巨人・Victoreenの残した軌跡

2012年07月31日
関連ワード:コラム , Victoreen , history , CivilDefense ,
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Victoreenの「Model 190」という放射線測定器を見つけました。

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Victoreenでは黄色い「CD V」シリーズが有名ですが、デジタル表示のサーベイメーターも作っていたんですね。そして、この形、型番から推察するに、FLUKEの「ASM-900」シリーズの前身だったような気もしなくはありません。

※「ASM-990」自体はVictoreen時代からあります。
※今でも「190N Portable Neutron Survey Meter」という中性子線用サーベイメーターはあります。


というわけで、今回はVictoreenの歴史を見てみたいと思います。

ザックリ言うと、1927年(1928年かもしれません)に設立された”世界初”の核関連事業を展開したメーカーで、マンハッタン計画、第二次世界大戦、冷戦(Civil Defence)と、長年に渡ってアメリカ政府とも深くかかわりを持ち発展、そして2004年にFLUKEに吸収合併されました。

Victoreen Instrument Company started in 1928 by John Austin Victoreen, a self-taught engineer, as a group of x-ray dosimeter manufactures. He later received an honorary doctorate in science.

Victoreen is credited with building several condenser-type ionization chamber instruments in 1927 which were stored in the laboratory due to lack of need. The chamber used a carbon wall and aluminum electrode and was 1 cm3 chamber charged with a friction wheel. Glasser and Seitz made an experimental condensert-type ionization chamber with a removable chamber that could be separated from the electrometer.

Glasser turned to Jack Victoreen in 1928 to market the first commercial instrument know as the Condenser R-Meter. It was an ionization meter connected to an electrometer. It soon became the industry standard.

Victoreen provide 95% of the instrumentation for the South Pacific atomic bomb tests and became known as the “First Nuclear Company”. These would later become the first commercial U.S. ionization chambers developed by Victoreen in 1930. The first units were friction charged with a battery powered light for the meter. It was later known as the Victoreen R-meter.

[ソース]National Radiation Instrument Catalog:Victoreen - late 1920's

Dr. Otto Glasser, a radiological physicist working at the Cleveland Clinic collaborated with Dr. Hugo Fricke to produce the first clinical dosimeter - known as the Fricke-Glasser dosimeter.

John Victoreen recognized the need for a more portable device than the Fricke-Glasser instrument, and in 1927, developed what became known through the radiological profession as the VictoreenR R-Meter electrometer and ion chamber.

The Victoreen Instrument Company was founded in 1927 and continued to develop a complete line of radiation protection products for biological applications and protection of personnel.

In 1966, Victoreen Instrument Company purchased Nuclear Associates, a well-established supplier of accessories and phantoms used in medical imaging, radiation therapy and radiation safety. In 1998, the Keithley Radiation Measurements precision instruments product line was added. In December 2004, Fluke Corporation, the world leader in compact, professional electronic test tools, purchased and branded this market-leading company with Fluke Biomedical in order to complete the hospital biomedical engineering product offering.

[ソース]RADIATION SAFETY ASSOCIATES「RSO Magazine Volume 10, No.4」Vendor Profile:Fluke Biomedical(PDF)

※読みやすいように段落は独自につけました

フリッケ線量計は字面では見たことはありましたが、人名から来ていたんですね。ただ、「フリッケ(Robert Fricke)によって提案されフリッケ線量計とも呼ばれている」(ATOMICA:RIの化学的作用の応用原理)という資料もあります。「Fricke-Glasser dosimeter」のHugo FrickeとRobert Fricke。どうなっているんでしょう。ちょっとよくわかりません(^^;

それはさて置き、Victoreenは1928年に「Condenser-R」という世界初の商用の電離箱式放射線測定器を開発・リリース。1939年(もしくは1940年)には「Model 263」通称”Doc”、1948年には「Model 263A」(IM-1A/PD or AN/PDR-5)といった名機を生み出し続けます。

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そして1956年、黄色いボディでお馴染みのガイガーカウンター「CD V-700(Model 2)」が登場します。ここにはVictoreenの本質を示すような、非常に興味深い事実が隠されています。

The first CD V-700, referred to by the OCDM as the Model 1, was the Nuclear Measurements Corporation Model GS-3CD (see photos above and to right). This can be considered the granddaddy of civil defense survey meters.

Quoting a February 1955 product description of the NMC instrument: "Model GS-3CD exceeds CDV-700 specifications in size, weight (4 3/4 lb), and ruggedness. Detects betas and gammas in three ranges 0-0.5, 0-5, and 0-50 mr/hr."

With one exception, the case bottoms I have seen of the Model 1 did not have the circular civil defense sticker seen on the Model 2 (below right). The sticker on that one exception was not centered and appears to have been added well after the manufacturing date.

There seems to be a very early reference to a Model 700 in an Anton Electronics advertisement in the May 1956 issue of Nucleonics. The ad has a photo of a survey meter identified as a "700 Survey Meter." It has no visible civil defense markings on it, but it is very similar in appearance to the Victoreen Model 2 shown in the photo below right. Strange.

Visually, the Victoreen Model 2 is identical to the NMC CD V-700 Model 1. In fact, the battery holder inside the Victoreen meter is stamped Nuclear Measurement Corporation (see below)! It would seem that Victoreen must have purchased the meters from NMC and put their own name on them.

[ソース]Oak Ridge Associated Universities:CD V-700 GM Survey Meters (ca. 1954 - 1964)

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そもそも「CD V-700」はNuclear Measurements Corp.(NMC)が開発した「Model GS-3CD」がもととなっています。実際、「CD V-700 Model 1」つまり初代「CD V-700」はNMCが製造していました。しかし、Victoreenがこれを買い上げ、「CD V-700(Model 2)」としてリリースします。ちなみに、このModel 2からボディにCDマークがついています(Model 2はVictoreenが販売していましたが、ボディにはNMCの名が刻まれています)。

「CD V-700」は政府調達品です。莫大かつ安定した収益が見込まれる金のなる木です。NMCが「CD V-700」を簡単に手放したというのが解せません。逆に、Victoreenがうまかった、それだけ大きな力を持っていたとも言えるのかもしれませんが。なんせ、戦前から政府とツーカーなわけですからね。

このあたりの正確な事情はよくわかりませんが、外形的事実を見る限りは、Victoreenのたくましさ、巧みさ、あるいは狡猾さをうかがわせます。

ところが、1960年代、「CD V-700」の政府調達が終わると、それと歩調を合わせるようにVictoreenの目立った動きがなくなります(「CD V」シリーズの調達は80年代まで続きます)。想像ですが、ここにはふたつの事情が関係していると思います。

ひとつはウランブーム。1950年代半ばからゴールドラッシュのごとく、ウラン採掘が盛んとなります。ガイガーカウンターが飛ぶように売れますから、多くのメーカーがガイガーカウンターを製造するようになります。放射線測定器業界の中で相対的にVictoreenの力が弱まったと想像できます。

もうひとつは、ウランブームとも関係していますが、核から原子力という流れです。冷戦はまだまだ続きますが、核開発(実験含む)は当初に比べれば格段と安定して行われるようになります。すると、核開発の現場における測定器はもう十分。大きな需要とはなりえません。マーケットはおのずと原子力という分野に移ります。結果、原子力産業を担う企業と結び付きの強い放射線測定器メーカーが売上を伸ばすことになるでしょう。

さらに宇宙開発事業、医療といった分野においても放射線測定器は重宝されます。もはや、核兵器(=国)という時代ではありません。1920年代、唯一のメーカーだったVictoreenは控えめに言っても「one of them」、実際のところは時代に取り残されたメーカーになってしまいました。

そして2004年、おそらくは人々の忘却の彼方にあったVictoreenは、ひっそりとFLUKEに買収され、その歴史を名実ともに終えました。ですが、この世からまったく姿を消したかというとそうではありません。

今なお愛用され、オークションなどで広く取引されている「CD V-700」。Victoreen製「450B / 450P」から改良された、「CD V-715」を彷彿とさせるFLUKE製の電離箱式サーベイメーター「451B / 451P」。長年に渡って培われてきた、そしておそらくはFLUKE製品にも引き継がれている技術力。これらは「Victoreenという巨人が確かにいた」という歴史的証言をしてくれているように感じます。

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コメント一覧

680. 2012.08.01
いつも楽しく読ませてもらっています。

放射線測定器というものが核開発や原子力産業と強い関わりを持って進化・発展してきたこと。それを放射線測定器が重宝されるような現在の日本の状況と重ね合わせて見ると皮肉なものです。日々、放射線を測りながらそう思います。

でも、一方でそういった歴史のある放射線測定器に、私はわけのわからないかっこよさを感じてしまうw
681. 2012.08.01
人を殺しうる戦車、戦闘機、銃にだって美はありますしね。製造物には、その使用目的や製造意図とは無関係に美が存在しえると思います。いわんや、人を守るための放射線測定器においてをやw

コメントありがとうございました。

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