2013/12/04

激安出品されたPM1208で見る正確さ(accuracy)と誤差(error)~専門用語と翻訳

「これよりこちらのほうが正確だ」

こうは言えますが、数値でもって正確さ(accuracy)を表すことはできません。正確さは定性的なものだからです。「10%正確だ」「1mm正確だ」こんな言い方しませんよね?w

工業製品、少なくとも放射線測定器の規格においては、正確さなんてものは云々されません。その代わり、基準に対してどれほどの誤差(error)があるか、あるいはどれほどの不確かさ(uncertainty)があるかをテストし、それがどの程度以下でないといけないか、ということが定められています。誤差や不確かさは数値で表現できる定量的なものだからです。

ぜひ一度、放射線測定器関連のJISを見てみて下さい。正確さ(accuracy)という言葉は一切出てきません。出てくるのは誤差(error)と不確かさ(uncertainty)です。

そして、放射線測定器のスペック表でよく見る「±20%」といった項目はほぼ100%、相対指示誤差です。基準となる線量(率)に対して、テストしている(校正している)その機器がどれほどの線量(率)を表示しているかを表しています。

たとえば、基準の線量率が1μSv/hだとします。この放射線(Cs137もしくはCo60であることが多いのですが)を放射線測定器に一直線に照射します。すると、1.2μSv/hと表示されました。この際の指示誤差は1.2-1=0.2μSv/h。相対指示誤差は0.2×100/1=20%です。

「0.1、0.12、0.15、0.09…。スペック表には20%と書いてあったのにそれ以上の誤差がある!」

「アロカシンチで測ったら0.12だった。TERRAだと0.15。30%も誤差がある!」

「エアカウンターSで測ったら0.1だった。スペック表には誤差20%とあるから、本当は0.08~0.12の間だな」

これらはメチャクチャだということです。そもそも、スペック表に書かれている相対指示誤差は、校正場における基準線量率との誤差。実測は校正場ではありませんから、スペック表の世界とは無関係です(大げさに言えば)。

当サイトのカタログには相対指示誤差を掲載していません。なぜなら、製品としてある以上、おおよそが規格内になっているでしょうから、だいたいが20%とか30%です。そして、それは校正における相対指示誤差ですから、実測には関係のないこと。つまり、われわれユーザーとしてはほとんど気にするようなことではありません(気にしたところで意味がないと言った方が正確かもしれませんね)。だから、当サイトでは掲載していません。

では、なぜこんな説明をわざわざしているかというと、スペック表の数値を見て、上記のようなことを思っちゃう人がいるわけでして、「いや、それは違うんだって」と言っておかないと、と。

正確さ(accuracy、又は不正確さ:inaccuracyという場合も)も、不確かさと同じではありません。残念なことに、この2つの言葉の使い方は、よく混同されています。正しくは、「正確さ(Accuracy)」は定性的な用語です(例えば、ある測定が「正確だった」とか、「正確ではなかった」といった言い方ができます)。

これに対して不確かさは定量的です。数にプラス又はマイナスを付けて表示したとします。それを不確かさと呼ぶことはできますが、正確さとは呼べません。

誤差も不確かさと同じではありません(これまでも、「誤差解析」のような言い方に見られるように、これらを同じ意味に使用することがよく行なわれてきましたが)。先に2.3項で述べた説明を参照してください。

2.3 誤差 (error) と 不確かさ (uncertainty)
「誤差」という言葉と、「不確かさ」という言葉を混同しないようにすることは、重要です。誤差とは、測定しようとするものについての、測定された値と「真の値」との差をいいます。不確かさとは、測定結果の疑わしさを数値で表わしたものをいいます。

[参考資料]
不確かさの入門ガイド(PDF)

さて、前置きが長くなりました。「PM1208」というPolimasterの腕時計型ガイガーカウンターが3つ、ヤフオク!で安く出品されています。

gc_756.jpg

1円~◇POLIMASTER◇ガイガー◇時計付◇PM1208◇放射能測定器①
1円~◇POLIMASTER◇ガイガー◇PM1208◇時計付◇放射能測定器②
1円~◇POLIMASTER◇ガイガー◇PM1208◇時計付◇放射能測定器③
1円~◇POLIMASTER◇ガイガー◇時計付◇PM1208◇放射能測定器④
1円~◇POLIMASTER◇ガイガー◇時計付◇PM1208◇放射能測定器⑤
1円~◇POLIMASTER◇ガイガー◇時計付◇PM1208◇放射能測定器⑥
1円~◇POLIMASTER◇ガイガー◇時計付◇PM1208◇放射能測定器⑦

今回は三つのことをご紹介したいと思います。

一つ目は、「PM1208」はすでに廃版となっているということです。だからダメだと言っているわけではありません。事実を申し上げているだけです。

二つ目は、「PM1208M」との違いです。細かくはいろいろあるのですが、最大の違いはPC接続の可否。「PM1208」はPC接続ができません。PC接続は必要ないということでしたら、「PM1208」でもいいんじゃないでしょうかね。

三つ目は、公式サイトの表記に関してです。英語サイトにはこのようなことが書かれています。

Dose Rate Accuracy:±30% (in range 0.1 - 4000 μSv/h)

[ソース]
http://www.polimaster.com/products/product_archive/pm1208/

なんだかおかしいなぁと思ったら、相手のネイティブな言語での表現を確認しましょう。CIS/RUSSIA版を見ますと、「Accuracy」の部分はこう書かれています。

Предел допускаемой относительной погрешности мощности дозы

[google英語翻訳]
Maximum permissible relative error of dose

[ソース]
http://polimaster.ru/products/product_archive/pm1208/

こちらは「relative error」=相対(指示)誤差となっています。まるで違いますね。そして、どちらが正確な表現でしょうか。もうおわかりですね?

Polimasterというしっかりとしたメーカーですらこれ。外国製の放射線測定器を使ってらっしゃる方、これから購入しようとしている方は、メーカーの国の言語の説明、マニュアルをぜひ一度読んでみて下さい。

※おそらく、CIS/RUSSIA版は線量と線量率の項目が逆なんだよなぁ。しっかりしてくれよ!w

というわけで、専門用語と翻訳という、非常に重要な問題があって、その最たる例が”dosimeter問題”なんですが、今回の誤差の件もその一例。こういう細かなところにも目を配れば、放射線測定(器)に関する理解も深まるかもだよ。単なるスペック表とバカにしちゃあいけないよ。不確かさに関してはメチャクチャ難しいから自信ないけどねっ!というお話でした。

[関連過去記事]
「エアカウンターS」を、いや、放射線測定器を使う上で知っておきたいこと~1cm線量当量と誤差
TERRA with BT(青歯テラ)における2つの誤差~安く出品されていると言いたかっただけなのに
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