2012/09/18

個人線量計「EPD-MK2」が出品! 線量当量の本質を教えてくれるからコイツが面白い!

来ました~w 出品者は安く買える楽天市場店


いや、ぶっちゃけ必要ないですよ。普通の人には。だけど、とにかくこいつが面白い。これから説明していきますが、わかりやすいように姉妹製品である「EPD-G」も併せて紹介します。

最初にスペックを簡単に。

EPD-G
対応線種:γ線、X線
線量当量:Hp(10)、Hp(0.07)
検出器:半導体(2個)

EPD-MK2
対応線種:β線、γ線、X線
線量当量:Hp(10)、Hp(0.07)
検出器:半導体(3個)

どこからいきましょうかねw

■実用量たる線量当量

私の勝手な想像なんですが、ここを大きく誤解している方が多いような気がします。

放射線測定器が表示している数値は実用量たる線量当量です。すなわち、周辺線量当量か個人線量当量かです。これが大前提。話はすべてここから始まります。なぜなら、実質的に私たちは放射線測定器を介してしか放射線を検知しえないからです。

ところが、一般的な説明は真逆なんですよねぇ。γ線が飛んでくる。これをGM管が捉える。カウント数に換算係数をかけSv表示する。これが測定器だ、と。間違いではないのですが、こういう風に考えるから、「じゃあminiDOSEで空間線量は測定できるのか?」とか「地表だと10μSv/hもある!」みたいになっちゃうんです。

考え方を一度リセットして、逆の発想をしてみましょう。

たとえばTERRA。TERRAが表示するSvは周辺線量当量の1cm線量当量で、Cs137由来のγ線によって校正されています。ということは、TERRAでSv測定する際は、できるだけその前提に近づけてあげなくちゃいけない。じゃないと表示される数値は正確ではなくなります。

具体的に言えば、TERRAでSv測定したいなら、γ線のみがTERRAに飛び込んでくる状況にする必要がある。だから、地上1mでとか、場合によってはアルミか何かで遮蔽してとかと言われます。β線を取り込んでは正確な測定にはならないからです。

こう言うと、こんなことを言いだす人がいます。

「お前はβ線の存在を無視するのか!」

いや、そうじゃなくてですね…(^^; 今はβ線を測定(もしくは検出)すべきかどうかを議論していません。単に、Sv測定はこうしなきゃいけないよ。なぜなら、TERRAは、Svはそもそもこういう風にできてるんだから。ということを言ってるだけです。

その上で、もしβ線を検出したいなら、それ相応のことをすりゃいいんです。百歩譲ってSv(H(10))で検出してもいいですよ。あくまでも検出で、測定ではありませんが(というか、β線を測定するってどうするんでしょうね)。

話を戻します。

EPDシリーズが測定・表示する個人線量当量には、主にふたつの基準があります。1cm線量当量と0.07mm線量当量です。それぞれHp(10)、Hp(0.07)と書きます。

γ線は透過力が強いですから、人体表面から1cmの深さで測定したと仮定して測定値を算出します。ですから一般的にはγ線はHp(10)という基準で測定値を表示します。一方、β線は透過力が弱いので、1cmの深さには届きません。そんな場合はHp(0.07)という基準で測定値を表示します。

ただ、間違ってはいけないのが、Hp(10)はγ線用、Hp(0.07)はβ線用の基準ではないということです。ちょーっとややこしくなってきましたが、このことを具体的に教えてくれるのが、実は「EPD-G」と「EPD-MK2」なんですねー。

■「EPD-G」と「EPD-MK2」のスペック表

笑っちゃうほど面白いですよw

※画像をクリックすれば拡大します

EPD-G スペック表[公式(PDF)]

gc_566.jpg

Hp(10)もHp(0.07)もCs137のγ線による校正です。

EPD-MK2 スペック表[公式(PDF)]

gc_565.jpg

Hp(10)はCs137のγ線です。Hp(0.07)はCs137のγ線とSr90/Y90のβ線の両方で校正されています。

ここで思い出してもらいたいのが検出器の数です。「EPD-G」は半導体×2個、「EPD-MK2」は半導体×3個。なぜこんな個数になっているのか、なぜ両者の個数が違うのか、もうおわかりですよね。ちなみに、両者の外観上の違い、つまりオレンジ色の検出窓の有無=β線対応の可否ってことです。

以上から、このようなことがわかります。

・Hp(10)はγ線
・Hp(0.07)はγ線、β線

で校正されうるということです。

※γ線のエネルギーによって…ということもあるのですが、それはスペック表を見てもらえれば、なんとなくわかるかと。低エネルギー=透過力弱い=Hp(0.07)のほうがレスポンスがいい、となっています

■Hp(0.07)で測定する意味

冒頭に書いた通り、一般市民がHp(0.07)で測定する意味はほとんどありません。そこまで神経質なら(あるいはそこまでシビアな環境に住んでいるのなら)、そもそもそんなことを考えなくていい地域に引っ越して下さいw

ただし、Hp(0.07)で測定しなきゃいけないシーンもあります。法令で決まってます。

第八条  事業者は、放射線業務従事者、緊急作業に従事する労働者及び管理区域に一時的に立ち入る労働者の管理区域内において受ける外部被ばくによる線量及び内部被ばくによる線量を測定しなければならない。

2  前項の規定による外部被ばくによる線量の測定は、一センチメートル線量当量及び七十マイクロメートル線量当量(中性子線については、一センチメートル線量当量)について行うものとする。(後略)

[ソース]電離放射線障害防止規則

原発作業員が個人線量計(APD)に鉛カバーをしていたというニュースがありましたよね。あそこで使われていた個人線量計も当然、β線に対応しています。すなわち、Hp(0.07)でも測定できる機種です。Hp(0.07)で測定できる個人線量計がどんな状況下で使われているのかという現状を見れば、Hp(0.07)なんて一般市民には必要ない、ということも想像にかたくないのではないでしょうか。

[関連過去記事]
鉛板で被曝偽装された線量計は何だ? APDとは? Hp(0.07)とは?

ただ、必要ないとはいえ、「EPD-MK2」がどんなものであるかを知り、Hp(0.07)がなんたるかを知り、線量当量とは何かを知ることは、サーベイメーターと個人線量計の違いを知ること、正しくSv測定することにもつながります。だから「EPD-MK2」が面白いんですw

■最後に控えしはH(0.07)

ここまでお読みになって、もしかしたらこう思われるかもしれません。

「Hp(0.07)はわかった。じゃあ、H(0.07)って何だ?」

鋭いご指摘です!w

長い記事になってしまいましたので、詳しい説明は省略します。ただ、ひとつだけ、あるサーベイメーターを紹介させて下さい。いつもの憎いアンチクショーですw

泣く子も黙る「RadEye B20」(Thermo Fisher Scientific)。こいつのオプションに、H'(0.07)用フィルターがあるんです。

RadEye B20/B20-ER 用γ線フィルター

これをつければ、サーベイメーターでH'(0.07)が測定できます。測定できることにどれほどの意義があるかは知りませんがw そして、ひとつだけご注意を。H'(0.07)です。H(0.07)ではありません。なぜなら、β線や低エネルギーX線などの弱透過性放射線は入射方向に依存します。このような場合は方向依存性が大きい測定に対応する量として「方向性線量」という基準が用いられます。周辺線量、個人線量の他に、実はもうひとつ、方向性線量というものもあるんですねー。このあたりのことはまた改めて。



当サイトの紹介文にも書かせて頂いてるのですが、まずは手にしているその放射線測定器が何なのか、それが表示している数値は何なのかを知ることが重要だと思ってます。私たちと放射線を結ぶ唯一のインターフェイスが放射線測定器なのですから。

しかし、多くの専門家は放射線の専門家であって、放射線測定器の専門家じゃないんですね。だから、私たちが日常でしていることとは逆からの説明しかしてくれません。すなわち、「そもそもγ線とは」「Cs137はこのようなエネルギーで」「年間で1mSvだと」などなど。すっごく乱暴に言ってしまえば、実効線量からの説明とでも言いましょうか。

こうした知識ももちろん重要です。専門家の言うことはとても勉強になります。だ・け・ど。と私は言いたい。そんな知識があったって、個人線量計をサーベイメーターのごとく使ってたら意味ないじゃん。「地表だと10μSv/h! 年間被ばく量に換算すると…」なんて言ってたら意味ないじゃん。

頭の中にどれほど多くのレシピが詰まっていても、包丁とカッターの違いを知らないと料理できんですよ。

なーんてことを思ったりw

[参考サイト]
ATOMICA:外部被ばくに係る防護量と実用量 (09-04-01-19)
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