2014/01/20

放射線測定器業界のバズワード~”pager(ページャー)”という言葉は誰が使ってる?

pager(ページャー)な放射線測定器

gc_817.jpg

1997年、Polimasterは「PM1401」という放射線測定器を開発・リリースします。現在はもう製造・販売していませんが、ポリマスは同機をこんな風に説明しています。

1997
РМ1401
Pager type search instrument initially designed to be used by Customs and Border guards for prevention of illicit trafficking of radioactive and nuclear materials in many countries. This device can operate in harsh environmental conditions. PM1401 has been successfully deployed and proved very reliable over the years. Currently the 5th generation of PM1401 is being released.

[ソース]Polimaster:POLIMASTER brand

冒頭の「Pager」という言葉にご注目。海外、特にアメリカの放射線測定器関連のサイトを見ていると、よく出くわす言葉です。

あるいは、Sensor Technology Engineering, Inc.(STE)という会社がありまして、ここが「RADIATION PAGER」という放射線測定器をリリースしています。

gc_818.jpg

社長のKenneth G. Vadnais氏は、”pager”に関してこんなことを言っています。

Recent advances in miniature photomultiplier tubes and low power electronics have made possible a new generation of small gamma-ray radiation detectors specifically designed for use by government and law enforcement agencies for the detection and interdiction of concealed nuclear materials. This paper describes an inexpensive pager sized radiation detector that can be worn on the belt or carried in a pocket for hands free operation, and which can quietly alert the operator to the presence of nuclear material. The sensitivity performance of the detector technology and the application of the instrument to law enforcement and nuclear smuggling are discussed.

[ソース]Radiation pager (by John L. Warren ; Kenneth G. Vadnais)

そもそもpager(ページャー)とは、アメリカ(英語圏?)でのポケベルの呼び方です。てか、ポケベル(ポケットベル)のほうこそが日本独自の(NTTの)呼び方なんですが。そして、”ポケベルサイズ”のことをアメリカでは”pager type””pager-size”などと表現します。つまり、ポケベルサイズの放射線測定器が”pager-sized radiation detector”。これが縮まり、pagerと呼ばれるようになったというわけです。

確かに「PM1401」はアメリカで使われていたポケベルによく似てますw

ところで、現在、pagerの例としてよく挙げられるのは「PM1703M」シリーズ(Polimaster)、「RADIATION PAGER」(STE)、「identiFINDER R300(nanoRaider)」(FLIR)、「Radeye PRD」(Thermo Fisher Scientific)、「GammaRAE Ⅱ R」(RAE Systems)、「Mini Rad-D」(D-tect Systems)などです。


別に、これらだけがpagerというわけではありません。ポケベルサイズであればなんでもpagerと呼べます。ただ、EPD(電子式個人線量計)の類をpagerということはあまりありません。だいたいがPRD(個人用放射線測定器)の類です。

また、「TERRA」シリーズをpagerと言うこともありません。アメリカ製がそう呼ばれることが多いんですね(ポリマスもアメリカに支社があり、アメリカではメジャーな企業です)。

しかしです。この言い方はちょっと不正確と言いますか、話が逆のような気がします。

従来品との差別化を図るための”バズワード”

ここまでをまとめますと、ポケベルサイズの放射線測定器をアメリカではpager(ページャー)と呼ぶことがある、ということです。でも、アメリカの一般市民が手のひらサイズの放射線測定器を”pager”と呼ぶことはほとんどありません。じゃあ、誰が”pager”という言葉を使っているのか。

これは実際に「pager」という単語でググってみれば一目瞭然です。メーカー、ショップ、製品規格や製品テストに関連する団体・機関。こうしたところが”pager”という言葉を使います。てことはつまり、言ってしまえば宣伝文句用の一種のバズワードですな。

radiation detectorでは言葉が堅い。dosimeterじゃニュアンスが違う。geiger counterという言葉は使い古されている。それにシンチはガイガーじゃないし。うーん、消費者にアピールできるうまい言葉はないだろうか…。お、ポケベルサイズだから”pager”だ!と。

こうしてメーカーや販売店は、コンパクトな手のひらサイズの、ポケベルサイズの放射線測定器を”pager”というキャッチーな言葉で呼ぶようになります。

逆から見てみましょうか。とても面白いのが、CANBERRAの「ULTRA RADIAC」です。

gc_819.jpg

サイズ感といい使われ方といい、pagerと呼ばれてもよさそうですが、一切、pagerとは呼ばれていません。なぜかというと、CANBERRAだからです。

CANBERRAは基本的に小売りをしていません。メーカーの姿勢として、消費者に自社製品をことさらアピールしません。アピールする必要がないのだから、「ULTRA RADIAC」をpagerなんて言う必要もありません。さらに、CANBERRA製品を扱う一般的な販売店もまずありません。ですから、ネットでどう調べようが、「ULTRA RADIAC」をpagerと呼ぶ人はいないのです。

放射線測定器をpagerと呼ぶ場合、そこに明確な定義はありません。そのサイズ感からpagerと呼ぶことがあるというだけです。しかし、重要なのはpagerと誰が言っているかです。一般人がpagerと言っているわけじゃない。pagerは従来品との差別化を図りたいメーカーやショップの気持ちが込められた言葉でもあるということですな。

というわけで、「ざるそば」ってのもある意味でバズワードだよねというお話でしたw

※「Interceptor」は製造中止になってんのかな…

[関連過去記事]
アメリカ・DNDOによるPDRテストレポートを読んでみた~私たちは何を測ってるの?
関連記事

コメント

非公開コメント



rss001.gif twitter001.gif fb001.png Google+