2012/10/30

Thermo Fisher Scientificの歴史を見てみると「RadEye」の背後に「FH-40H」の亡霊がうっすらと

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TFSの歴史~買収・合併そして細分化

今回のテーマは「RadEye」シリーズでお馴染みのThermo Fisher Scientific(以下、TFS)です。

放射線測定器 RadEye PRD-S

まずはTFSの歴史を見ていきたいと思うのですが、とてつもなく複雑で、とてつもなく奥深い。正直、把握しきれていません。なぜそうなのかと言うと、後述しますが、無数の企業を買収し、それだけでなく、自身も伸びそうな部門を次から次へと”スピンオフ”させるからです。ややこしいったらありゃしない。

年表としてまとめるのが不可能なほどなので、ザックリとした図にしてみました。ザックリしすぎなくらいザックリしてますので、その点だけはご了承ください。ちなみに、当たり前ですが放射線測定器という観点からまとめています。

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Frieseke & Hoepfner(以下、FH)もEberline Instrumentsも図中の設立年より以前に、その前身が存在していました。特に面白いのが前者。第一次世界大戦、第二次世界大戦と軍需産業で潤い、敗戦後しばらくはアメリカ軍に利用され、1948年、民間復帰します。

その後もあれこれ大変で、FAGの資本を導入しつつやり繰りしていくのですが、1980年、FAGの完全傘下となります。その後、Thermo Electronの子会社、Thermo Instrument Systemsに買収されるわけですが、逮捕者が出て会社の運営が危うくなった結果の買収でした。波乱万丈の企業です。

2003年のSIEMENSからの線は、個人線量計のみの買収を表しています。直近の記事にある通り、「EPD」シリーズはSIEMENS製品でしたが、現在はTFS社製です。

図でわかる通り、放射線測定器関連事業はThermo Electronおよびその子会社が担っていました(担っています)。ですから、同社製放射線測定器の多くは、TFSではなくThermo Scientific製となっています。

FH、Eberlineなど、さまざまな企業を買収し傘下に収めてきましたが、その旧メーカー名はそのまま子会社の名前として、あるいはブランド名としても残っていきます。その最たる例がFHシリーズです。今なお活躍しているサーベイメーター「FH40」の「FH」とは、Frieseke & Hoepfnerの頭文字に由来します。

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Thermo ESM ガイガーカウンターセット「FH40G-L」

余談ですが、これだけを見ると、すべてがドイツの話なんですが、TFSの本社はアメリカにあります。製造部門はドイツにあったりするので、だから発送元がドイツだったりするんですね。ただ、当サイトでは本社の所在地を製造国としています。ですから、RadEyeシリーズもアメリカ製となっています。しかし、実情はこんな具合です。

同じようなことがMirion Technologies、SAPHYMOなどにも言えます。MTもアメリカ本社ですが、放射線測定器の開発を担っている中心的存在、RADOSはフィンランド。SAPHYMOはフランス本社ですが、「MiniTrace」シリーズを実際に製造しているのはドイツです。当サイトでは前者はアメリカ、後者はフランスとしています。

余談ではあるのですが、非常に面白いことでもありまして、時代によっては放射線測定器の開発技術は、ある意味で軍事機密でもあったわけです。ですから、国外に出てはいけない知識・技術だったはず。にもかかわらず、現在ではこのように、アメリカ、フランス、ドイツ、フィンランドと、あれがあっちに、これがこっちに、国など関係なく動き回っています。

単に放射線測定器メーカーの歴史を追って見てみるだけでも、原子力産業と国の関係みたいなものが透けて見えて興味深いですね。おっと、これこそ余談w

tfschart_003.jpg 追記:もう少し広範な図も作りました。以下の記事もあわせてどうぞ。

「RadEye」が生まれ、Thermo Fisher Scientificが誕生したこの流れはまさに”TFSビッグバン”

「RadEye」に感じる「FH-40H」という亡霊の気配

さて、TFSのコンシューマー機としての主力製品はもちろん「RadEye」シリーズです。こいつがどのように開発され世に出てきたのかがよくわかりません。わかりませんが、Thermo Electronのロゴを有した「RadEye」がありますから、少なくとも2006年以前には存在していたと思われます。そして、その設計思想みたいなものをたどると、やはりFHにぶつかります。

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[画像転載元]Army Radio Sales

当サイトでも過去に紹介したFrieseke & Hoepfnerの「FH-40H」。50年代あたりに生まれたガイガーカウンターなのですが、当時としては画期的なガイガーカウンターだと思います。まずこのサイズ。バカでかい本体を肩からさげて、もう一方の手でプローブを持ってというのが当時のサーベイメーターです。しかし、「FH-40H」は片手で楽に持てるサイズ。スタンドアロンでも使えますから、片手で使えます。こんなコンパクトなサーベイメーターは珍しいです。

さらに、セット内容がすごい。単体でも使えるのですが、「FH-40H」には4タイプ(?)のGM管およびプローブが用意されています。これらがボックスに2段重ねでビシっと揃っています。とんでもないセットです。

[関連過去記事]
”内”も”外”も一緒くた&組み立てるという発想はドイツっぽい?w~Frieseke & Höpfner「FH-40H / T」

このあたりの思想はドイツ系メーカーに脈々と受け継がれていきます。Automation und Messtechnik(automess)もそのうちのひとつです。デジタルとアナログの差はあれ、見た目、プローブを取り替えるという構成、「6150AD」はまるで「FH-40H」の生き写しです。

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[画像転載元]pripyat.de

あるいはEMS、EberlineというThermo傘下メーカー・ブランド、そしてFHの元親会社であるFAGがリリースしている(していた)「FH 40 F」。「6150AD」とも似ていますが、両者に関係があるのか、ないのかは不明です。いずれにせよ、「FH-40H」に見た目も設計も似ています。

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[参考サイト]Форум сайта г. Припять.
EMS:FH 40 F

不思議な光景です。「FH-40H」の生き写しに群がる、「FH-40H」という亡霊に取り憑かれた「FH-40H」関係者たち。それほどにまで「FH-40H」には魅力があったのでしょう。そしてTFSは「FH 40 G」「FH 41 P」など、新たな機種まで開発します(「FH 41 P」はまたちょっと違う路線で、ロシア系の影響も見て取れます)。

そして登場するのが「RadEye」です。もちろん想像なのですが、「RadEye」にも「FH-40H」のかすかな気配を感じさせます。「Inspector」と比べてみて下さい。「RadEye B20」は同じパンケーキなのに、尋常ならざるコンパクトさです。数えるのも嫌になるほど細かく別れたモデル群は、「FH-40H」のセットを彷彿とさせ、「RadEye」自体にも豊富なプローブが用意されています。

そもそも、この発想自体が、Thermo Fisher Scientificという企業のあり方にも似ています。いいものをどんどん吸収し、そして部門を細かく分け独立させる。こうした企業風土がその製品に反映されていても不思議はありません。

最後にふたつの資料を紹介したいと思います。

ひとつめはTFSの子会社一覧です。

A complete list of all our legal entities(PDF)

次は「RadEye」シリーズの一覧です。

RadEye Selection Guide(PDF)

眩暈がします。

眩暈はしますが、整然と並んでいます。眩暈はしますが、わかりやすいです。「FH-40H」の木箱のように。

確かにTFSの歴史は複雑でした。よくわかりませんw だけど、なぜかデタラメには思えないんです。上記ふたつの資料もそう、コンパクトにギュッと凝縮され、細かな機能が詰まっているサーベイメーター「RadEye」もそう、なんかわかるんですよ。なぜこうなってるのかが。

私が部外者で、ネットという限られた資料をもとにしかしてないので、不確かで曖昧な内容になっていますが、TFSの幹部くらいになれば、整然とした企業の系譜図を描けるはず。きっとすごくキレイでわかりやすい図です。想像できますもん。

やっぱ似てるんだろうなぁ。日本人とドイツ人って。そして「RadEye」に萌えてしまう理由も自分なりにちょっとわかったようなわからないようなw

[参考サイト]
Thermo Fisher Scientific
http://www.thermofisher.co.jp/about/history.html
http://www.esm-online.de/sm/company/index.html
http://www.karriere-thermofisher.com/images_standorte/erlangen.php
http://www.ihk-nuernberg.de/de/IHK-Magazin-WiM/WiM-Archiv/WIM-Daten/2009-01/Unternehmen-und-Personen/Mit-Messgeraeten-Spitze-im-Weltmarkt.jsp
http://www.fundinguniverse.com/company-histories/thermo-instrument-systems-inc-history/
http://www.fundinguniverse.com/company-histories/thermo-bioanalysis-corp-history/

Frieseke & Höpfner
http://www.potsdam-wiki.de/index.php/Frieseke_%26_H%C3%B6pfner
http://www.erlangen-virtuell.myfen.de/strasse.php?id=280
http://www.fag.de/content.fag.de/de/company/history/from_1946_to_1985/from_1946_to_1985.jsp

Eberline
http://national-radiation-instrument-catalog.com/new_page_95.htm

FH40H
http://www.orau.org/ptp/collection/personalmonitors/FH40.htm

※多分に私の想像が含まれている内容ですから、不正確なことこの上ないと思われます!w
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