アルファ通信、モニタリングポスト/リアルタイム線量計、DoseRAE 2 ~放射線測定器の調達は難しい

2013年03月11日
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1.「フライデー」に掲載されたアルファ通信の件

一応、読みました。アルファ通信の言っていることは確かにおかしい部分がある。ただ、文科省とのやり取りは水かけ論。そもそも、記事自体が完全に知識のない人が書いている。つまり、結論は「この記事だけでは、よくわからない」です。レベルの低いメーカーの言、レベルの低い記者の記事。ここから何を読み取れとw

事実関係を知るには、裁判の行方を見守るしかありません(裁判が事実を100%解明してくれるとは思ってません)。

[関連過去記事]
アルファ通信のリアルタイム線量測定システム契約破棄に関する提訴メモ

2.アルファ通信のモニタリングポストリアルタイム線量計は「DoseRAE 2」?

※2012.03.13追記:新たな情報をお寄せ頂いたので、以下は記事執筆時からは改訂されたものです。私にも誤解がありました。失礼しました。いずれにせよ、疑問は残るのですが。

このような情報がありました。実際に、同社からそう聞いたという方もいらっしゃいます。ただ、この点はまだよくわかりません。以下は、もし「DoseRAE 2」だったとしたら、という仮定で書いているということをご了承ください。

まず、モニタリングポストとリアルタイム線量計は別物のようです(情報ありがとうございました!)。

[ソース]
モニタリングポストの測定値とサーベイメータなどの測定値の違いについて(PDF)

この資料によると、

モニタリングポスト:空気吸収線量率(μGv/h)
リアルタイム線量計:1cm線量当量率(μSv/h)

とのことです。

1cm線量当量ねぇ…。放射線測定(器)という視点で見れば、こんな言い方をするのは日本だけです。全世界の約370機種の放射線測定器を見てきた私が言うのだから間違いないw どういうことかと言いますと、1cm線量当量と言っても、実際には3種類あります。

・周辺線量当量
・方向性線量当量
・個人線量当量

ですから、1cm線量当量と言うだけでは、実質的に何も意味しません(実測、製品という視点でのことです)。ちなみに、海外の放射線測定器メーカーは必ず、H(10)、Hp(10)と表記します(海外の製品規格においても同様です)。1cm線量当量とだけ表記しているのを私は一度たりとも見たことがありません(論文系ではありますけどね)。

日本においては法令で1cm線量当量という言葉が頻出します。ただ、「時と場合によって、その意味するところが違う」みたいな但し書きを添えます。たとえば…

(13)放射線測定器(労働安全衛生規則様式第27号、様式第28号、電離則第3条、第8条、第19条、第45条、第47条、第52条の3、第54条、第55条、第60条関係)

(前略)
ただし、個人の被ばく線量を測定するための放射線測定器と、作業環境中の線量を測定するための放射線測定器とでは、上記(8)等にあるとおり、測定データから1センチメートル線量当量に換算するための換算係数が異なっているので、測定の目的に応じて校正された放射線測定器を用い、又は換算を行う必要がある。

[ソース]
労働安全衛生規則及び電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令の施行等について

つまり、実際に放射線測定器を利用する場面においては、その目的に応じて、どの1cm線量当量を測定するかを明確にし、これに適した機器を選択・利用する必要があります。

さて、リアルタイム線量計ですが、ここで言う「1cm線量当量」って何ですかね? 上記法令が直ちに適応されるシーンではないかもしれませんが、具体的な製品(白い円筒型の例のアレ)が想定されていますから、1cm線量当量という言い方では不十分だと私は思いますけど…。

ただ、直感的には周辺線量当量が適切だろうとも思います。その理由はこうです。

・その”場”の放射線量率だから
・被ばく量ではなく、リアルタイムに線量率を把握するためのものだから
・モニタリングポストはGy。リアルタイム線量計のSvと比較ようとした際(モニタリングポストのGyに×1してHPなどではSv表示しています)、周辺線量当量の方が個人線量当量に比べて相対的に容易。個人線量当量の場合はあれこれと細工が必要(話がちょっとややこしいので後述)

いずれにせよ、リアルタイム線量計を規定する製品規格はありません(モニタリングポストはありますけどね)。とするなら、”リアルタイム線量計”なるものを製品化させ、あるいは自治体や省庁がこれを納入させようとするならば、相当に詳細な仕様を提示する必要が出てくるはずです。さて、どのような仕様書だったのか…。

さて、「DoseRAE 2」とリアルタイム線量計に話を戻します。

文科省の求めた仕様が定かではないので、もし仮に「1cm線量当量」とだけ仕様に記していたならば、「DoseRAE 2」でも利用できることになります。ただ、「DoseRAE 2」をそのまま使うとなると、アルファ通信のリアルタイム線量計は1cm線量当量の個人線量当量を表示していることになります。かなーり違和感を感じます。

確かに、周辺線量当量であろうと個人線量当量であろうと、1cm線量当量を実効線量として捉える事は実務上ありえます。ですが、あのような形で表示される数値が、実は個人線量当量として測定された数値でしたチャンチャンというのは、ちょーっとどうなのかと。まあ、あの白い筺体の中にスラブファントムがありゃ話は別ですが(もし個人線量当量を測定・表示するならば、そうするかファントム係数を乗じる等の細工が必要です)。ただ、映像を見る限りそんなものはありませんでした。

とするなら、「DoseRAE 2」になんらかの細工を施し、周辺線量当量をある意味で逆算的に表示させるようにしていたということになります。だとしても、かなーり違和感を感じます。かなーりアクロバティックです。

ちなみに、個人線量計の測定値(個人線量当量)を周辺線量当量へと換算するのは、そりゃもう学者たちが喧々諤々の議論をするほど、非常に難しいことだと言い添えておきます。

----------------------------------
[ここまでをまとめ]

DoseRAE 2はそもそも個人線量計。

もし、そのままだとするなら…。

・スラブファントムを用意して個人線量当量を表示
→映像を見る限り、これはありえない

・ファントム係数やらなんやらを乗して個人線量当量を表示
→これはありえるけど、リアルタイム線量計の表示する数値が個人線量当量率というのは違和感ありまくり

もし、なんらかの細工を施すのであれば…。

・どんな計算か知りませんが、一度、空気吸収線量率をはじき出し、最終的にSv表示
・どんな計算か知りませんが、周辺線量当量をはじき出し、Sv表示
→いずれにせよ、違和感ありまくり。トリッキーすぎ

まとめ以上
----------------------------------

文科省が求めていた仕様がわかりません。ですから、アルファ通信がこさえたモニタリングポストリアルタイム線量計は、もしかしたらその仕様に適っていたかもしれない。ただし、そうなるにはかなりアクロバティックな作業を要するか(換算とか)、ないしは、ちょっと違和感のある表示(個人線量当量)だということです。

こう見てくると、もしかしたら「アルファ通信だめじゃん!」とお思いになるかもしれませんが、私はちょっと意見を異にします。

一般競争入札ですから、基本的には誰が何を入札しようとしてもいいわけです。アルファ通信が「DoseRAE 2」で参加するのも自由。ただ、当然、事前にチェックをする必要はあります。公告側が。入札されようとしているものが適切なものかどうか、文科省にはチェックする義務があります。

さて、仮に検出器部分が「DoseRAE 2」だったとしたら、文科省はこれをスルーしたわけですよね? そして入札に参加させた。ここが問題です。

・「DoseRAE 2」と知っていた?
・知っていたけど、それでリアルタイム線量計が作れると思っていた?
・だとしたら、文科省は1cm線量当量をなんだと思ってる!?
・文科省はリアルタイム線量計をなんだと思ってる!?
・あるいは文科省は「DoseRAE 2」が個人線量計だと知らなかった?
・そもそもどんな仕様を提示していた? 周辺線量当量測定器でも個人線量当量測定器でも入札可能な仕様ってどうなん?

さらにこれも想像ですが、途中で文科省は明らかに契約破棄へ持って行こうとしていたように思えます。どこからかのリークで、ようやく気付いたって感満載です。想像ですけどね。

ひとつ余談を。この話、何かに似てますね。「JB4020」という中国製の個人線量計が、「ES-GC-01」などのわけのわからないOEM(?)として出回り、あるいは、よくわからない改造が加えられ(?)、浪江町では「精密博士」なるサーベイメーター(?)として調達され…。

繰り返しますが、この件に関しては確かなソースがあるわけではありません。もし仮にそうだったら、ということです。

[関連過去記事]
浪江町のガイガーカウンター その10 ~TERRA-N誕生の背景に隠された”真相”
JB4020が個人線量計 / Hp(10) と判明。ということは、精密博士、ES-GC01は…
空間線量(率)とは~誰も教えてくれない空間線量(率)をわかりやすく説明する最新版

3.アルファ通信の既存の製品「安心生活」

一般的なモニタリングポストやモニタリングカーによる放射線量の測定方法は、ほとんどが地上から約2m以上の高さで測定しています。この測定方法ではヨウ素の検出はできても、比重が重く地上に堆積しているセシウムの検出は大変困難なため、測定値は実際に被曝した放射線量より少ない数値になると思われます。

米国RSSIの認証を取得した自社製の放射線測定器で、放射線の影響を最も強く受ける子供に合わせて、地上から50㎝から1mの高さで測定しています。この測定方法だとヨウ素はもちろん、セシウムも検出可能なため、測定値は実際に被曝した放射線量に最も近い数値になります。

測 定 線 種 α線 β線 γ線 X線 を任意に選択
測 定 範 囲 0.01~99999マイクロシーベルト/時間

[ソース]
アルファ通信:放射線量測定公開システム 安心生活(PDF)

この「安心生活」と文科省に納入しようとしていたモニタリングポストリアルタイム線量計は別物でしょう。ただ、このようなことを言っているメーカーが作る製品(放射線測定器)を私は使いたくありません。

なお、原発関連施設付近では、αどころかエネルギースペクトルも取得可能な、それこそまさに”高性能”なモニタリングポストが設置されていることもあります。私が知っているのは富士電機製です。NaIシンチと電離箱のデュアルだったかな。ですから、モニタリングポスト(あるいはリアルタイム線量計)がαの検出・測定や核種同定ができたとしても、そのこと自体は不思議ではありません。もちろん、各所に設置するモニタリングポスト(あるいはリアルタイム線量計)に、そんな機能は不必要ですが。

4.モニタリングポストの方向特性

ちょっと調べていましたら、面白い事実に気付きました。

JISZ4325 環境γ線連続モニタ

4 性能
4.3 方向特性
方向特性は、6.2.4によって試験したとき、表2の規定に適合しなければならない。ただし、構造的に水平方向の特性が必要な場合には、水平方向360°にわたって試験をする。このときの試験方法及び許容範囲は、受け渡し当事者間の協定による。

表2-方向特性
角度範囲 許容範囲
-90°以上 +90°以下 ±20%

6.2 試験
6.2.4 方向特性試験
方向特性試験は、検出器と宣言との距離を一定に保ち、検出器の実行中心から鉛直上方向を0°とし、0°方向と照射方向とを含む平面について0°、±30°、±60°及び±90°方向からγ線を照射し、指示値を読み取る。(以下略

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なにが面白いって、これによれば、地表からの方向特性は試験が必要ない=地表からの放射線の入射は加味しなくていいということです。

こういうと、「そんな規格だから低く数値が出るんだ!」みたいに言いだす人もいるかもしれませんが、まあその前に、そもそもモニタリングポストってなんじゃらほい、ってことから調べてみて下さい。

ちなみに、製品はすべからくJISに適ってなければいけないとは思っていませんし、JISの内容にも「?」と思う箇所が多々あります。ですが、実質的にはJISしか製品規格がありません。特に公的機関が調達をかける際は、JISから大きく外れたものは避けるべきだとも思ってます。また、文科省の求めていた仕様がわかりませんので、新旧モニタリングポストの方向特性がどうだったか(どうなっているか)もわかりません。

5.放射線測定器と調達

ところで、話は少し変わりまして、放射線測定器と調達についてです。自治体や省庁が放射線測定器を調達するということには、かなり難しい問題が横たわっていると私は思っています。

家庭や町内会で放射線測定器を買うのとは違い、それなりにしっかりとした信頼性が担保されていないと調達しづらい。しかし、これを厳格にやりすぎると、結局、実績のある日立アロカメディカルと富士電機に偏ってしまいます。

こちらは、ある方からお寄せ頂いた情報です。

今般(※2012年12月)、原子力施設等防災対策等交付金とうものが政府から出ており、各、道府県で入札が行われてります。

添付の資料をご覧いただきたいのですが、相当な数量の線量計が配られるのですが、ほぼ入札の仕様が日立アロカ製となっております。

主に入札の仕様は「ポケット線量計」というJISにも無いあいまいなタイトルでありながら、仕様設計書には、日立アロカ製、PDM-222Vと書かれており、「同等品を認める」と仕様に書いてありながら、事実上は、それしかないという状況でアロカの寡占状態となっております。

※諸事情を鑑み、資料自体は伏せさせて頂きました

添付資料には「アロカ」の文字がずらり。これがすべてではなく、全体から見た比率がわからないので、確定的なことは言えませんが、ただ、現実を見てみるならば、確かにアロカ一強であることは事実でしょう(ないしは、プラス富士電機)。

入札ですから、税金です。できるだけ競争があったほうがのぞましい。だけど、実質的にはアロカ(もしくは富士電機)で決まり、と。

他のメーカーからすれば、「ひどい」「俺たちにも参入させてくれ」と思うところでしょう。私もその後押しをしたいと思わなくないのですが、ただ、一概にそうとも言えず…。

調達する側としては、単に安けりゃいいとは思っていません。また、仕様を満たしていればそれでいいとも思ってないでしょう。一度、採用したからには、長期間に渡って使うかもしれない。その間、校正も必要でしょう。企業として体力があり、サポートもしっかりしてくれると確信できた方がいいと思うかもしれません。あるいは、ペーパー上は仕様を満たしているかもしれないけど、実測においてどれだけの実績があるんだ? どれほどの信頼性をもって使われてるんだ? そういうことも気になるでしょう。

となると、どうしても入札のハードルが上がってしまうというのも、わからなくはない。変な業者が入ってきても面倒ですしねぇ。特に役人はことなかれ主義ですし。

税金の使われ方にはシビアじゃなきゃいけない。業界の発展も必要。信頼性も重要。なるべくフェアでなければいけない…。

ひじょーーーーに難しいところだなぁというのが率直な感想です。

さて、このアルファ通信の件ですが、もし、すべてを翻し(アロカ、NEC、富士電機という現状も)、最初からやり直せるとしたら、どうするのが正解だったですかね? 最初から随契にしておけばよかった? 文科省がちゃんとチェックをしていれば事足りた? 要求していた仕様に問題があった? やっぱ、公判を見守っていくしかないですね。

※もろもろ情報ありがとうございましたm(_ _)m

[画像転載元]
にゃみさんの写真ページ
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コメント一覧

995. 2013.11.12
これに関しては意義ありですね。
文部科学省の発注であるかぎり、文部科学省の公示された規格に適合する必要があります。
http://www.kankyo-hoshano.go.jp/series/pdf_series_index.html
アルファ通信は明らかに適合していません。

又、公示された納期も守らない以上、契約不履行で解除されてもしかたありません。
現在トレーサビリテイとして放射線計測協会の校正証明書を出すのが普通ですがアルファ通信社は適合していません。
自社が正しいといっても、第三者の公正なトレーサビリテイもなくJIS適応もしておらず、なにを正しいというのか?
非常に不思議です。
このような状況にもかかわらず、マスコミが騒ぐのは不思議でありません。
まず、放射線協会の校正証明書、JIS適合、IAEA適合、文部科学省の適合が必要です。計測する装置である以上、基準を適合する必要があります。富士はアロカの営業の戦略に阻まれても、乗り越える努力があります(営業が馬鹿ですが)。でも規格、法律を守らないアルファをかばうものはいかがなものかと思います。
1120. 2014.04.29
> アルファ通信は明らかに適合していません。
> 又、公示された納期も守らない以上、契約不履行で解除されてもしかたありません。

そうであればそうですね。
裁判で事実関係が明らかになることを期待します。

> 規格、法律を守らないアルファをかばうものはいかがなものかと思います

この記事のどの部分がアルファ通信をかばっているのかをご指摘下さい。まったくかばっていませんが(^^;

納入しようとしていた製品に関しては、アルファ通信の製品はどう考えてもいかんだろうと思ってますしそう書いています。

ただ、入札という手続きにおいては、文科省にも不備があった。これに関しては文科省を非難してます。

あとひとつ、契約上の問題もありますが、これは裁判で事実関係がわからないと何とも言えない部分があると思います。

わたし、アルファ通信をかばってます?(^^;

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