1966年の新潟大学で使われていたサーベイメーターを推理する~磯野家とVictoreen

2013年11月18日
関連ワード:コラム , history , Victoreen , CivilDefense ,
niigata_001.jpg

ebayで見つけた写真です。「1966 Press Photo Niigata Japan Scientist Radioactive Dust Geiger Counter Nuclear」というタイトルで出品されています。1966年、中国の核実験によるフォールアウトがあり、新潟大学の屋上で科学者が放射線を測定していた。そんな風景を写した写真だそうです。

この類の写真自体は珍しいものではありません。日本でもありますし、アメリカやソ連でもよくあります。しかし、なぜかこの写真に惹かれます。なぜか目が釘付けになります。それはもちろん、このサーベイメーターのせいなんですが、いつもの通り、この機種が何なのかを探る旅を始めてみたいと思います。

今回は私が普段、どんな風にして正体を突き止めようとしているのか、その過程がちょっとおわり頂けるような感じで書いてみようかと。

【特徴】

まず、その機種の特徴を列挙します。

niigata_002.jpg

(1)丸いメーター。大きめの黒い縁。本体幅に近いサイズの直径
(2)本体を開け閉めするための留金
(3)上部カバーと下部本体の間に黒い縁
(4)メーター下部からほぼ垂直に上がる黒いハンドル
(5)プローブをセットしておくためのアタッチメント
(6)スピーカーらしき盛り上がり
(7)カールコード
(8)1960年代にはあり得ないほどのコンパクトさ。本体の高さ(厚み)もない

【推測】

次に、いま現在の知識でもって、ある程度の推測をします。

・Eberline
niigata_003.jpg ラウンド型のメーター、コンパクトさはEberline製を匂わせます。しかし、メーター上空に食い込むように湾曲するEberline特有のカーブがこのハンドルにはありません。また、Eberlineであれば本体右側面にスピーカーをつけるのが通常。ちょっと違うような…。

・Victoreenの「CD V-700 Model2」
niigata_004.jpg 「CD V-700 Model2」にとてもよく似ています。というか、このようなハンドルはModel1、Model2のみ。ただ、ここまでコンパクトではないような…。また、初代だとすると、ハンドルとアタッチメントがもう少し大きいです。さらに、「CD V-700」のスピーカーはもっとデカい。

・Nuclear Measurements「Model GS-3」
niigata_005.jpg niigata_006.jpg 聞きなれないかもしれませんが、「CD V-700 Model1」に相当します。「CD V-700 Model2」と見た目はほぼ同じです。非常によく似ています。が、なんとなく違うような気も…。

【サイト巡り】

今回のようなテーマであれば、よく見るのは以下のサイトです。

Oak Ridge Associated Universities(ORAU):Survey Instruments
National Radiation Instrument Catalog
Civil Defense Museum

どれも素晴らしいサイトで、すさまじい情報量なのですが、見づらいことこの上ない!w 仕方ないので片っ端から見ていきます。

【結論】

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Victoreen「Model 389 Thyac」(1950)

正直、よくわかりません。わからないから、これが正解!w Victoreenの「Model 389 Thyac」(1950年モデル)。全長約24cmというサイズ感、黒縁の丸型メーター、カールコード、パッキンのような黒い縁などは、冒頭の写真のサーベイメーターにウリふたつです。

※元写真は比率がちょっと変ですね。実際はもっと縦長なので、少し比率を修正した画像を掲載しています。

1966年ということは、16年前の機種ということになりますが、当時はそう頻繁にニューモデルが入って来ていたわけでもないでしょうし、それくらいの”型落ち”は普通のことだったと思われます。

【総評】

1950年にリリースされたVictoreenの「Model 389」。愛称(ほぼ製品名でもある)は”Thyac"。数々の名機を世に送り出したVictoreenですが、その中でも最大のヒットがThyacです。アメリカにおけるハンドヘルド・サーベイメーターの礎(いしずえ)であり、エポック・メイキングな機種と言えるでしょう。

Victoreenはその後、「Thyac II Model 646」「Thyac III Model 389C」「Thyac IV Model 290」「Thyac Ⅴ Model 190」と、さまざまなモデルをリリースしていくわけですが、当初のThyacシリーズは「CD V-700」シリーズにとても似ています。というか、Thyacシリーズを黄色く塗れば「CD V-700」になりますw いや、ほんと。民生版がThyacシリーズ、政府調達用モデルが「CD V-700」というわけです(もちろん細かいところで違いはあります)。また、「Thyac III Model 389C」は軍用に開発されたものでした。

Nuclear Measurementsの「CD V-700」を共同開発し、そのうち独自の「CD V-700」を開発して政府に納めるようになったVictoreen。コンシューマー、政府、軍と、各方面へ自社製品を普及させていきます。1950年代、60年代はまさにVictoreenの時代でした。

こうして培われた技術、知識、経験は現在、FLUKEに引き継がれています。当サイトにも何度か登場している「Model 190」はFLUKEが今でも販売しています。

ややこしいかもしれないので、今回は磯野家にたとえてみましょう。

「Model 389 Thyac」が波平だったとしたら、「CD V-700」は波平の双子の兄・海平。サザエが「450B / 450P」でタラちゃんが「451B / 451P」。「190F」はカツオ、「190N」はワカメ。そして、これまたVictoreenの名機”Cutie Pie”こと「Model 740」はマスオあたりでしょうか。こうなるとなんと、「ASM-990」はノリスケ!

なお、Victoreen・磯野家のお隣さんは、Nuclear Measurements・伊佐坂家。1990年代半ば、伊佐坂家の長女・浮江をストーキングしていた三河屋の三郎が、フラれた腹いせに事件を起こし裁判沙汰となり…てな話もあるのですが、蛇足に過ぎるので、気になる方はググってみて下さい。当たり前ですが「浮江 三河屋 裁判」でググってもダメですよ! たとえですからねw

私たちは現在、タラちゃんとノリスケしか出てこないアニメを見ているようなものでして、それはそれで逆に面白いのかもしれませんがw、母親の「450B / 450P」、叔父・叔母である「Model 190」、その父親であり、かつ、タラちゃんの祖父「Model 389 Thyac」を知れば、アニメはさらに奥行きを増します。

サザエやカツオ、タラちゃんは波平がいてこそです。波平がいなければ生まれてきませんでした。1966年の新潟大学。なんてことはない写真に見えるかもしれませんが、ここにすべての源であり、時代を切り開いていった波平がさりげなく写り込んでいるのです。なんだかすごいなぁと思うのは…私だけですかね(^^;

niigata_008.jpg

[参照サイト・画像転載元]
http://national-radiation-instrument-catalog.com/new_page_26.htm
http://national-radiation-instrument-catalog.com/new_page_43.htm
https://www.orau.org/ptp/collection/surveymeters/nucmeasgs3.htm
https://www.orau.org/ptp/collection/surveymeters/Victoreenthyac.htm
http://www.civildefensemuseum.org/cdmuseum2/radkits/cdv700.html
http://www.civildefensemuseum.org/southrad/victoreen-thyac3.html
http://www.sekaimon.com/i171080567579
http://www.machine--tools.com/By-Location-/Pennsylvania-/Victoreen-thyac-v-radiation-geiger-survey-meter-probe.ASPX

[関連過去記事]
巨人・Victoreenの残した軌跡
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