"NORM"と"INNOCENT ALARMS"とRadEye PRD

2012年06月08日
関連ワード:コラム , ThermoFisherScientific , RadEye ,
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"INNOCENT ALARMS"の問題

Mirion Technologies(MT社)の放射線測定器には「SIA/IDENTPRO」というアルゴリズムを使った機種がいくつかあります。そこで、「SIA」が何なのかを調べていたら、ちょっと面白い資料を見つけました。2008年にIAEAが発行した「llicit Nuclear Trafficking-Collective Experience and the Way Forward」です。ザックリ日本語に訳すと「核物質の不法移転~経験の集約と展望」って感じでしょうか。折しも日本では、瓦礫処理がどうの、放射能汚染された車がどうのと、いろいろ言われていますので、当資料が想定している状況とは少し違うかもしれませんが、参考にはなるかもしれません。

800ページ以上あるので、もちろん全部は読めていませんが、とても面白いのがP587からの「A SINGLE DETECTOR SPECTROMETRIC PORTAL MONITORING CONCEPT SOLVING THE PROBLEMS OF ‘INNOCENT ALARMS’」というレポートです。”INNOCENT ALARMS”とは何なのか、それがなぜ問題なのかが紹介され、そしてそれをどう解決すればいいかが提案されています。

”INNOCENT ALARMS”は直訳すれば”無罪の(無害な)警報”。私たちも日常において経験したことがあるかもしれませんね。何もないはずなのに警報が鳴るというものです(便宜的にALARMを警報と訳しましたが、いわゆる音の警報のみを指すわけではありません。バイブ、LEDランプ、指示値、こちらに何かを知らせてくれるものを総称して”ALARM”としていると思われます。以後も”警報”としますが音のことだけではないということをご了承ください)。

なぜ鳴るのかというと、正確に言えば何もないわけではなく、もしかしたら”NORM”のせいかもしれません。

”NORM”はノーマルではありませんw 意味合い的に大きく外れてはいないんですけどね。正しくは”naturally occuring radioactive material”です。日本語に訳すと”自然放射性物質”。

自然界には、地球誕生以来地殻に存在するものや宇宙線により生成されたものなど、さまざまな放射性物質が存在し、これらの核種を含む物質を、自然起源の放射性物質(NORM)と呼ぶ。放射能濃度の高いものは、モナザイト、リン鉱石、チタン鉱石、鉱物砂などであり、産業用の幅広い分野で広く利用されている。

[ソース]緊急被ばく医療研修のホームページ

核種として有名なのは40K(カリウム40)、226Ra(ラドン226)、232Th(トリウム232)などですね。原発事故由来ではない、通常であっても自然界に存在している放射線に放射線測定器が反応し警報が鳴ります。あるいは医療用の放射線も同様でしょう。人ごみでいきなり線量が上がる。こんなこともたまにあります。

少し長いですが、具体例を引用してみます。

Impressive examples for serious problems with NORM alarms are the Piraeus Seaport, with more than 100 innocent NORM alarms every day for a total of five conventional vehicle RPMs or the Rotterdam Seaport, which in 2005 encountered a total of 2200 alarms for 875 000 passages with only 27 alarms not caused by NORM or medical isotopes. This means that 99% of all the alarms were ‘innocent’.

For pedestrian monitoring, when large crowds are checked, mainly at large airports or seaports, innocent alarms are frequently caused by medical radionuclides administered to patients for various diagnostic or therapeutic purposes. Approximately one in a thousand persons today receives medical isotopes which may trigger an alarm if the person passes a checkpoint even several days after the treatment. The most frequently used medical isotopes are 99mTe, 201Tl, 131I, 111In, 65Ga and 18F. For example, one single pedestrian monitor installed for test purposes at the Vienna International Airport registered 75 alarms in one month, 71 of them were medical, 2 NORM and 2 not identified, since the persons were not checked. A recent report by the US Domestic Nuclear Detection Office (DNDO) presented at a European Union seminar on border security in Brussels, Belgium, provides interesting statistical data for alarms triggered for about 1500 RPMs deployed early in 2007 in the USA. Of all alarms, 57% were caused by NORM, 16% were medical, 18% were legal shipments of radioisotopes, 4% were contaminated material and 5% were false alarms. This means that no alarm was caused by a real threat.

NORMあるいはmedical isotopesによって、作業が効率よく進まないということです。さらに従来の方法でのモニタリングではコストの問題も生じます。

A recent report published by the US Government Accountability Office (GAO) shows that the detection rates of equipment tested were as low as 17% and the best ASP (advanced spectrometric portals) monitor could only identify masked HEU about 50% of the time. In addition, this approach is extremely expensive - a single ASP costs about $377 000 - and may suffer from instability problems due to temperature drift under field conditions. It is doubtful that other countries apart from the USA will be able and willing to spend the enormous funds required for protecting multiple large border checkpoints with such expensive equipment.

gc_418.jpg じゃあ、どうすればいいか。この先については端折ります。ちょっとMTの宣伝っぽくもなってくるのでw

※左画像が例として出されている「SPIR-IDENT VEHICLE G」(MT社)。そりゃまあすごいんだろうけどさw

とにかく、NORM等によるINNOCENT ALARMSが、各作業の進行を阻害するので、これを解消することこそが重要だ。しかも、むやみやたらとガッツリ分析しつつ測定・検出していればいいというわけでもない。状況に応じて測定器をうまく利用しましょう。と、このレポート作成者は言っています。

では、現状の日本を鑑みつつ、こうした用途に最適な、個人でも入手でき、扱えそうな機種は…そう、「RadEye PRD」です。こいつがまた面白いのなんのってw

NORMを見分け効率よくサーベイできる「RadEye PRD」

こんな資料があります。Thermo Fisher Scientific(サーモ社)による「RadEye PRD」紹介資料「RadEye PRD Application in the Recycling and Scrap Markets」です。こちらは2ページ分なのですぐ読めます。写真もついているので、内容が把握しやすいかと。

まず、その具体的な中身というよりも、サーモ社えらい!と言わせてください。メーカーはこうあるべきですよ。自社製品のスペックを紹介するのはもちろん、具体的なシチュエーションを想定し、こんな人に最適だ、こういう風に使ってみてくださいと説明してくれています。つまり、ユーザーを向いている、ユーザーのことをちゃんと考えているということです。

RadEyeシリーズにはいくつかのモデルがあります。どれを選べばいいのか、普通のユーザーではよくわからないかもしれません。そもそも放射線測定器なんて、あまり馴染みのないものですしね。ですが、サーモ社はそんなことにも想像をめぐらし、こうして具体的にわかりやすく解説してくれます。さて、ここまでしてくれている日本の放射線測定器メーカーははたして…。

話を戻しまして、具体的に見てみましょう。

いきなり、タイトルがすごいですね。”the Recycling and Scrap Markets”です。ピンポイントですw しかも、日本でも役立ちそうな匂いがします。

Radioactive sources can find their way into scrap and recycling yards through both naturally occurring radioactive sources, such as scale on pipes in the oil and gas industry, and through orphaned industrial sources. Turning away a load could jeopardize a supplier relationship that has been built through extensive efforts. Facilities in this situation have an interest not only in protecting their personnel, but also in protecting their own facility as well as their business relationships.

The subsequent passing on and melting of an orphaned source can result in upwards of $20 million dollars in lost revenue and clean-up expenses. The RadEye PRD is a low-cost and convenient tool for helping to detect and locate orphaned sources or problematic NORM related sources.

こちらのビジネスまで心配してくれるとはw だけど、なんとなく実感が持てる説明ですね。見逃してしまったら、仕事上の信用やこれまでの関係性を損ない、あるいは莫大な費用もかかるかもしれません。見逃さないためにも、NORMを識別し、NORMに紛れ込む放射性物質を検知しなければいけないと。

The RadEye PRD incorporates Thermo's NBR technology, Natural Background Rejection. NBR enables the RadEye to have enhanced sensitivity with less false alarms. It also gives an indication of whether the source is High Energy, Low Energy or likely to be naturally occurring radioactive material (NORM).

こう見てくると、「RadEye PRD」の特徴でもあるNBRが、単にバックグランドをカットしますというだけでなく、なぜそんな機能がついているのか、その意図するところも含め、より深く理解できそうです。

そして、リサイクル・スクラップ業者のみならず、もう少し広く、「RadEye PRD」が活躍しそうなシーンも想像できるのではないでしょうか。大量に荷物や資材、ゴミ、瓦礫等がある現場。しかもNORM以外が紛れ込む可能性のある現場。いろいろありそうですね。そして、こうした現場でNORMを排しつつ、変化を敏感に読み取り、効率よくサーベイできるのが「RadEye PRD」ということです。

ところで、ドスパラ=サードウェーブが「RadEye G-10」「RadEye B20」を取り扱い始めました。一般的なショップでは、これ以外にあまり見かけません。サーモ社は卸し先をかなり絞っているからだと思われます(製造台数も限られているでしょうし)。

上のほうに貼っておきましたが「RadEye PRD」も一応はAmazonに出品されています。「RadEye PRD」いいと思うんですけどねぇ。なぜ「RadEye G-10」なのかw ドスパラさん、「RadEye G-10」はいいからさ、がんばって「RadEye PRD」をお願いしますよ!w

RadEyeシリーズ一覧(楽天市場)
RadEyeシリーズ一覧(Amazon)

で、「SIA」って何の略なんだ?(^^; なんとかidentifying algorithm? なんとかinnocent alarm?
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