2011/05/25

はじめてのInspector ~バージョンの違い、使い方、メーカーの信頼性とは

関連ワード:コラム , Inspector ,
2011.12.14追記:2011.05.25に書いた記事なのですが、世間の状況も私の状況も一変してしまったので、より正確に、より詳しく、よりわかりやすく内容を全面改定しました。基本的な趣旨は改訂前後でも同様です。また、以下のような記事もあります。ご参照下さい。

[関連過去記事]
Inspectorは30秒平均じゃありません
「Inspector」のタイマーカウント/PLUSとAlertのマニュアルの違い
「Inspector」の相場が10万円ほど6~8万円ほどになりました。改訂前の記事では「20万円を切った」なんて表現をしています。安くなってきましたね。タイミングがよければ即納というのもあるようです。

さて、「Inspector」がいい、なんてセリフをよく耳にしますが、いったい何がいいのでしょうか。

α線も測れる。0.01~1000μSv/hと測定範囲が広い。直径45mmという大口径のマイカ窓付GM管検出器。PCとの連携、2000時間以上の使用可能時間。cps、cpmも表示できる→ベクレル換算も比較的容易。どれも確かにすばらしいです。

けど、ちょっと違った視点から「Inspector」のよさを解説してみたいと思います。以下は「Inspector PLUS」のメーカーであるS.E.International社の同機に関する説明です。

Detects Gamma down to 10 keV through the end window.
[ソース]S.E.international:Inspector PLUS

たったこれだけの説明文でも、なんと奥深いことかw

■「Inspector」と「Inspector PLUS(Inspector+)」の違い

SE international社製「Inspector」は、上記URLを見てわかる通り、正確には「Inspector PLUS(Inspector+)」です。プローブ付きの「Inspector EXP」は「Inspector PLUS EXE」。ただ、公式サイトでも「PLUS」は省略して製品名を表記しています。ちなみに「PLUS」がついていないものは、前のモデル。両者の違いはほとんどありません。ディスプレイ、ボタンに若干違いがありますが、性能面ではほぼ同じです。当サイトにおいても「Inspector」は基本的に「Inspector PLUS(Inspector+)」を指すと思って下さい。

inspector_a01.jpg gc_262.jpg

※写真/上部にボタンが3つあると「PLUS」、真ん中に「SET」がなくボタンがふたつだと前のモデル

2012.2.15追記:前バージョンの「Inspector」には数値の下にアナログ風のインディケーターもついていました。

■「down to」でわかるメーカーの姿勢

どちらかというと「英語」の話なのですが、実はここがとても重要だったりします。普通、よく見かけるのは「10 keV~」といった表記ですが、「Inspector」の公式では「down to 10 keV」となっています。意味は同じですが、ニュアンス、メーカーの考え方の違いが見てとれます。

前者(10 keV~)は、

「なにもないなぁ。…おっと、検出した」

こういうイメージ。最初は何もなくて、10 keVになると検出するというニュアンスです。

後者(down to 10 keV)は、

「まだ検出できる。徐々に弱まって…まだ大丈夫。まだいける。っと、検出しなくなった」

こんな感じ。10 keVまでは検出できるというニュアンスです。

面白くないですか? 見方が逆だというだけじゃなくて、放射線の捉え方が根本的に違うんですよね。

放射線測定器で検出できないからといって、そこに放射線がないわけじゃない。もしかしたらエネルギーが微弱すぎて検出できていないだけかもしれない。放射線測定器が反応しないからといって安心はしないで下さいね。「down to」にはそんなニュアンスが含まれているんです。

一方、「10 keV~」だと、突然、放射線が現れるといった感じがします。確かに、実際の使用においては、こちらのほうが感覚的には近いでしょう。「わっ! 出た!」とか。でも、もしかしたらそこに放射線があるかもしれない。そしてご存じの通り、放射線は積算ですから、仮に放射線測定器で何も検出しなくても、どっぷり放射線に浸かっているかもしれないのです(実際、私たちの普通の生活はそうですよね。放射線測定器では検出できない放射線があふれかえってます)。

そんな微弱な放射線はもちろん健康を害するようなものじゃないでしょう。だけど、いろいろな”可能性”があります。安心はするな。測れてないだけなんだぞ。注意を怠るな。「down to」=「Inspector」はそんなことを語りかけてくれる機械なんです。

「そんな細かいことどうでもいいじゃん」

そうでしょうか。こうしたことにまで配慮をするメーカーだからこそ信頼できるというものです。「down to」というたったこれだけの言葉ですが、ここにこそメーカーの姿勢がよく表れていると思います。

当サイトで何度も何度も言っています。「性能を見るな」と。それはこういうことなんです。α線が測れようが、0.01μSv/hから測れようが、感度が10 keV以上だろうが、そんなことはどうでもいいんです。見るべきは信頼性です。「down to」ここにこそ注目すべきなんです。

■「through the end window」は窓越し??

最後に、少し難しい話を。一部「窓越しに」なんて訳してますが、いやいやいやw 窓にこれをかざして計測する? じゃあ、屋外だともっとよく検出してくれる? そんなことを言ってるわけじゃありません。正確には「through the thin mica window」です。

gc_147.jpg「mica window」を日本語に訳すと「雲母(うんも)窓」。GM管に使われている「マイカ窓」は、窓というよりも膜ですね。とても薄く、とても脆い。だけど、紙一枚をも透過できないα線を通してくれるという特徴があります。ですから、α線を測定できる放射線測定器にはマイカ窓があるというわけです。

[関連過去記事]
2種類のLND7317 ~マイカなの? マイラーなの? なんなのっ!

さて、引用文をもう一度見てみましょう。

Detects Gamma down to 10 keV through the end window.

なぜわざわざ「through the end window」と言っているんでしょう。こんな説明いりますか? 答えは「とても重要だから言ってます」。

まず、マイカ窓を通じてγ線を捉えているということは、α線、β線も含まれているかもしれませんよね。そのことに対する注意喚起が第一。

次に、そもそもγ線はマイカ窓を通じて補足するものではなく、基本的にはGM管の金属などに反応したものを捉えます。正確に言うと、GM管周囲の鉛、銅、アルミ、ステンレスといった金属(サイドウォール)にγ線がぶつかります。すると、金属から電子(β線)がはじき出されます。これを捉えてγ線を検出したとし、γ線としてSv表示させます。

そんなγ線をマイカ窓を通じて捉えたらどうなるか。サイドウォールからだと60 keV~しか補足できませんが、マイカ窓だと10 keVという微弱なエネルギーのγ線も捉えることができます。いえ、「できてしまう」が正解です。その結果、予期せぬ数値をはじき出す可能性があります。

gc_142.jpg これは「Inspector PLUS」のエネルギーレスポンスです。上記公式サイトに掲載されています。300 keVあたりを1とした場合、マイカ窓を通じてやってきた10 keVのγ線は約2倍のレスポンスを示します。ザックリいうと2倍の数値を表示するということです。

つまり、こういうことなんです。確かに10 keVのγ線にも反応します。そういう意味では高感度です。だけど、場合によっては高めの数値を示します。80 keVあたりだったら最大で5倍も大きく数値をはじき出してしまうかもしれません。ですからご注意を。「through the end window」はこういうことを言っているわけです。

以上からわかることは、パンケーキ型マイカ窓付GM管を搭載した「Inspector」などの機種は、γ線の測定=Sv測定にはそれほど向かない。cpm、cpsで表面汚染の検出・測定に用いるのが最適だということですね。

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