富岡町の個人線量計ついでに、改めて言葉の定義を確認してみます

2012年06月16日
関連ワード:コラム , 実用量 , 規格 , 富士電機 ,
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お、お、おどろおどろしいw

気楽なサイトなので、肩の力を抜いて読んで下さいw

富岡町の”個人線量計”

富岡町が避難中の全7100世帯に「線量計」配布

富岡町は、避難中の全7100世帯に、各世帯1台ずつ個人線量計を配布する方針を決めた。12日に郡山市で開かれた同町議会全員協議会で、町が明らかにした。

町によると、今後想定される警戒区域の見直しで、町民が以前より自由に警戒区域内に立ち入れる公算が大きいことから配布の方針を決定。町民の健康管理のために、積算線量と空間線量を計測できる線量計を配布する考えという。

[ソース]福島民友ニュース

このように福島民友が伝えています。富岡町の公式サイトを見てみましたが、この件に関する情報は今のところありません。ですから、以下はこのニュースを前提とした記事だということをご了承ください。

※情報ありがとうございました

2012.07.09追記:「DOSEe」で正式決定しました。詳細は以下の記事をご参照下さい。
DOSEeは個人線量計じゃありません ~富岡町は大丈夫?w

まず、”個人線量計”とはっきり明記しているので、個人線量計なのでしょう。そしておそらくは線量率も表示できるという意味だと思われますので、さて、機種としてはなんでしょうね。

PDM-122、ADM-112、DOSEi、DoseRAE2、miniDOSE、PM1610、PM1621、EcotestCARD、RAD-60…。線量率にも重きを置いていそうですから、PDM-122、Dosei、RAD-60はないですかね。ちなみにDOSEeはサーベイメーターだろうとの情報をお寄せ頂いておりますから、違うでしょう(確実なソースはありません)。うーん、どれでしょうねぇ。

それはともかく、一番引っかかるのは「各世帯1台ずつ」という箇所です。個人線量計を世帯単位で配りますか…。

じゃあ、今日は外で作業あるからお父さんがつけて、明日は子供が学校だからつけさせてとか? 子供が帰ってきたら、お母さんが庭の地表を測ったり?w なんてことにならなければいいんですけど。

ニュースもでたらめなら、議会もでたらめという例を何度も目にしてきていますから、現段階であれこれ検証してみても不毛か(^^; 結局、決まった機種を見て「なんだよ、個人線量計じゃないじゃん!」なんてことも、十分ありえますし。

とりあえず、引き続きウオッチしていきます。

言葉の定義を見てみよう

放射線測定という観点から、一度、言葉をちゃんとしたほうがいいと思うんですけど。ずっと前から言っていますが。

「積算線量と空間線量を計測できる線量計」って(^^; 頭が痛くなります。

「JIS Z 4001 原子力用語」を見てみます。

線量
吸収線量、臓器線量、等価線量、実効線量、預託線量、線量当量、又は照射線量の総称。その語がどれを指すかは、その使われるところ又は使われ方による。

個人線量当量
身体上の特定の点から、ある深さdにある軟組織中での線量当量。記号 Hp(d)

周辺線量当量
整列拡張放射線場内にICRU球を置いたとき、整列場を与える線源に面した表面から、整列場の方向に沿って半径上の深さdの点における線量当量。記号 H(d)

線量計
吸収線量、照射線量、線量当量などを測定する計測器

線量率計
吸収線量率、照射線量率、線量当量率などを測定する計測器

個人線量計
個人の受けた線量当量を測定するため、各個人に装着するように作られた小形の線量計

サーベイメータ
放射線サーベイに用いられる携帯式放射線計器であって、音や計器などによって指示が与えられるもの

注目点は

・空間線量なんて言葉はない
・積算線量なんて言葉はない

ということです。

ただし、

・空間線量(率)≒実質的に周辺線量当量(率)を指す
・積算線量≒実質的に放射線測定器の積算値を指す

※「空間線量」に関しては記事の一番最後もご参照下さい。

というのが、現状における一般的な認識だと思われます(意識的にそう使われているかどうかは別として)。その理由は以下の通りです。

一般的に「空間線量を測定する」と言う場合は、「PA-1100 Radi」「エアカウンターS」「RADEX RD1503」などでの測定を意味することがほとんどです。つまり、周辺線量当量(率)の測定を意味します。逆に「PDM-122」を使って「空間線量を測定する」とは、まず言いません。

次に積算線量に関してですが、たとえば、「TERRA」でも積算線量は測定できます。「PDM-122」でも積算線量は測定できます。ですから、「放射線測定器の」としました。なお、前者は周辺線量当量で後者は個人線量当量です。同じ積算線量という言葉でも意味は違います。

つまり何が言いたいかというと、実は個人線量当量のことを言いたいのに、積算線量と言ってしまうのは不正確だということです。この不正確な理解が「積算タイプの放射線測定器」「エアカウンターSは積算できない。だったら積算もできるDoseRAE2のほうがいい」といったメチャクチャな言説の蔓延につながります。

また、「線量計」という言葉ですが、上記の「線量(率)計」の定義からすると、個人線量計もサーベイメーターも線量(率)計と呼ぶことができます。ただし、「線量」の定義において、「その語がどれを指すかは、その使われるところ又は使われ方による」とあります。しかも実用量たる線量当量には3種あります。

さらに、同JIS内の「線量計」という言葉の使われ方、もしくは

・JISZ4312 X線,γ線,β線及び中性子用電子式個人線量(率)計
・JISZ4333 X線及びγ線用線量当量率サーベイメータ
・JISZ4511 照射線量測定器,空気カーマ測定器,空気吸収線量測定器及び線量当量測定器の校正方法

を見れば、個人線量計=線量計とするのが適切で、サーベイメーターを線量計と呼ぶのは間違いではないかもしれないけれど、多分に誤解を与えかねないということもよくわかります(なんせ、「その使われるところ又は使われ方による」ですからね)。

専門家同士が「線量計」という言葉を使って会話をするのは構いませんが、現状の日本において、素人がいる中で、放射線測定器全般を指す意味で、あるいはサーベイメーターを指す意味で「線量計」という言葉を使わない方がいいと、当サイトで繰り返し主張しているのは以上の理由によります。

まとめ

私たちが測定しているのは実用量です。つまり、周辺線量当量か個人線量当量です。そして、前者を測定するものがサーベイメーターで、後者を測定するものが個人線量計です。

法的な決まり事ではありませんが(微妙になきにしもあらずではありますが)、日本においては製品規格としてJISがあり、実質的にこれしか定義しているものがありませんから、基準にできるものはJISしかありません。とするなら、放射線測定器はサーベイメーターか個人線量計か、このふたつしかありません(私たち一般人が手にするであろう放射線測定器には、という意味です)。

そして、一般的に”空間線量”を測定すると言われるのはサーベイメーターによる測定です。また、積算云々は線量当量の種類とは関係なく、サーベイメーターでも個人線量計でも測定可能です。ですから、積算できるかどうかはどうでもよく、重要なのはそれがサーベイメーターであるのか個人線量計であるのか、言いかえれば、周辺線量当量(の積算)か個人線量当量(の積算)かです。

さて、再びこのセリフを見てみましょう。

「積算線量と空間線量を計測できる線量計」

わけがわかりませんw

正確に言うならばこのどちらかです。

・線量率も表示できる個人線量計
・積算もできるサーベイメーター

これが誤解を与えない言い方です。ちなみに前者の言う「線量率」とはもちろん「個人線量当量率」を指します。空間線量率≒周辺線量当量率とは違います(「結局、指し示す数値はあまり変わらない」というのは論点が違います)。

・町民の健康管理のために、積算線量と空間線量を計測できる線量計を配布する考えという。

・町民の健康管理のために、線量率も計測できる個人線量計を配布する考えという。

どちらが誤解なく読めますか?ということです。

余談ですが、個人線量計である時点で規格上、積算できなければいけません。ですから、積算できる個人線量計というのはダブルミーニングと言いますか、言い方が冗長です。逆に積算できない個人線量計があるのかとw

こここまで広く放射線測定(器)が広まっているのに、言葉の使われ方がこれほどメチャクチャというのもすごい話です。そりゃ誤解も蔓延しますし、間違った知識も広まるでしょうねぇ。だって、言葉自体が曖昧のまま伝達され、あるいはコミュニケートされているのですから。

と、素人の私がエラそうに言えるほど、ちゃんとわかりやすく説明してくれる人がいないんですよっ!w

※「空間線量」という言葉のややこしさに関しては、今回は触れません。詳細は以下の記事をご覧下さい。

「空間線量」ってなんだ? ちゃんと説明できますか?
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エアカウンターEX

コメント一覧

602. 2012.06.17
日本レイシステムズ株式会社
「個人線量計と空間線量計のちがい」
http://nihonrae.com/news/120608.html

「miniDoseとDoseRAE2は「空間線量計」も表示する個人線量計です。」

さてさて、これはどう理解すれば・・・?
606. 2012.06.17
百歩譲って「空間線量計」じゃなく「空間線量」だろうという揚げ足取りはしませんがw、メーカーとしてどうかと思う説明ではありますね(^^; というか、空間線量(計)と個人線量(計)が違うと言っておきながら、miniDOSE、DoseRAE2は空間線量も測定できるとは、論理的におかしいですねw

この点に限らず、同社のサイトは説明に不適切な部分が多く、そして稚拙すぎると思います。なんとか説明しようとしている姿勢は見えるんですけどねぇ。

コメントありがとうございました。

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