アメリカ軍のガイガーカウンター「AN/PDR-27」シリーズまとめ~第五福竜丸、Eberline、バイファム?

2013年11月21日
関連ワード:コラム , Victoreen , eberline , army , 第五福竜丸 , 集めてみた ,
個人的な話で恐縮なのですが、ちょっとばかり感動しました。いろいろな意味で。1940年代、50年代の話になりますから、どれだけの方が興味を持って頂けるかわかりませんが、いつものようにながーーい記事になります。お付き合い頂ければ幸いです。

■AN、PDR、RADIAC

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私信ですから、詳しくは書けませんが、ある方からこのガイガーカウンターをお譲り頂けるという話がきました。結果、その話はお断り申し上げたのですが、このサーベイメーターセットは「AN/PDR-27J」です。メーター(本体部分)は「IM-141/PDR-27J」。

”PDR”のPはPortable、DはRadiac、RはReceivingを意味します。頭文字っぽく見えますが、それはたまたま。頭文字というわけではありません。一文字目、二文字目、三文字目、すべてAからZまであり、それぞれに意味が付されています。要は「AAA」から「ZZZ」まであるってことですね。論理的には。

1940年代、第二次世界大戦中のアメリカで、軍隊が使用する電子デバイスがいろいろ出てきて、こいつらに系統立った品番をつけようとします。その品番を見ただけで、どういうデバイスかってのがわかるようにしたかったのです。そこで”Joint Army-Navy Nomenclature System”もしくは"Joint Communications-Electronics Nomenclature System"と呼ばれるコードネームシステムを構築します。

その一端が先述の「PDR」といったネーミングに表れているのですが、”Joint Army-Navy Nomenclature System”を略して”AN System”と呼びます。すなわち、先の”AN”は”Army-Navy”の略ということです。

※暗号的意味合いもあるようです

このシリーズも含めなんですが、アメリカの放射線測定器は「RADIAC METER」と言うことがしばしばあります。”RADIAC”という字面を見ると形容詞のように思えるかもしれませんが、そうじゃありません。”Radioactivity Detection, Indication, And Computation”の略です。CANBERRAの「ULTRA RADIAC」なんてのは、まさにこれですね。放射能を検知し、表示し、計算する、てな意味合いです。

■PDR-27シリーズ

「PDR-27」シリーズの初代は「IM-57/PDR-27」(1950年~)。General Electric、Admiral、Hoffman Radio Corpといったメーカーが製造し、軍に納めていました。

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そして、本格的にシリーズ化していくその第一歩を「IM-63/PDR-27A」が踏み出します。当サイトでも幾度か登場している機種で、都立 第五福竜丸展示館に展示されているサーベイメーターでもあります。そう、1954年、ビキニ環礁で被ばくした第五福竜丸。当時、使われていたガイガーカウンターが「IM-63/PDR-27A」なのです。

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[関連過去記事]
第五福竜丸とガイガーカウンターを見てきました

このシリーズはアメリカ軍が使用していました。多くは海軍です。T(後述)は空軍なんですが、その他もほとんどは海軍でしょう。

ふたつの検出器(いずれもGM管)を搭載し、一部のモデルではメーター表示がレンジによって違う色で表示されるなど、非常に凝った作りになっています。

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シリーズの名称は「IM-●/PDR-27○」となっています。おそらく”IM”は”Indication Meter”の略でしょう。●部分が何を意味しているのかはよくわかりませんが、メーター(本体)内の基盤に刻印されているのを見たことがあります。おそらくはメーターの種類・品番の類だと思われます。上述の通り、Aは63、Jは141です。

○部分は基本的にはAからTまであります(I、M、N、Oは不明)。Aは1950年に製造されました。メーカーはKelley-Koett Instrument。他にVictoreenやAdmiralなど、そうそうたるメンバーがメーカーとして名を連ねています。

冒頭の写真のJ(「IM-141/PDR-27J」)はChatham Electronics製です。どちらかというとGM管など部品系のメーカーとして知られていました。製造開始年は不明ですが、アメリカ軍との契約は1957年に始まりました。

この記事でも参考にさせて頂いたサイトの運営者、Robert G. Schaffrath氏は、A~Hを第一世代、J~Qを第二世代、Rを第三世代、SとTを第四世代と呼んでいます。J以降(Kを除く)はプローブが2本に分かれ、両者が背中あわせの状態(piggy-backed)になっています(それ以前は一本は本体内部に格納され、もう一本は外部プローブ)。また、Tは脱着式プローブです。

なお、メーターはここに書ききれないほど、さらに細かく分かれていて、たとえば「IM-74/PDR-27C」は「IM-74A/PDR-27C」(Admiral)、「IM-74B/PDR-27C」(Astral Electronics)、「IM-74C/PDR-27C」(Admiral)といったバリアントがあります。また、「PDR-27C」の部分もマイナーチェンジして変化します。「IM-140/PDR-27CY」「IM-206/PDR-27CXX」などです。

■「AN/PDR」が生まれた背景

話が前後しますが、なぜゆえにアメリカ軍がこんな放射線測定器を開発したかと言いますと、太平洋上での核実験がきっかけでした(だからNavyなんですね)。実験を行うには放射線測定器が必要だった。そこで、次から次へと軍用の放射線測定器が開発されていきます。

gc_740.jpg その第一号はKelly-Koettの電離箱式放射線測定器「AN/PDR T-1(Model K-350)」(1948年)です。ここから、PDR-1、2、3とどんどん新製品が登場し、27に辿りつき、最終的には(?)「AN/PDR-54」まで開発されます。この「AN/PDR-54」はメーカーがEberline、同製品の別名は「PAC 3-G」。なんと、EberlineのPACシリーズです!(左画像)

[関連過去記事]
沖国大米軍ヘリ墜落事件で使われた放射線測定器は本当に「eberline E-520」なのか!?

第五福竜丸で使われた「AN/PDR-27A」からEberlineのPACシリーズへ。なんという道のりでしょう。そして、その途中に現れるのが「PDR-27」シリーズ史上、もっとも有名な「AN/PDR-27J」。

メカ然とした色合い、フォルム。堅牢な作りであるにも関わらず、細部にまでこだわりが行き届いた機能性。かと思いきや、プローブ2本をガチャンと差し込む構造には、アメリカ人らしい、いい意味での大ざっぱさも感じられます。

そんな「AN/PDR-27J」を差し上げますだなんて、ちょっと…(^^; サイズ的にもあれですし、もらったところで電子系がチンプンカンプンな私にはどうにもこうにも…。ですから、お断りさせて頂いたのですが、アメリカ軍における放射線測定器を語る上で欠かせない、いや、ネイビーラディアックと言えばこれという「AN/PDR-27J」に接するチャンスがあったというたけで、胸がいっぱいです。

お礼の意味を込めて、こんな形で「AN/PDR-27」シリーズをまとめてみました。



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ROBOT魂 [SIDE RV]バイファム
「AN/PDR-27」シリーズはモスグリーンだったり、青だったりもするんですが、「AN/PDR-27J」はグレーというか水色というか、この淡い色合いがとても素敵です。キレイです。決してエルガイムやダンバインではない。ダグラムはかなりいい線をいっていますが、ちょっと違う。私の中ではバイファムなんですよねぇ。なんとなく…って、どうでもいいかw

[参考サイト]
http://national-radiation-instrument-catalog.com/new_page_124.htm
http://www.civildefensemuseum.org/southrad/usnavy-index.html
http://www.civildefensemuseum.org/southrad/anpdr27t.html
http://www.orau.org/ptp/collection/radiac/pdr27.htm
http://www.alpharubicon.com/basicnbc/anpdr27ser.htm
http://www.prc68.com/I/PDR27.shtml
http://www.schaffrath.net/pdr-27/
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