2014/02/13

奇跡のガイガーカウンター「SM-102」~神戸工業、富士通、富士電機の放射線測定器的歴史をひも解く

関連ワード:コラム , history , 富士電機 , 第五福竜丸 ,
1950年代から70年代にかけて製造された、神戸工業、富士通、富士電機のサーベイメーターは、以下の4機種がネット上で確認できます。

・SM-3
→神戸工業の社歴に登場
富士通テン技報 50号発刊記念(別冊2)|富士通テン技術年表 ~川西機械製作所から現在まで~

・SM-6
→都立 第五福竜丸展示館に展示。写真は各所で散見。当サイトでも紹介
第五福竜丸とガイガーカウンターを見てきました

・SM-101
→2ちゃんねるで一度だけ登場
【放射線】ガイガーカウンターを作ろう 2CPM

・SM-102
→先日、ヤフオクに登場
骨董だって? 冗談じゃない! これはガイガーカウンター界の国宝とも言うべき価値のある代物かもですぜ! 詳細求む!

そして、上記記事で詳細を募集したところ、なんと、落札者の方から貴重な情報を写真付きで頂けました。ありがとうございます! 一部ではありますが、紹介させて頂きます。

fuji_001.jpg
奇跡のツーショット! 感動的です。なぜこれが奇跡なのかは後述します。

fuji_002.jpg
TRANSISTORIZED
RADIATION SURVEY METER
SM-102
FUJI ELECTRIC Co., Ltd.

FUJI ELECTRICは富士電機と訳せますが、じゃあ富士電機製かというと、そう単純な話ではなさそうです。これも後述します。

そして、右下のシール。昭和47年=1972年にどこかの企業(?)の安全管理室が、このガイガーカウンターを入手したということです。

それにしても、「TRANSISTORIZED」ですか。ガイガーカウンターにこんな表記をしているのを初めて見ました。でも、なぜこんなことをわざわざ書いたのか、その気持ちはよくわかるなぁ。この件についてもまた後ほど。

fuji_003.jpg
メーターにはこのような記載があります。

TSURUGA ELECTRIC WORKS. LTD. JAPAN
DATE 1970

鶴賀電機製作所(現・鶴賀電機)が1970年にこのメーターを製造したということでしょう。メーターと本体の製造時期が大きく異なることもないでしょうし、上述の通り、1972年には購入者の手元に渡っているわけですから、1970年~72年に製造されたものと思われます(この機種の開発自体がいつかというのはまた別ですが)。

fuji_004.jpg fuji_005.jpg
こっち系はさっぱりなのでよくわかりませんが、送り主さんは富士通の部品が使われていると書かれていました。

fuji_006.jpg fuji_007.jpg
プローブにはその直径と同じくらいの大きさのGM管が詰め込まれているとのこと。

fuji_008.jpg
右面です。ちょっとよくわかりませんが、

Tramo No.2
G-β.γ

でしょうか。

二行目はガイガーカウンターでβγに対応しているということでしょう。一行目が…。この機種の愛称というか商品名というか、そんな感じなんでしょうか。トランジスタモデル No.2とか?? 一生懸命デザインした風でほほえましいですw

fuji_009.jpg
これは底面。全体的に言えることですが、ほんと状態がいいですね。こんなキレイに保管されていたというのも、ちょっとした奇跡ではあります。ちなみに、ほぼ完全に動作するようです。

その他、送り主さんからの情報によりますと、こんな感じです。

・幅114×奥行180×高92mm(突起含まず)
・プローブ:φ30×180mm(GM管は約130mm)
・トランジスタやダイオードが富士通製
・メーターの中に小さく「特-123-2」という文字がある
・BAT ADJのキャップの中にはボリューム
・PHONEのキャップの下には3.5mmのミニジャック

「特-123-2」ってなんだろうなぁ…。

さて、この機種にからむ企業は、川西機械製作所、富士電機(富士電機製造)、富士通(富士通信機製造)、神戸工業、富士通テンです。これらの歴史を簡単にまとめてみました。

1920年 川西機械製作所
1923年 古川電気工業とシーメンスが合弁会社・富士電機製造を設立
1935年 富士電機製造の電話部所管業務を分離し、富士通信機製造を設立
1946年 川西機械製作所が商標TEN 制定
1949年 企業再建整備計画により川西機械製作所は神戸工業、灘琺瑯、小野ガラス工業所の第二会社3社を設立して解散清算事務に入る
1949年 神戸工業株式会社設立
1950年 川西機械製作所(神戸工業?)がガイガー計数管「GM-131A」開発
1951年 神戸工業がサーベメータ「SM-3」を開発
1954年 神戸工業がトランジスタの製造を開始
1954年 第五福竜丸被ばく事件
1958年 神戸工業が富士通の関係会社になる
1961年 神戸工業がシンチレーターを開発
1965年 富士通信機製造が富士電機製造グループから離脱
1967年 富士通信機製造が富士通に改称
1967年 神戸工業がヒューマンカウンタを開発(WBCのようなもの)
1968年 神戸工業が富士通と合併
1971年 富士通から富士電機製造に放射線機器事業を移管
1972年 富士通からラジオ部門が分離・独立して、富士通テンを設立
1984年 富士電機製造が富士電機へ社名変更

放射線測定器という観点からザックリ言えば、神戸工業あるいはその前身・川西機械製作所から始まった放射線測定器の流れは、富士通→富士電機と受け継がれていきます。

なお、神戸工業は日本で初めてトランジスタの製造に乗り出しました。各メーカーは次世代のテクノロジーとして、争うように新製品を生み出していきます。ガイガーカウンターになぜ「TRANSISTORIZED」と書かれていたか。トランジスタのパイオニアである神戸工業の血を受け継いだ者としてのプライドが、ここに表れているのだと思います。

このガイガーカウンターは70~72年に製造されました。当時、存在していたのは基本的には富士通と富士電機製造。しかも、71年は放射線測定器事業が前者から後者へと移管された年。グッチャグチャですなw

さらに、富士通のwikiを読みますと、こんな記載があります。

fuji_011.gif 1978年まで使用されていた社章は、親会社だった富士電機と同様に○の中に小文字アルファベットの“f”と“s”を組み合わせたものである。

まさに、本体左面に描かれているマークです。

中身は富士通部品が使われている。だけど、富士通も富士電機も使っていたであろうトレードマークが使われている。そして、ちょうど両者の間で事業が移管している時期。

もはや、どちら製かわかりませんねw ただ、中身のことと「SM」という品番のことを考え合わせますと、神戸工業から富士通へという流れが色濃く出ているガイガーカウンターであることは間違いないでしょう。

しかしです。もうひとつ、ずっと気になっていることがあります。この本体です。どう見てもアメリカの影響が大です。そして、写真を送って頂いて気付いたことがあります。留金なんですが…

fuji_010.jpg
「CD V-700」と非常に似ています。留金は同じメーカーでは?? 神戸工業も富士通も当時からアメリカでも商品を販売していました。アメリカのメーカーと技術提供もし合っていました。一部の部品をアメリカから取り寄せていたとしても不思議ではありません。

先の記事でも触れましたが、ハンドルもVictoreenそっくりです。もし、これらの部品を輸入していないのなら、相当にインスパイアされていたのは間違いないでしょうw

そう。だから奇跡なんです。

見た目はVictoreen、Nuclear Measurementsの「Model GS-3 GM」や「CD V700 Model2」などにそっくりです。サイズもほぼ同じ(冒頭の写真の6bは初期モデルに比べて大きいです)。留金は同じかと見まがうほどで、ストラップを取りつける留金の配し方も似ています。

両者がどういう関係かは不明です。関係あるのかどうかすらわかりません。だけど、アメリカと日本のとても重要な機種にあたる両者がとても似ていて、こうして並んでいるというのは、奇跡としか呼びようがありません。

わからないことはまだまだあります。だけど、謎のベールに包まれている50年代~70年代の日本の放射線測定器事情の一端が垣間見える、とても貴重な資料をお寄せ頂けました。改めて感謝申し上げます。

[参考資料]
https://www.fujitsu-ten.co.jp/company/profile/
https://www.fujitsu-ten.co.jp/gihou/jp_pdf/tok02/2-1.pdf
https://www.fujitsu-ten.co.jp/gihou/jp_pdf/tok02/2-2.pdf
https://www.fujitsu-ten.co.jp/gihou/jp_pdf/tok02/2-3.pdf
2014.03.07追記:その後、黒いテープが”自然”にはがれおちたそうですw

fuji_012.jpg
下に隠れていたのは「FUJITSU」(富士通)の文字。やはり富士通のサーベイメーターだったんですね。

で、気になったのが黒い「2」の文字です。黒いテープと同じなら富士電機があとで貼り付けたとも考えられたのですが、所有者様によると黒い部分はペイントだそうです。となると、複数台あったから、これを使っていた会社がナンバリングとして「2」とペイントしたのか、「Tramo No.2」ということで富士通が最初からデザインとして「2」と書いていたか、あるいは富士電機がそうしたのか…。

あ、もともとのメーカーである富士通に敬意を表し、富士電機が富士”ツー”としたとかwww それはないなw
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コメント

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FUJI ELECTRIC Co., Ltd.

こんにちは,落札者です。

適当に撮った写真を送っただけなのに,素晴らしい記事にまとめていただいてありがとうございます。おかげで,関係企業の流れがよくわかりました。テンなんてカーオーディオ中心のたいしたことのないメーカーだと思っていたのが大間違いだということもわかって驚きました。

この関係企業の流れにも関係しますが,SM-102側面の「FUJI ELECTRIC Co., Ltd.」は,金属素材っぽいステッカーです。もしかしたら,元はこの下にFUJITSUとかTENとか書かれていたものが,放射線機器事業が富士電機製造へ移管されたので側面の社名もステッカーで変更ということになったのかもしれません。ステッカーをはがして確かめたいところですが,はがしても何もなかった上に本体の塗装まで痛めたということになると悲しいので難しいところです。

Re: FUJI ELECTRIC Co., Ltd.

いえいえ。こちらこそ本当にありがとうございました。

> はがしても何もなかった上に
> 本体の塗装まで痛めたということになると悲しいので
> 難しいところです。

もしかしたら、将来、自然とはがれ落ちてしまうかもしれません。それまでは、いろいろと想像をめぐらし、あれこれ妄想するのもまた一興かとw


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