2014/02/11

リアルタイム線量計とは何か。そして何が問題となっているのか

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リアルタイム線量計の定義

人への影響を安全側に余裕を持って評価する1cm線量当量率(単位はマイクロシーベルト(μSv))を表示するよう調整されている

[ソース]福島県:モニタリングポストの測定値とサーベイメータなどの測定値の違いについて

80年代(?)から設置されてきたモニタリングポストは、空気吸収線量率(Gy/h)を測定・表示します。一方、2011年3月11日以降に設置されだしたリアルタイム線量計は、上記の通り、1cm線量当量率(Sv/h)を測定・表示するものとされています。

こうした際に「1cm線量当量」なんて言い方をするのは日本だけです。日本では各省庁の出すレポートや、あるいは法令においてまで「1cm線量当量」というバカげた表現が頻出します。

研究分野においてはいざ知らず、実測という観点からすると、1cm線量当量という言葉は何も意味しません。なぜなら、周辺線量当量の1cm線量当量(H(10))、個人線量当量の1cm線量当量(Hp(10))、方向性線量当量の1cm線量当量(H'(10))と3種類あるからです。それぞれ違うものですから、1cm線量当量と言うだけでは、どれを指すのかがわかりません。すなわち、意味をなしていません。

こんな曖昧な言葉でリアルタイム線量計を定義するのはおかしいと私は思います。

リアルタイム線量計の目的

周辺環境における全体的影響を評価し、今後の対策の検討に資する観点から、放射線モニタリングにおける主要なねらいについて、
① 人が居住している地域や場所を中心とした放射線量、放射性物質の分布状況の中長期的な把握
② 現在の周辺住民の被ばく(外部被ばく及び内部被ばく)線量及び今後予想される被ばく線量の推定
③ さまざまな被ばく状況に応じた、被ばく線量を低減させるために講じる除染をはじめとする方策の検討立案・評価
④ 将来の被ばくを可能な限り現実的に予測することによる、避難区域の変更・見直しに係る検討及び判断
⑤ 住民の健康管理や健康影響評価等の基礎資料
⑥ 環境中に放出された放射性物質の拡散、沈着、移動・移行の状況の把握
とし、これらに必要なデータを取得することとする。

[ソース]原子力規制委員会:総合モニタリング計画

放射線量の分布を把握するために利用する。除染の検討に利用する。避難区域の判断基準として利用する。これがリアルタイム線量計の設置目的です。

「リアルタイム線量計を設置しますね。あとは、各方面でうまいこと利用して下さい」

てなもんです。

いずれにせよ、こうした文言から、常識的に考えて、リアルタイム線量計が測定・表示するのは周辺線量当量の1cm線量当量でしょう。

さて、アルファ通信の裁判で問題となっている入札案件においては、文科省側の説明で「空間線量」という言葉が使われていたようです。そして、アルファ通信は「DoseRAE 2」で落札しました。

「DoseRAE 2」は個人線量計です。個人線量当量の1cm線量当量です。”人の線量”です。リアルタイム線量計が想定しているであろう”場の線量”すなわち、周辺線量当量の1cm線量当量ではありません。また、詳しくは後述しますが、「空間線量」はどちらかというと周辺線量当量に近いニュアンス。ですから、

・アルファ通信が「DoseRAE 2」で入札に参加したのは、どう考えてもトンチンカン

・そのトンチンカンが入り込む余地を残し、落札させてしまった文科省もおかしい(仕様書の書き方、参加者のチェックに誤りがあったはず)

※追記:このような情報もありました。

無垢?のDoseRAE2ではなく、ライノテック工業が改造した(ディテクタから信号を取り時定数を5分にして指示誤差の改善を試みた)もの

[ソース]野々村‏@ye2cun https://twitter.com/ye2cun/status/433228722775154691

ほぉ。いろいろ試みようとはしていたようですね。ただ、指示誤差が改善されても、個人線量計は個人線量計(のはず)。これでリアルタイム線量計を作るってのは…。無理があったんじゃないかと思います。追記以上

ところで、相対的な推移を見るだけではなく、この数値でさまざまな判断がなされるわけですから、ある程度の”正確性”が求められるはずです。

この”正確性”には2段階あると私は思います。まず、周辺線量当量の1cm線量当量(H(10))を測定する機器として、指示誤差がJISの範囲内であることは必須でしょう。次に、配備されたリアルタイム線量計の実測値が、他のH(10)のサーベイメーターの実測値とそれほど大きく異なっていないことも望まれるところです(この件に関しては)。

ただ、異なる機種の実測測定値を比較し、両者が一致しているかどうかを厳密に見ることにそれほど意味があるとも思えませんから、後者に関しては「ある程度」くらいなニュアンスでいいと思います。

※このことに関する言説で、「真値」という言葉を散見します。某ウェブメディア上の某記事の某大学教授ですら、こんな言葉を使ってます。まじですかと。じゃあ「真値」ってなんなんですかと。まったく…

こうして見てくると、そもそもリアルタイム線量計って本当に必要なんかいな?とすら思ってしまうのですが…。だって、たとえば除染にしたって、結局、サーベイメーターで測るわけですよね。避難区域にしたって、決める際にはサーベイメーターで実測するはず。

マッピングし、全体的な分布を見るのには適しているかもしれませんが、その他では個別に検討され、測定されるというのが実情だと思います。こんなにお金をかけて白いポストをボコボコ建てるって…。費用対効果あります??

「費用対効果はある」「それだけじゃ推し量れない必要性がある」っていうなら、いいんですけど。いや、別に「こんなものいらない!」と主張しているわけじゃありません。当たり前のように、なんだかフワっと、「これは必要だ」と思われ建てられているとしたら、いかがなものかと。

これを機会に、一度しっかり考えてみてもいいんじゃないですかね。いったいなぜ建てているのか。具体的にどう活用されているのか。そして、それは費用に見合ったやり方なのかを。なーんか、二度手間のようにも見えますが…。

空間線量と線量計

上記も含む各省庁の資料、ガイドライン、あるいは報道、twitterやブログなど一般市民の各所でのコメントで、「空間線量」「線量計」という言葉がよく使われています。ずっと言い続けているのですが、ちょっとよろしくない状況だなぁと思っとります。

まず、空間線量。この言葉も日本独特です。ただ、なぜこんな言葉ができたのかは想像できます。「air」の誤訳もしくは拡大解釈、ないしは混同でしょう。

・air absorbed dose(absorbed dose in air)
→空気吸収線量。「air」は空気です。ただ、長年、空間線量=空気吸収線量ともされてきました。

・dose rate in free air
→自由空間における線量率。「air」は空間です。そして、このような言い方がよく出てくるのが、測定器の校正・テストにおいてです。周りに何の遮蔽物もなく、後方散乱(backscatter)もない自由空間上で、測定器を校正します。これが周辺線量当量につながります。

で、いろいろな意味で使われる「air」が一緒くたになって、3.11以降、なんとなくなその場の放射線量という意味で、空間線量という言い方が広まります。

ただし、現状を鑑みますと、一般的には空間線量=周辺線量当量としているケースが多いようにも感じます(たとえそれが無自覚的であっても)。なぜなら、「エアカウンターSで空間線量を測定する」といった感じで言われているからです。逆に、「PDM-122で空間線量を測定する」とはあまり言いません。

いずれにせよ、曖昧っちゃあ曖昧な言葉です。一般人が普段の会話で使う分には構いませんが(本当はもうちょっと意識してもいいとは思いますが)、公的機関が、税金が絡むような入札案件で、安易に空間線量という言葉を使っちゃうのはいかがなものかと思います。

[関連記事]
空間線量(率)とは~誰も教えてくれない空間線量(率)をわかりやすく説明する最新版

線量計という言葉もまったく同様です。逆に質問です。線量計ってなんですか? おそらく、この問いに対する回答はまちまちでしょう。それだけ幅が広く曖昧な言葉ということです。

しかし、サーベイメーター、個人線量計といえば規格的にはっきりと定義があります。これなら誤解は生じません。ですから、線量計という言葉にもセンシティブになろうと、当サイトでは繰り返し主張しています。

なお、サーベイメーターはH(10)です。個人線量計はHp(10)です。JISでそう定義されています。ね? はっきりしてるでしょ? 知識のない人がいるような場で、誤解なく言葉を伝えようとするなら、どういう言葉を使えばいいでしょうか?ってことです。

[関連記事]
放射線測定器と個人線量計~何が違うの?

アルファ通信の裁判

・入札はどうだったのか
・契約はどうだったのか
・製品はどうだったのか

これをわけて考えましょう。

アルファ通信がどんな機器で入札に参加しようとしても、それは自由です。ただ、もしその機器が不適切なら、入札に参加させなきゃよかったんです。参加資格ってのがちゃんと決められているはずですから。

そして、アルファ通信は「DoseRAE 2」を持ちこんだ。この段階で「いやいや、それはいかんだろう」と文科省は言うべきだったと思います。

とはいえ現実は、アルファ通信が「DoseRAE 2」で落札してしまいました。ならば、どんな機器であろうと、ちゃんと文科省が期待している通りの測定結果を残せるようにしなければいけません。もし、それに応えられる製品を納入できなかったのなら、契約を破棄されても文句は言えませぬ。

※「文科省の言う通り低く数値を出さなきゃいけない」みたいな類の意味じゃありませんからね。適切な測定ができるという期待です。

この点に関しては、両者の言い分があり、係争中ですから、結審を待つしかありません。あまりあーだこーだと言いたくはありませんが、直感として、「DoseRAE 2」を持ち出しちゃうような会社ですから、ま、分は悪いでしょうなぁ。まともに製品を納入できていたとは到底思えません。

※これまた誤解があるといけないので言っておきますが、「DoseRAE 2」をdisってるわけじゃありません。同機を利用したリアルタイム線量計がまともなものになるとは考えにくいと言っています。

※この件といい、国民生活センターの件といい、ほんと「DoseRAE 2」およびRAE SYSTEMSにとっては災難続きですな。正直やってられんでしょうね(^^; けど、ライノテック&アルファ通信は、RAEにどう言って大量購入したんでしょね。ここも気になります。ちゃんと用途を説明してたんかな? その上でRAEは納得してた? だとしたらメーカーとして…

[関連記事]
アルファ通信、モニタリングポスト/リアルタイム線量計、DoseRAE 2 ~放射線測定器の調達は難しい

言葉

今の段階で私が思うことはこうです。

ちゃんと言葉を使ってりゃこうならなかったんじゃね?

何も難しくはありません。単に、

周辺線量当量の1cm線量当量を測定・表示する機器を納入せよ

そう言えばいいだけだったんですから。

言葉って重要です。この件だって、たった20文字程度の言葉を入れるだけで防げたはず。この件に限らずとも、言葉の定義が曖昧なまま議論するもんだから、話がまったく噛み合ってないなんてケースもよく目にします。

空間線量ってなんですか?

線量計ってなんですか?

誤差ってなんですか?

こうした言葉を曖昧に使ってはいませんか?

言葉ひとつで、膨大な費用と時間が無駄になっちゃってるんですよ?

[参考資料]
野々村さん @ye2cun
※特に「1cm線量当量」「空間線量」の件、ありがとうございました!

付録:「あんまり変わらないよ」がいけない理由

「サーベイメーターも個人線量計も、結局、測定値はあまり変わらないじゃん」

そんなセリフをよく目にします。

はぁ、そうですかと。

個人があれこれ検証してみるのはいいですよ。見ていて楽しいです。だけど、あるサーベイメーターとある個人線量計を比較し、測定値が似通っているからといって、それをサーベイメーター&個人線量計という一般論に敷衍するのは間違っています。

どんなに力を込め検証しようと、しょせんは素人のひとつの経験則でしかありません。個人的にそう思うのは自由ですが、それを特に初心者へ言っちゃうのは無責任だと思います。

こういういい加減さ・無責任が、サーベイメーターと個人線量計の違いを意識させづらくし、正しい知識の伝播を阻害し、DoseRAE 2で地表を測ったり、「地表で5μSv/h出た!」みたいになったり、リアルタイム線量計の入札にDoseRAE 2が持って来られたりなんて事態を生むんですw

まず大事なのは、サーベイメーターと個人線量計というものがあるということ。両者は用途が違うということ。これは経験則でも感想でもなんでもありません。客観的に誰もが確認できる規格上の事実です。

その上で、「比べてみた」「それほど変わらなかった」などと検証して下さい。そして、その結果を伝える際には、誤解を与えないよう、十分に留意して下さい。

米RAESYSTEMS社製 X γ 放射線線量計 DOSERAE2 (PRM-1200)
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いえいえ、HP10でもなんでも、アロカのシンチサーベイの8倍の線量を示すアルファ通信は異常です。それに対し、文部科学省の値は異常とのバッシング、値を低くしろなどのマスコミへの情報操作、あきらかに真摯な態度とは思えません。HP(10)とMPとサーベイでは、ファントム比でも7%程度の違いです。文部科学省は「アロカのシンチサーベイ」の8倍の線量を表示する装置に対し、校正証明をもとめましたが、提出はありませんでした。その後、アロカのシンチサーベイに値をあわせたようでしたがそれでも、契約図書に記載された誤差を満たすものではありませんでした。その時点で、性能が契約にみたされない、しかも個数がそろわず、契約納期が来たために、文部科学省は、契約不履行と判断しました。まず契約納期に個数が間に合わない、誤差を甘く設定したにもかかわらず、試験判定基準を満たさない。ので契約を破棄するのは当然です。がなぜか世論は文部科学省が悪いとの報道です。文部科学省は運用できない装置を排除する義務があります。
現状アルファ通信は、公共事業を甘く考えてしたとおもいます。公共事業は採算を度外視した、永久補償(無料)です。
公示された金額で永遠補償しなくてはいけません。


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