LUDLUMの金属ボディに温もりを感じるワケ

2012年04月07日
関連ワード:コラム , LUDLUM , history , デザイン ,
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RADIATION SAFETY ASSOCIATES, INC.という放射線関連ビジネスを展開する、おそらくは中堅どころの企業があります。ここが面白い資料をいろいろと出していまして、当サイトでも過去、簡単にではありますが、その内のふたつを紹介しました。

G-M Pancake Detectors: Everything You've Wanted to Know (But Were Afraid to Ask)
by Paul R. Steinmeyer
http://www.radpro.com/RSO-10-5-PRS.pdf

Vendor Profile: SE International, Inc.
by Laura Brady
http://www.radpro.com/SEIProfile.pdf

両者とも同社が発行する「RSO Volume 10」という雑誌からの抜粋です。前者はタイトル通りの内容ですw 後者はSEIへのインタビュー(っぽく見せている部分が多そう)です。そして、今回紹介したいのは後者のシリーズで、LUDLUMへのインタビュー。これが非常に面白い。何が面白いって、これを読めば、LUDLUMがどんな企業なのか、LUDLUM製品がどのような思想で開発・製造されているのかがつぶさにわかるからです。

Vendor Profile: Ludlum Measurements, Inc.
by Laura Brady
http://www.radpro.com/Ludlum.pdf

まず、何気なく見える冒頭部分から面白いです。

Sweetwater, Texas. Home to Ludlum Measurements, Inc.

他にSEI、FLUKEのインタビューもあるのですが、どれも書き出しが異なります。LUDLUMは冒頭に地名を出しました。なぜなら、この地名、テキサスこそが重要だからです。次のパラグラフがそれを具体的に表しています。少し長いですが引用してみます。

One of our representatives unknowingly participated in a demonstration of the quality of our instruments. A potential customer was so excited about our equipment that he took our rep into his boss’ office and told his boss that they had to start buying our equipment. When the boss inquired as to why they needed to do this, the employee picked the instrument up off the desk and threw it across the room bouncing it off the opposite wall. He then ran over, picked the instrument up, brought it back to his boss’ desk, turned it on and said, “see it still works.” When our rep could breath again, and verified that yes the instrument did work, he smiled all the way back to his office with a nice purchase order from the company.

これが本当の話かジョークかは問題ではありません。Robert Ludlum(後述)=LUDLUMは、こういうことを言える人・企業だという点が重要です。

数年前の「スマスマ」だったでしょうか。キムタクと対談していたジェーン・バーキンを思い出します。確かキムタクが「バーキンは高級品だからぞんざいには扱えない」とかなんとか言ったんです。すると、バーキンはおもむろに自身のバーキンを床に放り投げ、踏みつけました。

ブランド物にはまったく興味はありませんが、それを見て、私はバーキンをほしくなりましたよw バーキンであってもバッグはバッグ。後生大事に取っておくものじゃないんですよね。製品は使ってこその製品です。使われるために作られています。

上記のRobert Ludlumのセリフは、もちろん自社製品の頑丈さ、特徴をコミカルに紹介しただけのことかもしれませんが、どんなにハードに使っても大丈夫、いや、そう使ってくれ、そのために作っているんだという気持ちが含まれているように感じます。

そして、この気質こそテキサスなんです。広大な土地であるがゆえに自然環境は厳しくかつ変化が激しい地域です。歴史的背景もあり、(よしあしはさて置き)銃社会の最先鋒です。カウボーイがいます。ピックアップトラックばかりが走っています。テキサス・レンジャーを生み出した土地です。そんな街で操業を開始したLUDLUMが、まさか「エアカウンターS」なんて作り出すわけがないw

「MODEL 3」はこうした環境から生まれたサーベイメーター。放り投げて「ほら、まだ動いてますよw」というのは、あながちジョークではなく、彼自身の気持ちでもあるんですね。だからこそ、こんなエピソードを紹介しています。

ちなみに、LUDLUM製品のあの淡いブラウンカラーも、テキサスであるがゆえのカラーリングでしょう。ガラガラヘビのいる乾いたステップ(草原)、点在する砂丘、大きく口を開ける渓谷、岩肌を隠さない山脈。すべてがまさに「MODEL 3」と同じカラーです。

さて、LUDLUMの歴史は1962年にまで遡ります。とにかく安くて、消費者ニーズにあったサーベイメーターを作りたい。そんな思いから、Don Ludlumが”kitchen”で事業を始めました。その後、LUDLUMは企業として発展していくわけですが、オーナーはずっと創業一家です。というか、一族は全員、LUDLUMで働いています。3世代が同時に仕事をしている時期もありました。ちなみに、このインタビューを受けているRobert Ludlumは創業者・DON Ludlumの末っ子です。

※2007年6月にRobert Ludlum氏は亡くなりました。同姓同名の作家がいますが、彼も2001年に亡くなっています。

[参考サイト]HPS:In Memoriam: Robert Ludlum

LUDLUMは事業規模を拡大していきますが、普通の企業とは少し違った発展の仕方をします。極力、アウトソーシングはしない。製造工程のすべてを自社でまかなうという点でです。いわゆる”ファミリービジネス”だからそうなっているということもあるのですが、もうひとつ、こんなことを言っています。

Our company was founded on the principal of providing the customer with a quality product that meets their needs in a rugged package that can survive harsh use in harsh environments, and is sold at a competitive price.

各所でよく目にしますが、「rugged」という言葉が大好きですw 表音文字ではあるのですが、字面にも音にも情感がこもっているんですよねぇ。意味は「無骨」「頑丈」。まさにLUDLUM製品は「rugged」です。他にも「GammaRAE Ⅱ R」「RDS-30(80)」「PM1703M」あたりを見ていると、いつも「rugged」という単語を思い出します。


で、ニーズに応じて高品質の製品をしかも手頃な価格でリリースするには、こういう企業形態がいいようで、続けてRobはこう言います。

A large part of the product line we currently offer was developed as a result of some special need of a customer. We like to call these items “weirds and specials” because no two requests are alike, and sometimes the application is very strange as is often the case in research.

For this reason we have an R&D department consisting of electrical, mechanical, and nuclear engineers, as well as chemists, physicists, and software writers to help in the development of these items.

※R&D:Research and Development

「weirds」という単語が面白いですね。形容詞だと「奇妙な・不気味な」といった意味があるのですが、名詞だと「運命」(fate or destiny)です。ですから、そのまま訳せば「運命的で特別なもの」となります。

ユーザーにはそれぞれに特別な要望がある。他にふたつとないような要望であり、場合によってはとても奇妙なものであることもある。そういう細かな要望に応えるためには、ギュッとコンパクトにまとまった経営形態である必要があるんだと。

実際、LUDLUM製品のラインアップを見ると、意外なほど多くのモデルがリリースされています。さらに、プローブもさまざま用意されているので、組み合わせを考えると、途方もないほどのサーベイメーターが組み上げられます。まさに、ユーザーのどんな要望にも応えたいという同社の思いが表れているいい例でしょう。

そして、こうして見てくると、「weirds and specials」という言葉にピッタリな日本語を思い出します。「一期一会」。

単に薦められたものを使うなんてつまらないじゃないですか。それよりも、一期一会ですよ。「これがいい!」「これがほしい!」そんな直感で選んで下さい。思い入れを持って選んだ機器なら、きっと最大限に、上手に使いこなせるはずです(^^ もちろん、最低限のことはわかった上での話ですが。

[関連過去記事]はじめての放射線測定器

粗野で無骨な職人気質のテキサス人。彼らの作るサーベイメーターは、外見からして、まるで彼らの生き写しです。だけど、ユーザーに向ける眼差しはどこまでも暖かい。「Model 3」の金属ボディに触れると冷やりとしますが、同時に温もりを感じるのは、こうしたメーカーが作っているからなんですね。

いかがでしょうか。かなーり個人的な感慨も紛れた記事になってしまいましたがw、LUDLUMというメーカーがどういう思いで製品を作っているのか、彼らの紡ぎ出す製品がどんなものなのかがよくわかる資料じゃなかったでしょうか。

別にLUDLUMを買えと言っているわけじゃありません。放射線測定器を選ぶ際は、こんな見方をしてみても面白いのでは?というお話でした。
基本的に、電源をオンにするだけで使えます。あとはレンジの切り替えか。悪い意味ではなく、テキサス人=ジ・アメリカンが作ってますからw、シンプルなことこの上ないのが同社製品の特徴で魅力です。

アロカもいいですが、LUDLUMもいいと思うんですけどねぇ。なかなか…。入手しづらいですしね。
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