2012/09/19

空間線量(率)とは~誰も教えてくれない空間線量(率)をわかりやすく説明する最新版

関連ワード:コラム , 基礎知識 , 実用量 , 翻訳 ,

空間線量(率)の定義

01.空気吸収線量(率)

空間線量率(空気吸収線量率)

対象とする空間の単位時間当たりの放射線量を空間線量率という。(中略)原子力発電所では、周辺環境の安全を確かめるため、モニタリングステーション及びモニタリングポストを施設周辺に設置し、環境中の空気吸収線量率を連続して測定している。

[ソース]weblio:空間線量率(空気吸収線量率)

可搬型モニタリングポスト及び固定型モニタリングポストによる福島県及び全国の空間線量率の測定結果を公表するウェブサイト(以下、本ウェブサイト)について、本年4月2日から下記 URL にて本格運用を開始することとしましたので、お知らせいたします。

(中略)

可搬型モニタリングポスト及び固定型モニタリングポストは、空気吸収線量率(Gy/h:グレイ毎時)を測定していますが、「Sv[シーベルト]=放射線の種類による生物効果の定数※×Gy[グレイ]」と換算できるため、ホームページ上では 1μGy/h=1μSv/h として Sv/h(実効線量)で表示しています。(※ ガンマ線では 1)

[ソース]文部科学省:可搬型モニタリングポスト及び固定型モニタリングポストによる福島県及び全国の空間線量率の測定結果の公表について(PDF)

文科省的にはこのように定義しています。文科省だけでなく、専門機関等でもこのような用法で使われることが多いです。つまり、空気吸収線量(率)=空間線量(率)です。

2012.10.16追記:こんな資料もありました。

[参考資料]福島県内空間積算線量測定結果について(第13報)(PDF)

デタラメ極まりないwww 特に専門機関や行政が”空間線量”という言葉を使ってる場合は注意が必要です。追記以上。

02.周辺線量当量(率)

ICRP は、定義通りの実効線量は測定できないということから、空気中放射線量(以下、空間線量と言います。)の測定は、ICRU が定義した周辺線量当量を用いることにしています。

[ソース]日本原子力学会:測定値(空気中放射線量)と実効線量(PDF)

大もとのICRPのソースを見つけられないのですが、一応、権威ある学会がこう言っているのですから、おそらくは間違いないのでしょう。空間線量(率)=周辺線量当量(率)でもあるということです。

※本当はすっごく引っかかるんですけどね。「空気中放射線量(以下、空間線量と言います。)」という部分が。「air」の翻訳やら解釈やらがちゃんとできてるのだろうかと…。ま、後述しますが、実質上、空間線量=周辺線量当量というニュアンスで言われることがほとんどですから、そう考えておいて問題はないと思いますけど。ソースのソースを見つけたいものです。

なお、JISにおいては空間線量(率)という言葉は定義されていません(「JIS Z4001 原子力用語」)。

空気[中]線量

他の物体によって散乱された放射線が検出器に入らないような自由空間内で測定された空気吸収線量。

という定義はあるんですけどね。

※ほら、やっぱり…。自由空間(free air)の”空間”も空気吸収線量(absorbed dose to air)の”空気”も同じair。このあたりがどうもなぁ。翻訳の過程で意味がねじれて、そんで”空間線量”なんて曖昧な言葉ができあがった、と思えてしまうんですよねぇ。余談です。

いずれにせよ、「空間線量(率)」と言った場合には、空気吸収線量(率)を指す場合と周辺線量当量(率)を指す場合があるということです。

さらに言うなれば、空間線量(率)が個人線量当量(率)のことを指すケースを私は見たことがありません。訂正:文科省が「簡易ポケット線量計」(ってだから何だ!)の測定値に関して空間線量という言葉を使っていました(上記PDF参照)。おそらくは個人線量当量を指しているのでしょう(おそらくですが)。ただ、これ自体がどうかと…。

線量体系から見てみる

このあたりのことがあやふやになっている方は、おそらく線量体系を理解していないと思われます(私も自信がないんですけどねっ!w)。

ザックリと説明します。

gc_568.jpg

放射線は物理的な量として測定しえます。単位は以下の通りです。

  • フルエンス(m^-2)
  • 照射線量(C/kg)
  • 空気カーマ(Gy)
  • 吸収線量(Gy)

出ました。吸収線量。空気の吸収線量が空間線量ということです。モニタリングポストやなんかはこれですね(実は空気吸収線量を測定できるサーベイメーターもあります。アロカシンチが代表例です)。

さて、この物理量にさまざまな係数をかけたりして、防護線量というものを算出します。実効線量、等価線量がこれにあたります。「年間1mSvだとなんたらかんたら」というのがこれ。しかし、防護量は計算上の概念です。実際には測定できません。なぜなら、臓器等に測定器を装着することは不可能だからです。

そこで、測定という観点から線量を定義づけようとなりました。これが実用量です(防護線量を安全側に上回る形で定義づけられています)。具体的には周辺線量当量、方向性線量当量、個人線量当量です。

つまり、TERRA、Radi、エアカウンターS、DoseRAE2など、放射線測定器が表示しているSvは実用量たる線量当量=周辺線量当量 or 個人線量当量だということです。そして、周辺線量当量(率)=空間線量(率)だとするならば、空間線量(率)はサーベイメーターで測定しえます。

※ちなみに、実用量たる線量当量、すなわち周辺線量当量や個人線量当量は物理量に紐付けされ校正されています。ICRU球・スラブファントムがあーだこーだというのもその一部です。この点に関しては今回は省略。

いかがでしょうか。空気吸収線量は物理量です。測定器が測定し表示する数値は実用量です。同じ”空間線量”でもまるで違いますよね。特に行政等が「空間線量」と言う場合は、ちょいと注意が必要かもしれません。

空間線量(率)という言葉は危うい

詳しくは書きませんが、どっちゃにせよ、数値自体はそれほど大きくは変わりません(主観的な感想ですが)。でも、なんとなく”空間線量”という言葉を使い、その内実たる実用量をわかっていないと、周辺線量当量と個人線量当量の違い=サーベイメーターと個人線量計の違いもわかりません。ここが問題で、当サイトが特に強調している点です。

具体的に見てみましょう。

gc_567.jpg

[ソース]日本レイシステムズ:ご存じですか? 線量計は大きく分けて2種類あります

こちらは日本レイシステムズの公式サイトなんですが(画像クリックで拡大します)、私はまったくもって何も理解できません。日本レイシステムズが何を言おうとしているかが。

百歩譲って、空間線量計と個人線量計の2つのタイプがあるとします。だとしても、個人線量計たる「miniDOSE」「DoseRAE2」について、こんな風に言います。

miniDoseとDoseRAE2は空間線量率も表示する個人線量計です。


私の頭は爆発寸前です。どう理解すればいいのか…。だって、日本レイシステムズ自身が、2タイプあると言ってるんですよ。なのに「空間線量率も表示する個人線量計」ということは、じゃあ3タイプになっちゃいますよw 空間線量(率)とは何ぞやという以前に、論理的に破たんしとります。

日本レイシステムズがなんもわかってなくても別に構いません。ですが、これを見て「miniDOSE」「DoseRAE2」を購入しようとしている人に対しては大いに誤解を与えます。実際に、当サイトへも幾度か質問が来ています。「miniDOSEで空間線量は測定できるんですか?」「日本レイシステムズがこう言ってるんですけど…」などなど。

「miniDOSE」「DoseRAE2」は個人線量計です。個人線量当量(率)を測定し表示する測定器です。それ以上でも以下でもありません。ってことを、メーカーが言うべきなんですよっ!w

当サイトのスタンス

これまで、日本原子力学会のICRPに関する資料を知りませんでしたので、実情を鑑み、

空間線量(率)≒周辺線量当量(率)

としてきましたが、これからは

空間線量(率)=周辺線量当量(率)

でいきますw

※先述の通り、心に引っかかるものがなくはないんですけどね

まとめ

直近のいくつかの記事とかぶってしまうのですが、ぜひ意識して頂きたいことがあります。それは放射線測定器から考えてみるということです。私たちはγ線を見てるんじゃありません。放射線測定器の表示を見ています。だったら、まずはその表示がなんなのかを知るべきです。そして、そう表示させているその機器が何ものかを知るべきです。そこからすべては始まります。

こういう道筋で考えれば、線量当量について、あるいはサーベイメーターと個人線量計について理解でき、正しい機種選択、測定ができるようになると私は思います。

というわけで、「空間線量=周辺線量当量」という資料を見つけたので、「空間線量とは?」という記事の改訂版を書いてみました。

[参考サイト]
ATOMICA:1センチメートル線量当量 (09-04-02-06)
ATOMICA:外部被ばくに係る防護量と実用量 (09-04-01-19)
※上記図版はこちらから転載

[関連過去記事]
「空間線量」ってなんだ? ちゃんと説明できますか?
※↑この記事は旧バージョンです。当記事が最新版です

関連記事

コメント

非公開コメント



rss001.gif twitter001.gif fb001.png Google+