2012/09/17

黒塗りされたガイガーカウンター / ガイガー愛へのシンパシー

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ebayで「ADM-300A」というサーベイメーターを見つけました。おそらく昨日、出品されていたような。だけどあっという間に落札。かっこいいし、2010年校正ですから実用的にもよさそうですしね。このスピード落札は納得できます。

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[ソース]ebay:NRC ADM-300A Radiological Assessment Kit / Geiger Counter w/ Alpha & Beta Probes

ただ、今回の本題はこれではありません。メーカーのNuclear Research Corporation(NRC)を調べていましたら、とても面白いエピソードを見つけました。というわけで、興味深い”ヤツ”がこちら(この言い方に関しては後述w)。

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「CD V-700」に似てますね。注目点はただひとつ。ボディ側面の黒塗りです。

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I say it is a curious instrument because there is blacked out text on the side of the instrument (and in the Instruction Manual) that originally read "CD-V-700."
(中略)
My guess is that Nuclear Research Corporation had, or was just about to, started production of the SM-5A when the FCDA announced that it was seeking bids to manufacture CD V-700 GM detectors for the U.S. civil defense program. In response, the company might have begun referring to the SM-5A as the CD V-700 and submitted the instrument to the FCDA for evaluation.

The FCDA might then have rejected the SM-5A for this purpose thus forcing the company to remove any indications from the instrument and the associated literature that it was a CD V-700. That's pure speculation of course.

[ソース]Oak Ridge Associated Universities(ORAU):Nuclear Research Corporation SM-5A (ca. 1954)

[意訳]
先ほど”興味深い測定器(※SM-5A)”と言ったのは、測定器側面に(そしてマニュアルに)黒塗りで消された文字があり、もともとは”CD V-700”と書かれているからです。
(中略)
以下は私の想像です。FCDAはCDプログラム用のCD V-700製造業者を入札で募っていました。このときちょうど、Nuclear Research CorporationはSM-5Aを製造し始め、あるいはし始めようとしていました。そして、入札に応じる形で、NRCはSM-5AをCD V-700と称しだし、FCDAの入札査定に対してこの測定器を提出します。

しかしながら、FCDAはSM-5Aに査定不合格の烙印を押します。そして、測定器およびその関係書類から、あらゆる表示を外すよう指示します。これが黒塗りされている”CD V-700”だというわけです。あくまでも推察ですが。

FCDAとしては、認めていない測定器に”CD V-700”と書かれていては困りますからねぇ。「その表示を取り外しなさい」と命じるのも当然のことでしょう。あくまでも筆者の想像ではあるのですが、この黒塗りにはこんな事情があるのかもしれませんね。そして、結局、採用されたのは、みなさんがよく目にする例のCD V-700。勝者の陰に敗者あり、ですな。

さて、まだまだ面白い話は続きます。先のORAUのページには、こんな記述もあります。

The 1954 Atomic Energy Commission supplement to their Radiation Measuring Instruments compendium described it as follows: "Portable ratemeter with thin wall geiger tube for laboratory monitoring, prospecting, or personnel monitoring."

They also commented that the probe "is conveniently placed inside cabinet for ease of handling and protection."

原子力委員会のこのコメントがどこまで公式なものなのかはわかりませんし、当初そう考えていても、結果が異なるということもありえます。にしても、実はこんな風に言われていた、だけど外部プローブのCD V-700になった、という事実がとても面白いですね。

最後にもうひとつ。本当はここが一番言いたかったことだったりしてw

ORAU(オークリッジ大学連盟)は88大学の連合体で、非営利の民間団体ではあるのですが、政府とも深く関わりを持つ、ある種の公的機関です。当サイトでよく参照させてもらっている上述のサイトは、ORAUのアーカイブなんですが、そういう機関のサイトは堅苦しく、キッチリとしているのが常です。

にも関わらず、たとえば、先ほどのページをいま一度見て頂きたいのですが、書き出しがとても面白い。

This is a curious animal.

ガイガーカウンターを”animal”と表現しています。この目線に私は親近感を覚えるんですよねぇ。他にも、以前紹介しましたが、放射線測定器のニックネームを紹介するページではこんな風に書いています。

Sadly, the use of nick names for survey meters has declined in recent years

[ソース]ORAU:The Nick Names of the Early Survey Meters

冒頭の「Sadly」は不必要です。不必要なんですが、このひと言にこそ、執筆者の人柄が表れています。先の「animal」だって、その後にはちゃんと「instrument」と言っているわけですから、わざわざ「animal」と言う必要はない。だけど、この方は「animal」と表現する。

この目線は何かというと、”愛”。放射線測定器に対する深い愛情が表れています。いや、これはもはやフェティシズムとすら言えるかもしれない。そりゃそうです。1940年代の激レアサーベイメーターから始まり、何十機種もの、もはや幻となってしまったような機器ひとつひとつに対して、あれほど深く語っています。愛がなきゃできない所業ですw

この姿勢に、愛情表現に私は感銘を受け、また、僭越ながら親近感を覚えます。

[関連過去記事]
放射線測定器にニックネーム(愛称)をつけることは何気に意義がある
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