、儲けんがための製品では太刀打ちできんのです。たとえそれが安くても(エステーくらいできれば、まだ売れるかもしれませんがw)。

ちなみに、堀場製作所ってのもあるわけですが、こちらにもすごい歴史がありまして。詳細はまた後日。

放射線測定器の信頼性はハンドルに出る

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[ソース]Powerhouse Museum:Radiation detector, 1980

1980年製のNuclear Enterprisesのサーベイメーター「Portable Contamination Meter Type P.C.M.5」です。「PDR1」と似ていますが、イギリス軍での使用実績もある「PDR1」とは違い、「P.C.M.5」は環境、保健関連機関で使われていました。外部プローブをつなげられるという点も異なります。

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これはTFSの「ELECTRA」(元、NE Technology)。ハンドル部をご覧下さい。「PDR1」や「P.C.M.5」ととても似ています。

面白いんですよねぇ。ハンドルって。富士電機とアロカのサーベイメーターはちょっと似ています。遠目ではどちらかよくわかりません。だけど、ハンドルの形状さえわかれば見分けられます。特徴が大きく出ているからです。EberlineとLUDLUMもそう。似ていますが、ハンドルが決定的に違います。

人が放射線測定器に直接触れる部分がハンドルです。機器の使用においてハンドルが一番重要だと言っても過言ではありません。だから、ハンドルにはメーカーのこだわりが強烈に表出します。

確かにTFSはNEのサーベイメーターがほしかったわけじゃない。でも、なぜ今でもNEを扱っているかというと、それだけの価値がある製品だからです。50年以上の経験、知識、ノウハウが詰まった製品だからです。ハンドルの変わらぬフォルムが、そのことを物語っているように感じます。

というわけで、いつものようにとっちらかった、NE Technologyについての記事でした。

[ソース]
HeraldScotland:Dr Robert Pringle
Obstetric ultrasound:Tom Brown
Obstetric ultrasound:A short History of the development of Ultrasound in Obstetrics and Gynecology
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