2012/05/10

「V」の謎を追って~1950年代のアメリカにおけるCivil Defense

関連ワード:コラム , history , Victoreen , CivilDefense ,
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「CD V-700」というガイガーカウンターがあります。名前は知らずとも、一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。Victoreen製かと思っていたのですが、メーカーに関してはややこしい事情がありまして、初代はNuclear Measurements Corporation製のようです。

それはさて置き、冒頭にも書きました「CD V-700」という文字にご注目ください。「CDV-700」ではなく「CD V-700」です。今回はこのようなお話を長々と。

「CD V-700」の「CD」は「Civil Defense」(※リンク先はwikipediaです。以下、「w」とついているリンクも同様)の略です。「Civil Defense」の概念自体は昔からあるんですが、「Civil Defense」という言葉が現在に通じるような意味合いで使われるようになったおおもとは第一次世界大戦にまで遡ります。

それが大きく転換したのが冷戦時代の1950年代。特にアメリカにおいてCD(w)が盛んに叫ばれていたのですが、もちろんそれはソビエト(=核 or ≒共産主義)からの防護という意味合いです。

gc_374.gif 1950年代のCDにおいて中心的存在だったのはFederal Civil Defense Administration(w)です。1950年に設立され、翌年に政府機関となった同団体はその後、Federal Emergency Management Agency (FEMA)となり、国土安全保障省へと統合されます。

さて、このFCDAの要請により政府がサーベイメーターや線量計の調達を開始します。これにより生み出されたパーソナルユースのガイガーカウンターが「CD V-700」というわけです。「CD V-700」の「CD」が「Civil Defense」だというのもこれでよくわかると思います。

じゃあ、「V」は何なんだと。これが厄介です。まずはこんな説明をどうぞ。

The V in CD V

It is obvious that the CD in CD V stands for Civil Defense. The V though, has been a bit of a mystery. It turns out that it is the roman numeral five. More specifically, it refers to the chapter in the FCDA manual that contained the details regarding the matching funds that the federal government provided the states for the purchase of radiological equipment for civil defense (Marlow Stangler, personal communication). It is often the case that the CD and V are grouped together (e.g., CDV-700). Nevertheless, the original approach for identifying civil defense instruments was to have the CD separated from the rest of the designation (e.g., CD V-700). This website employs the original methodology.

[ソース]Oak Ridge Associated Universities (ORAU) :General Information about CDV Instruments

「V」は英語の「ヴィ」じゃなくてローマ数字の「Ⅴ」なんだと。FCDAが作成したマニュアルの章に由来するものだと。ちなみにオークリッジは、ご存じの方も多いでしょうが、原子爆弾製造のために作られた街です。”権威”がいっぱいいますw

しかし、これに対して疑問を呈する人がいます。

(前略)I don't know if this is correct because I have found many cases of supplies in Civil Defense Packaged Disaster Hospitals with the CD V numbers on them. Everything from urinals to patient litters have the CD V numbers on the cases. The V numbers are all over these things so it looks like the V means something other than a chapter in the FCDA manual with details about instrument funding. I haven't seen the V on any other Civil Defense items than radiological instruments and PDH items. Who knows what the story on the V is. Maybe it's just one of those long lost bits of Civil Defense history.

[ソース]Civil Defense Museum:HISTORY OF THE RADIOLOGICAL DEFENSE (RADEF) INSTRUMENT PROGRAM (Taken from FEMA Publication CPG 3-1)

こちらはアメリカ人、エリック・グリーン氏のサイトです。Civil Defenseオタクですwww 権威 vs オタク。かなり面白い見解の相違ですw

一応、私も調べてみました。

[参照サイト]Internet Archive:「Federal Civil Defense Administration」検索結果

面白い資料はたくさんあるんですが、少なくともFCDAが作成した資料で「CD V-700」(など)の「V」がローマ数字の「Ⅴ」に由来すると言えるようなものは見つけられませんでした。そりゃそうだ。オタクですらわからないのに、私にわかるわけがありませんwww

結局、「V」の謎は謎として残ったままなのですが、「CD V-700」が初めて世に出たのは1954年ですよねぇ。トマス・ピンチョン(w)の「V.」は1955年が舞台です。関係ないとはいえ、偶然とはいえ、「ヴィ」か「5」かはわからないとはいえ、なかなか面白いつながりだなぁとw

ピンチョンと言えば「重力の虹」=V2ロケット。「V2」から生み出されたと言っても過言ではない、世界初の大陸間弾道弾ミサイル「R-7」。「R-7」を作ったのはセルゲイ・コロリョフ(w)。S.P. Korolyov、Meridian、「Pripyat RKS-20.03」。なんと、アメリカのCD「CD V-700」をたどりにたどると、ロシア(ウクライナ)のチェルノブイリ「Pripyat RKS-20.03」に到達するという、とんでもない連鎖ができあがりましたw

なお、1950年代は放射線の世界でも大きな転機を迎えます。1928年に設立された「国際X線およびラジウム防護委員会」が1950年に「国際放射線防護委員会」と改名されます。もちろんこれは「ICRP」のことです。なぜゆえに大きい転機かというと、X線とラジウムが対象だったのに、ICRPからすべての電離放射線にその範囲が広がったからです。これの意味するところはもちろん、医療から核・原子力へ、ですね。

ここでのキーパーソンは、ロルフ・シーベルト(Rolf Sievert)とローリストン・テイラー(Lauriston Taylor)。なかなか奥深い人物たちが登場してきたところで、この話はいったん終了としましょう。

最後は脱線してしまいましたがw、こんなしょーもない戯言にお付き合い頂き、ありがとうございましたw
おまけ。

1951年、Federal Civil Defense Administration(FCDA)が「Duck and Cover」(w)というビデオを作成し、全米の子供たちに見せました。もちろん政府の後押しもありつつですが。※下の画像をクリックすると動画ページに飛びます

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※追記:Youtubeでも見つけました。
http://www.youtube.com/watch?v=lSNIImIPS9c

1950年代のCDの典型例でもあるのですが、いま見るとギャグですなw 「Duck and Cover!」の連呼を聞いてると、深夜の通販番組を思い出しますw 妙にリズミカルで耳に残るんですよね。

半分はマジなんでしょうけど、国民の団結心を煽る=プロパガンダ的要素もありまして、だからこそ耳に残るようにうまく作られているわけですが、洋の東西を問わず、時代を問わず、いろんな手段であれこれやるもんですね。そういう意味では、単に笑っては見ていられない気もしなくはなかったり。

そして、上記のOak Ridge Associated Universitiesのページに掲載されている1955年から1964年までの放射線関連機器(サーベイメーター、個人線量計など)の調達にかけられた予算を見ますと(「Funds Obligated」とありますが、実質的には政府予算ですね)、約5300万ドル=42億円。当時と今の貨幣価値とでは約10倍~20倍の差があると言われていますから、単純計算で400~800億円が注ぎ込まれていたということになります。

なるほど。いろいろと想像が膨らみます。

あ、違う。当時は固定相場だ。どういう計算になるんだ??w いずれにせよ、もっとすごい金額になるってことか。

最後にもうひとつだけ余談。「CD V-700」はガイガーカウンターですが、「CD V-710」「CD V-715」「CD V-717」「CD V-720」は電離箱。ガイガーカウンターではありません。「CD V-700」だけカタログにしようかな…。
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